| 何故リルがこの学園に入学し、しかもルミナが転校生として入ってきたばかりの、このクラスに入ってきたか……まずはそれを説明しよう。 ☆ ☆ ☆ 「てことは、そこのリルって子はナオくんじゃなくて咲嶋さんの部屋に住む訳ね?」 リルを指差しながらオレとさくらを交互に見る真奈美さん。 というかリルはさくらの部屋に住むと決まった訳じゃないんだが……。勿論ウチに住めない以上、そうするか、もしくは宇宙に帰るしかないんだけどな。 「その通りですよ♪」 「えぇっ!? ボク何も言って――はいっ! その通りです!」 「なら問題ないわっ!」 あっさりと肯定するさくらにリルは勝手に話を進めるな、とばかりに割って入るが、さくらの笑顔のまま睨み付けるという器用な技に呆気なく引き下がった。 真奈美さんも簡単に許可してるし……。 トボトボとオレとルミナの方へ歩いてきたリルが可愛そうでオレは思わず彼女の頭を撫でていた。 一瞬驚いた表情でオレを見つめたリルだったが、すぐに大きな瞳に涙を一杯溜めて泣き出してしまった。 きっと、自分の意見なんて聞いてもらえないし、勝手に話も進んでくし、色々辛かったんだろうな。 それに、いつもの、というか今までのさくらだったらリルも一緒に住む事に抵抗なんてしないし、こんなに泣くような事も無かったんだろうな。今のさくらと一緒に住めなんて言われたらオレでも怖くて泣いてしまうかもしれない……。 「うわぁぁぁぁんっ!」 「うおぅっ!?」 そんなにしがみ付いて泣かれると非常に困るんですが……。 いや、オレは構わないんだよ? ただ、この場にあの人がいるのが問題であって。 「ちょっと! ナオくんから離れなさいっ!」 ほらね。 真奈美さんは電光石火の如き速さでここまでやって来てオレにしがみ付くリルを引き剥がそうとする。 「そうだぜー! 離れろー!」 ルミナまで加わってきた。 真奈美さん程じゃないけど、ルミナもちょっと怒っているように感じる。何でだろうな。 二人に引き剥がされたリルを抱きかかえ、さくらは部屋を出て行こうとした。 「あっ――ちょっと待って」 出て行こうとしたさくらを真奈美さんが呼び止め、こう言った。 「その子も明日から学園に連れてきなさい。手続きとか制服とかは何とかするから。あ、あとナオくん達と同じクラスに入れるからね。その方が監視しやす――――と、とにかく、そういう事だからっ!」 なんかとんでもない単語が聞こえた気がしたが、それはまあ、いい。 それよりも、だ。 「そんなに簡単に決めちゃって良いんですか!?」 「いいのよ。私、学園長だし」 そういうのを職権乱用って言うんじゃないのか? まあ、ルミナも簡単に入学出来てしまったんだし、きっとリルも明日にはクラスメイトとして同じ教室に居る事になるんだろう。 「わかったわね?」 念を押すようにさくらに問いかける真奈美さん。 「はい。わかりました」 さくらもさくらでとても嬉しそうに返事を返す。 それ程リルが気に入ったのか…………。 さくらがリルを抱えて部屋を出て行ったのを見届けてから真奈美さんも帰っていった。 「はあ〜…………」 やっと静かになった部屋でオレは盛大に溜息をついた。 その時だった。 「うあぁ――――――っ!!」 ルミナがいきなり叫んだ。 本当に急にだったんで思いっきりビックリした。というか何なんだよ、いったい。 「……どうしたんだ?」 そんなルミナに不審な目を向けつつ問う。 「ねぇナオっ! 何なの、さっきの!!」 「さっきのって何だよ?」 「アタシ、凄い空気じゃなかったっ!?」 …………はい? 何を言ってるんですかね、この娘は。 「……な、何だって?」 「だ、か、らっ! さっきアタシ空気だったじゃん。そりゃもう見事なまでの空気っぷりだったぜー! 全宇宙空気コンテストが開催されたらぶっちぎりで優勝間違いなしだよ!」 「そんなコンテストは知らんが、結局お前は何が言いたいんだ?」 「…………寂しかったんだよぉ〜」 言いながら抱きつかれた。 つまりアレだ。 ルミナは皆が皆騒いでいたあの状況で自分だけが話しに入っていけずに放っておかれた事が寂しかったらしい。 あっ――それでリルをオレから引き剥がそうとした時怒ってたのかな。 「あー……よしよし」 慰めるようにルミナの頭を撫でる。 オレ、最近よく人の頭撫でてるよな……何でだろう。 あ……そうか。 オレの周りには子供っぽい奴ばかりなんだ。 ルミナの頭を撫でながらオレはそんな事を思っていた。 「…………一緒に寝て良い?」 「ダメだ」 抱きつきながら上目遣いで言ってきたルミナを引き剥がす。 たく、いきなり何言い出すんだコイツは……。 ☆ ☆ ☆ そんなこんなで、翌日、リルは本当にオレ達のクラスにやって来た。 「え〜っとリルちゃんの席は……」 リルの自己紹介が終わると担任である香奈ちゃんは空いている席を探す。 だけど今、この教室には空いている席は無い。 使ってない机と椅子を一式持ってこなきゃリルの席はないのだが、 「先生、私の隣が空いてますよ♪」 さくらが自分の隣の席を指差し言った。 桜の隣の席……さくらは悠の前の席で悠の隣がオレだ。 つまり、さくらが空席だと指差した席にはオレの前に座るショウが居る訳だ。 「空いてね〜よっ!」 さすがにツッコむショウ。 「はっ! だけど、ここで席を譲れば高感度アップ――てか惚れられるんじゃね?」 そんな事を呟いてショウは急にニヘラ〜っと気持ちの悪い笑みを浮かべた。 「いいよいいよ! 俺、後で机持ってくるからリルちゃんはここに座って!」 ショウは机の中身を鞄に詰め込みながらリルに言った。 「ありがとうございますっ!」 リルはショウの席までやって来ると礼儀正しくお礼した。 基本、ルミナ以外には礼儀正しくていい子みたいだな。 「いいって事よ! それよりリルちゃん学園の事知らないよね? なんなら俺が案内して――」 ショウの言葉はそこで途切れた。 何故ならリルの後ろから伸ばされた腕がショウの顔を鷲づかみにしていたからだ。 リルの後方。つまりさくら。 「リルちゃんに手を出したら許しませんよ?」 さくらはショウの顔面を鷲づかみにしたまま告げた。 この時、さくらのあまりの迫力に教室中がシ〜ンと静まり返っていた。 オレはこの時のさくらを生涯忘れないと思う。それ程恐ろしかったね……笑顔なのに。 「ひ、ひゃい……」 指がめり込む程の力で顔面を鷲づかみにされ、なおかつ今のさくらにこう言われたらショウじゃなくても、そう答えるしかないだろう。 返事をしたショウはそのまま白目を剥いて気絶したようだった。 さくらはショウの顔を掴んだまま教室の後ろに投げ飛ばした…………片手で。 憐れ。ショウは教室の後方でゴミのように横たわっていた。 今回はさくらがやったという事でクラス中が驚いていたが、ショウがこんな感じになるのは良くある事なので、その事に関しては誰も気にする素振りを見せなかった。 「よろしくですっ!」 前の席に腰を下ろしたリルが振り返ってそう言った。 「ああ、よろしくな」 オレはさくらの視線を感じながら無難に返事をし、これからますます騒がしい日々になるんだろうな、と思っていた。 |