学校が終わった昼下がり。
高校を卒業して、皆自分の進路の為に大学や専門に入って、やっと新しい生活になれてくるであろう5月の中旬。
私、須藤悠は相変わらず、あの喫茶店でバイトに勤しんでいた。
曜日毎にシフトは違うが、ほぼ毎日のように通っていた。
バイトの裏口から入り、後輩や店長に挨拶をしながら自分のロッカーに向かった。
「先輩! また彼氏さんが来てますよ。毎日×2様子を見に来てくれて、羨ましいですねぇ〜。」
後輩ちゃんが、要らぬ報告をわざわざしに来た。
最近、自分のシフトに合わせてほぼ毎日のように現れる馬鹿一人。
緋山翔、その人である。
「だーかーら! 彼氏じゃないって言ってるでしょう!!」
本気でうんざりしながら、毎回のごとくアイツを否定しまくっていた。
「も〜。先輩ってばツンデレなんだから!」
なんでだろう。皆して、私がツンデレだから否定してることに勝手に変換されてしまうのは。
今日は、オレンジのミニスカートに白のエプロンとカチューシャを身につけながら、ホールへと向かった。
今日は平日のせいか、お客の出入りがあまりなく、暇だった。
だが、手を休めればすぐに翔が飛びついてくるので、極力テキパキと動くようにしていた。
もう何年も通っているせいで、ここの従業員とも顔見知りになっていた。
たまにハムナリとかも連れてきているようだが、基本は一人。
昔にそう毎日なんで来るのか聞いたことがあったが、急に真顔になったせいで、バックでぶん殴って逃走したことがあった。
視線が痛い。
ぼーっとこちらを見ている翔と目が合う。
ニヘラと笑って手を振ってくる。
私は射殺すような目つきで早く帰れオーラを出してみるが、翔は肩を竦めてやれやれといったポーズを取った。
やれやれは私の方だ。
―――――――――――――――
今日のバイトは夕方まで。それまでの我慢だ。
どうにかこうにか、翔をかわしながらバイトの時間を終えた。
たまにバイトを変えようかと思うが、家から一番近くて割のいいバイトというと、あそこが一番良かった。
それに最近、あんまり他のバイトの子に手を出している様子もあまりない。
着替え終わり、ロッカーに鍵をかけ靴を履くと、裏口のドアにツンツン頭の影が見えた。私は思いっきりドアを開けると、軽快な音と共にぐもった声が聞こえた。
ガコーン!!「ぐふっ」
うん。ちょっといい気味。
そのまま無視して家に向かおうとすると、「乗っていく?」といういつものお決まりの台詞と鍵の音が自分の足元から聞こえた。
・・・・ふんずけていたらしい。
「・・・・たまには悠に轢かれてみるのも悪くない・・・・・・。」
その台詞を聞いた瞬間に翔から飛びずさった。
「そうゆう変体的発言やめてよね。あんたのその態度のせいで私いつまでたってもツンデレとか言われるんだから!!!」
起き上がった翔に持っていたバッグを振り回した。だが、いつもの手ごたえはなく、バックは空を斬った。
「あ・・・あれ?」
勢いよく振りすぎたせいで、今度は自分が地面へとダイブする羽目になった。
だが、いつまで経っても衝撃はこない。そっと目を開けると、目の前に翔の顔がどアップであった。
「☆△$@※ξё」
おっ落ち着け自分!
顔をぐぐっと退けながら、そそくさと立ち上がった。
翔のいきなり真顔になるのが、苦手だった。
そんな私の心中などお構いなしの翔。ふふふふと怖い笑いを顔に蔓延らせながら、立ち上がった。
「今日は、スペシャルな送り迎えだぜ〜?」
さっきから振っている鍵。いつもと違って大きい。
「なんでよ。」
「ふふふふふ、良くぞ聞いてくれた! 実は車の免許が取れたんだぜ!!」
見せてと言ってもいないに、免許書を水戸黄門の印籠のように高々と掲げて威張って見せた。
「自転車の後ろから今度は助手席が悠の特等席な。」
ニコニコと笑いながら、手を取ってくる。
こっちにとめてあるんだとか言いながら、少し小走りだ。
車ってどうしたんだろう? 免許だってそうだ。いつも私にくっついて来ているくせに、時間あるのかしら?
「ほら。そんなとこ突っ立ってないで乗った乗った!」
助手席のドアを開けながら、翔は私に呼びかけた。
はっとしながらも、新車に見える車に乗り込んだ。
車内をぐるりと見渡した。
やはり新車らしい。
「この車どうしたの?」
バックミラーを直している翔に、私は外を見ながら聞いた。
「あー、これ兄貴たちと三分の一づつ出し合って買ったの。だから誰のってわけじゃないけど、兄貴たちは休みの日以外は乗らないから。」
「ふーん・・・・って、あんたお兄さん2人もいるの?」
私は、目を丸くして聞き返した。
「あれ? 知らなかったっけ? 俺、妹入れて、4人兄弟よ。」
初めての新事実に驚きながらも、この踏んでも蹴ってもへこたれない性格は、上の兄たちによって形成されたのかと納得いく部分もあった。
「あのさ、この後何か用事ある?」
「何にもないけど?」
「んじゃさ、このままドライブにでもいかない?」
「いや。」
私は考える間もなく、即答する。
「なんで〜〜〜?」
少し膨れっ面をしているが、可愛くない。それに私はバイトの疲れもあったし、明日も一日バイトが入っていた。
「送ってくついでに、少し遠回りするだけだから。」
「・・・わかったよ。」
「やったー!」
OKを出しただけで、大喜びの翔。なんでこんな私の一挙一動に振り回されてんだか・・・。
すっと出る車。運転している翔は少し緊張しているのか、終始硬い表情のままだ。まだやはり取りたてで、慣れないのだろう。
だが、怖さを感じない。むしろ上手い。
私は、流れる景色と共に翔の横顔を見ていた。だが、急にこちらをちらりと見た。
「何? 俺様が素敵過ぎて、惚れちまったのかい!?」
何を言い出すかこの男。私は、横っ腹を思いっきりつねって、逆を向いた。
ん? ここはどこ? 暗いからと言って、家に向かっていれば、わからないなんてことはない。
木が多く、人通りも少ない方へと車を進めていく翔。少し焦りながら、翔に向き直った。
「ちょっとここどこらへんよ?」
わき腹を少し涙目で擦っていた翔が、少しスピードを上げた。
「どこいくの?!」
「秘密。」
ちょっと意地悪そうな目をしている。絶対に面白がってる。
それから5分くらい走らせたとき、急に翔は車を止めた。
「おっと。行き過ぎるとこだった。」
車を横に付けて駐車すると、助手席にきて、ドアを開けた。
こんな森ん中で、どうしようっていうのよ・・・・。
「こっち来て。」
ぐっと引き寄せられると、どんどん森の中へ入っていく。
ちょ・・・ちょっと待って! 心の準備が!!
翔の腕の中で一人グルグルしていると、翔が頭をポンポンとしてきた。
「ほら。見て。」
へ? 何を・・・・。
「わっ。綺麗・・・・。」
「な。素敵スポット。前に車運転してて道に迷ってさ、うろうろしてたら見つけたんだ。ほら、あそこ悠の住んでるマンションの明かり。結構近くなんだぜ。」
本当だ。近くのスーパーの看板の光も見える。
家の裏の小高い高台の中間辺りの森なのだろう。
ここに住んでから、小高い山があるなとは思っていたが足を踏み入れたことがなかったので、街が一望出来るとは知らなかった。
一頻り風景を楽しんだ後、また車に戻った。本当に何にもされなかった。
はっ! 私は何しょんぼりしてんだ!
気を取り直して、そそくさと車に自分から乗り込んだ。慌てて運転席に乗り込む翔。
「あれ? 気に入らなかった? というか、怒ってる?」
なんでか、上目遣いで私を見る翔。一挙一動しているのは自分かも・・・
「なんでもない。疲れただけだよ。明日もバイト入れちゃったんだもん。早く帰らなきゃ。」
「あれ? 明日の学校は?」
「休講になったの。」
私は、椅子を少し倒すと、もたれるように座りなおした。
「ふーん。そっか。なら明日、バイト終わったら、俺んち来ない?」
「は?」
話の飛びように、ついていけず思わず聞き返してしまった。
「ほら。明日俺の誕生日だし。」
「それでどうして、あんたん家に行かなきゃいけないのよ?」
「駄目?」
駄目もなにもない。どうして、私が行く義理があるのか?
私が返事を渋っていると、いきなり助手席に翔が移ってきた。
「何してんのあんた。」
この通りだって、まったく車が通らないなんてことはない。
手で翔を押しのけようとしても、びくともしない。それどころか、両手を片手で捕られてしまい、身動きが取れない。
翔がじっとこっちを見てくる。顔が首の辺りまで真っ赤になってるのが、自分でもわかる。
翔の唇が自分の唇と重なった。とても短い一瞬のキス。だが、翔の顔は自分ととても近いまま。
「ごめん。」
そういうと、また唇を重ねてきた。今度はとても長く。
―――――――――――――――
『ん・・・・ぁ・・・・。』
キスの合間に少し吐息が漏れる。
翔の手はいつの間にか自分の手を自由にしていたが、その手は翔のシャツを握っていた。
結構着やせするタイプなのか、シャツ越しでもガッチリしているのがわかった。
高校のときは、もっとひょろっとしていてたような気がするのに、もう冗談でしか倒せないだろうなと、ぼーっとする頭で考えていた。
そのとき、翔の手が胸の方に降りてきたとき、意識がハッキリとした。
ばちーん!! 「うっぶほ!」 どこっ! 「うぎゃぅ!」
手とドアのダブルビンタに、翔が仰け反った。
「早く運転席に戻って、家に向かわないと、地獄を見るよ。」
「ひ・・・・ひゃい。」
静かに、声を抑えて言っているが、迫力負けした翔が、すごすごと運転席に戻って、車を発進させた。
一言も会話もなく車は進んだ。
そこを曲がれば、家があるというところまで来て、車は止まった。
自転車のときから、家の前まで送ってもらったことはなかった。
翔が何か言いたそうな顔をしていたが、何も言わずにドアを開けた。
送ってくれたお礼もさっきのことの文句も何も言わず、すぐさま降りるとダッシュで家まで走った。
家に着くなり、自分の部屋に閉じこもった。
「悠? 帰ってきたなら、ちゃんとただいまくらい言いなさい。夕飯あるから食べちゃって。片付かないから。」
母親がノックをしながら、聞いてきたが、私は部屋を出ることなく、短く いらない。 とだけ答えた。
親が部屋から遠ざかる気配がした。
私は、ベットに潜り込むと、なんでか涙がボロボロとこぼれ落ちてきた。
まったく理由がわからなかったが、手の震えと涙を抑えることが出来なかった。
やっとのことで涙が止まったが、こんな腫れた顔でお店に出れない。
鞄から携帯を引っ張り出すと、店長に電話をかけた。
短く携帯の着信音がなる。
「もしもし。」
「もしもし。店長?」
「あら。悠ちゃん? どうしたの?」
「あの、明日仕事入れたんですけど、お休みしていいですか?」
「泣いてたの?」
お休みしていいかの返事ではなく、今の自分の状況を言い当てられて、どきりとした。
「えっとあの・・・。」
「お休みしてもいいけどね。その泣いていた理由を解決してきなさい。」
やんわりとだが、拒ませない迫力で店長が言ってきた。
「あの、えっと・・・」
解決といっても、どうして自分がこんなにも泣いたのかまったくわからなかった。
「たまには素直になりなさい。そうじゃないと愛想尽かされちゃうわよ〜。」
「なっ・・・何言ってるんですか! 別に翔に愛想尽かされてもなんともないです!」
「あら? 私、翔君のことなんて言ってないんだけど?」
うっ。誘導尋問だ。
「それと、いつまでも待ってたら、翔君だろうと待ちくたびれちゃうわよ。それに、翔君だっていつまでも子供じゃないのよ? これは、年長者からのアドバイス。」
「え? それはどうゆう意味?」
「そのままよ。」
おやすみと言うと、店長は電話を切ってしまった。
店長との電話の後、考え事をしたかったが、泣きつかれたのか、そのまま寝入ってしまった。
ピピピピピ
携帯の目覚ましを切るのを忘れてた。
手探りで携帯を探すと、目覚ましを止めた。
そのまま携帯を見つめると、すぐ私はメールを打った。
もう7時を過ぎていたが、向こうが暇とも限らない。
10分もした頃か、メールの着信音がなった。
飛び起きると、携帯を開いてメールを見た。
『長そうな話になるの? そしたら電話か会って話す?』
『会って話したい。すぐ大丈夫?』
と返事を返すと、いいよ。とすぐに返事が返ってきた。
ざっと洋服を決めると、髪形を整えるのももどかしく、帽子を被り、自転車にまたがった。
母親が怒鳴っていたが、帰ってから話を聞こう。
自転車のペダルに力を込めて、私は勢いよく走り出した。
ピンポーン。
「はーい。」
中から親友の声がする。
がちゃりと鍵をはずすと、相手が開けるよりも早くこちらからがばっと開けた。
「ざぐら〜〜〜!!!」
もうすでに半泣きで、さくらに抱きついた。
さくらは、背中をぽんぽんと叩いて、私を中に引き入れた。
席に着くと、すぐに紅茶を出してくれた。メールした後に用意してくれていたようだ。
「どうしたの? 昨日も泣いてたでしょ? 目が真っ赤よ。」
さくらに昨日の顛末を事細かに話した。
そして、今度どういう顔して会えばいいのかアドバイスが欲しいと。
「それって、悠は緋山くんのこと好きなわけでしょ。だったら簡単じゃない。」
「好きじゃない!」
立ち上がって机を叩くと、さくらが少し驚いて自分を諌めた。
「何で?」
「なんでって何が?」
質問の意図がよくわからなく、逆に質問しかえしてしまった。
「どうしてそう言い切れるの? ってこと。」
紅茶を一口すすると、ずばっと切り込んできた。
「だって、ずっと送り迎えしてくれてるのを拒んだことないんでしょ? それに好きじゃなかったら、キスだって嫌でしょう?」
「だって、そんな風にあいつを男として意識したことないし。」
ごにょごにょ言い訳を考えながら、それを言葉にしたとき、自分がどうして昨日泣いたのかわかった。
意識したのだ。昨日の翔を。急に男っぽい所を見せられて、自分の知っている翔じゃない気がして、そして少し怖かったのだ。
それをハッキリと自覚した瞬間に、耳まで真っ赤になった。
「どうしたの?」
不審そうにさくらが顔を覗きこんできたが、顔を見られたくなくて、机に突っ伏した。
「う〜。」
「う〜じゃわかんないよ。嫌よ、嫌よも好きのうちってね。」
ため息を吐くと、紅茶を飲み干し、2杯目を入れるために立ち上がった。
「ねー、さくら〜。またバイト先にあいつ来たら、どうしよう?」
「どうって?」
「会いたくない。」
さくらは2杯目の紅茶と共に席に着くと、私の顔をじっと見つめてきた。
「な・・・なに?」
「ねー。悠。そんなに嫌がる振りするの止めなさい。緋山くんじゃなかったらとっくに見放されてるわよ? 他人から見て、好きなのばればれなのに、どうしてそう否定するの?」
「・・・ばればれ? そんなんじゃないって! ほんとに本当だって。これっぽっちも恋愛感情なんてない。」
「一緒にいてドキドキするだけが恋愛じゃないよ。といっても、昨日はドキドキしてたみたいだけど。」
意地悪く言うさくらを睨むと、お茶菓子を一気に食べだした。こうなればやけ食いだ。
「悠。太るよ。」
さくらの一言に手が止まる。
「だってだって。う〜。」
「よし。ここで押し問答しててもしょうがないよね。」
ぽんと手を叩きそういうと、さくらは私を部屋に残して、出かけてしまった。
待っててねっ! という一言を残して。
戻ってきたさくらの手には紙袋が握られていた。
「はい。」
にっこり笑ってはいるが、絶対何か企んでる。
紙袋を受け取って、中身を確認すると、私は言葉を失った。
「・・・。なんでこれがここにあるの?」
紙袋の中身は、なんとバイト先の衣装だった。それも猫耳と巫女服。
「ほら。これ持って緋山くんのところに行って、着てあげなさいよ。」
「会いたくないって言ってるのになんでここまでサービスしなきゃいけないのよ。」
「あら。誕生日なんでしょ? わ・た・し・を・た・べ・てwって。」
こんな言葉をさくらから聞かされるとは思ってみなかった私は、一言も言葉を発せなかった。
沈黙が流れる中、 ピンポーン。 とチャイムが鳴った。
だが、そのチャイムは隣の部屋のものだった。
「よーっす!」
「急にどうしたんだよ?」
聞こえにくいが、そんなやり取りが微かに聞こえてくる。
「あら。旦那様が偶然にもお隣に。」
「ちょ・・・旦那とか言うな!」
「チャンスじゃない? ほら。これ着て特攻してきなさいよ。」
私の文句に耳を貸さずに、また無茶なことを言い出した。
「私がちょっとおびき寄せてきましょうか。」
どうしてこう、私の周りには頑として自分の道を突き進む人が多いのだろう?
ここで止めてと言ってもさくらは止めないだろう。
さっと出て行くと、チャイムを鳴らさず、ドアを開けている音がした。
「おっそい。何してんだろさくら・・・。」
飲み終えた紅茶のカップを手持ち無沙汰に手の中で転がしながら、机に突っ伏した。
ここに居ても何も始まらないと思い、覚悟を決めてハムナリの部屋に行こうと立ち上がった。
ピーンポーン。ピンポンピンポンピンポン。
何度もチャイムを勢い良く押して、返事を待った。
ドアを開けたのは、部屋の住人ではなく、ここへ遊びにきたであろう翔だった。
「よ・・・よぅ・・・。」
気まずそうに挨拶をすると、沈黙が流れた。
「・・・・さくらとハムは?」
翔の間から部屋を覗き見たが、二人の姿は確認出来なかった。
「さくらが引っ張ってどっか行ったけど、行き先は何にも聞いてない。」
ドアを大きく開けて中にと促された。一瞬躊躇ったが、ここに突っ立っていても怪しまれるだけだと中に入った。
部屋に入ると、さっきの紙袋が部屋の真ん中にどんと置いてあった。
すっかりその存在を忘れていたが、さくらが先に持ってきていたらしい。
その袋を見つめていて、固まっていた私の背後から翔がいきなり抱きついてきた。
ぎゅっと抱きしめられて、肩に顔を埋(うづ)めてきた翔に何か文句を言おうと思ったが、なんでか何も言う気にはなれなかった。
「泣いてるの?」
私は翔のつんつんした髪をぽんぽんと叩きながら、一向に顔を上げない翔に問いかけた。
「泣いてない。嬉しいだけ。来てくんないと思ってたから。それに今の俺の顔見せられんし。」
そう言われると見たくなるのが人の性。
いきなりしゃがむと、下から翔の顔を覗きこんだ。
「うわ。ひで。」
翔もしゃがみ込むと、膝を抱えて顔を隠した。
「俺、今めっちゃだらしない顔してる。」
「そんなのいつもだよ。」
「ひでぇ。」
照れた顔をこっそりとでもまじまじと見ていたら、こっちまで照れてきた。
ヤヴァイ。伝染する。
でも、やっぱり本気で翔が私を好きなのが、本当なのが伝わってきて、悪い気はしなかった。
また翔の髪をぽんぽんと撫でてやる。
こちらをちらりと見ると、
「そうゆうことされると堪らんのですが・・・。」
と言いつつ、私の腕を取って引き寄せた。
「まだ許してないし・・・。」
「その言葉を聞くまでは、我慢しようかと思ったけど、もう無理。許しの言葉を貰うまで待ってたら、おじいちゃんになっちゃう。」
「そんなに待つつもりだったのか・・・それにそこまで私だって鬼じゃないし。」
唇を尖らせながら、文句を言うと返事よりも早くキスの嵐が返ってきた。
「ちょ・・・。ストップ。ここ他人の家だし。」
「そんなの知らん。」
もう行動を止める気のない翔は私の文句を一蹴した。
何を言っても止まらないだろう。
自分もそのまま流されつつ、ただ身を翔に任せた。
「・・・・おぃ。さくら。これは一体・・・・。」
ベランダに靴を持ったまま、さくらと二人出歯亀状態で、放り出されていた。
玄関から出て行こうとしていたのに、翔がウダウダと俺たちを引っ張っていたために、慌ててベランダに隠れたのだ。
つか、ここ2階だぞ。
どっか行っててとか言って閉めやがって翔の奴・・・・。
声が聞こえないのがせめてのも救いだ。
「一件落着ですね。」
こんな状況で、のほほんと言うさくら。
「どうする?」
「ベランダをまたいで私の部屋に移動しましょうか?」
おぅ! それだ! そうゆう方法があるのなら、早く言ってくれ。気づかない俺も俺だが。
こそこそとさくらの部屋に帰還すると、さくらの部屋が眩しい光に包まれた。
『「ただいま!」』
リルとルミナが光の中から現れた。
「やっと戻ってこれたぜー!」
「本当・・・。体重が一気に落ちたかも。」
いったん家に帰っていた宇宙人2人組みが帰ってきて、一段とうるさくなった。
「なおー! 美味いご飯が食べたいぜー!」
玄関に向かおうとするルミナの肩を掴むと、
「ルミナ。リル。さくら。お昼と夕飯の材料を買出しに皆で行こう! そうしよう。」
「?」
ルミナとリルは、俺が半ば強引に連れ出したことに疑問を感じていたようだったが、あまり説明したくないので、取り合えず自分の部屋を振りかえず早足で三人を引っ張りながら、いつもの商店街に向かった。
お二人さん、お幸せに。
お願いだから次はこっちに迷惑をかけないでください。
俺はそう願いながら、2食の飯を何するか話し合っている女三人組に混じった。
END
あとがきという名の言い訳。
ツンデレではなく、ただの優柔不断+ニブチンぽくなってしまいました;
甘いって突っ込まれそうな。
そして他人の家で何しちゃってんだ。
本当に無節操でごめんなさい。
勝手に兄弟増やしてごめんなさい。
ルミナとリルが本当に少ししか出てこなくってごめんなさい。
あの二人というか、ルミナを出すと話がややっこしくなりそうだったので、宇宙に里帰りしてもらってました。
それに数年後、ルミナたちは地球にいるのかすら未知数ですし。
それと勝手に皆大学に進んだことにしてます。
自分的勝手な予想。
ハム&さくら⇒語学系の大学。
ハムはこれまでの経験(笑)を活かして、国際的な仕事に就きそう。
さくらはライターとか新聞記者とかで、敏腕とか言われつつ、ブラックさくらを駆使してゴシップを狙ってそう。
翔⇒物理専攻の理系の大学。意外と専門分野とかで能力を発揮してそう。他の勉強はからっきしなくせに、これだけは天才!!みたいな(笑)
悠⇒教育学部があるそこら辺の大学。将来は保母さんとかやってそう。
ルミナ&リル⇒以外に父親も地球にいることをOKさせて長年住み続けてそう。そのうち父親すら地球に来たり(苦笑)
真奈美&香奈⇒不老不死の効果を発揮し、数年たった今でも年齢不詳っぽそう。
そんな勝手な想像と共に数年後のラブパの世界を書いてみましたがいかがでしたでしょうか?
ここはちょっとな。。。そんな部分が絶対に多々あるかと思いますが、そこら辺は、「睦がお馬鹿だから」で許してください。(ぉぃ