さて――
 なぜだか猫化してしまったルミナを着替えさせた訳だけど……。

「これから、どうする?」

 オレは琴葉と紗綾に問いかけた。
 オレ達は紗綾の部屋で腰を下ろし話し合っていた。
 というかオレ達……何してたんだっけ?
 ルミナ・猫化のショックが意外と大きかったのか、そんな事を思っていた。
 ああ、そうだ。ここで起きてる事件を調べてたんだっけ。

「ルミナさんがコレじゃ……一緒に居た二人がどうなったのか訊く事もできないですよね」

 紗綾がオレの膝の上に乗っているルミナを見て言う。
 なんか、やたらと猫化したルミナに懐かれてしまったようだ。ずっと離れてくれない。これが本当の普通の猫なら何の問題も無い……だけど、今、オレの膝の上に居るのは猫化しているとはいえルミナだ。猫じゃない。
 だから、当たり前だけど猫よりは重いし……まあ、それでも軽くはあるんだけど。それに目を細めて猫のように擦り寄ってくるから何か柔らかい物が体中に押し付けられたり、甘いような良い匂いがしてきたりで……なんか色々ヤバイです。
 そんなルミナは何で自分が見られているのか解ってないのか首を傾げてオレ達三人を見回していた。

「うなあぁぁ〜」
「――っ!? うわ、ちょ、ばか! いきなり何すんだ!?」

 オレ達を見回していたかと思うと、急にオレの頬に自分の頬を気持ち良さそうな顔で擦り付けてきた。
 全くの不意打ちにオレの心臓はヤバイぐらいドキドキしてしまっていた。

「お二人は仲が良いですね〜! 私も負けずにお姉ちゃんにスリスリしま〜す!」
「…………」

 笑顔で琴葉に抱きついて頬擦りする紗綾。琴葉は全く表情を変えてなかった。
 つーか、仲が良いって……ルミナは猫になってるんだっての。

「そ、それより、どうするんだよ? ルミナがこんなだし、やっぱり足で捜しに行くしかないんじゃないのか?」
「そうですね……それしかなさそうですよね」
「…………二人も……心配」

 オレと紗綾は少しウンザリ気味に言う。
 琴葉はルミナを見ながら呟いた。

「確かに……他の二人もどうなってるか解らないし、早く見つけたほうがいいよな」
 
 言って、オレもルミナを見る。
 一緒に居なかったってことは他の二人も、ルミナと同じように何かが起こったって考えるのが自然だよな。
 ……あの麻生さんが簡単にどうにかなってしまったとは想像できないけど。

「よしっ! そんじゃ、探しに行くか!」

 立ち上がる。
 いきなり立ち上がったせいで、ルミナが「ふにゃっ!?」と驚いていた。
 

 ☆ ☆ ☆

「どこにも居ませんね」

 探し始めて随分と時間が過ぎた。
 事件の原因は勿論、リルと麻生さんの姿も見当たらない。

「まさか……この建物から出て行ったなんてこと」

 もし、そうなれば三人で探し出すのは絶望的な状況になってしまう。

「効率よくバラバラになって探しますか?」
「それは止めた方が良いと思う。バラバラだと何かあったとき余計に危険だし」
「でもルミナさん達は三人一緒に居て、こんな風になっちゃってますけど……私達も一気にやられちゃったり……」

 不安を口にする紗綾。
 確かに何か起こったとき一人より三人で居た方が安全だとは思うけど……相手が解らないし一気に三人ともやられてしまう可能性も高いんだよな。
 そう考えてオレも不安になってくる。
 
「…………大丈夫」

 重苦しい空気になっってしまったその時、そう言ったのは琴葉だった。

「……二人とも…………守るから」

 琴葉は木刀を握り締めてオレ達をまっすぐに見つめた。
 なぜだか解らないけど、その琴葉の眼を見ると安心って言うのかな……なんか心が落ち着いたような気がした。
 
「んじゃ捜索再開するかっ!」
「はい!」
「…………うん」
「とりあえず……一通り探したし、食堂の方に戻ってみるか」
「そうですね。ルミナさん見つけた後は行ってないですから、何かあるかもしれません」
「それじゃ、決定な」

 オレ達は食堂へ向かい歩き出した。

「しっ――静かに!」

 食堂が近づくにつれ、なにやら物音が聞こえてきた。
 オレは琴葉に抱きついて喋っていた紗綾に向かって静かにするようジェスチャーしたあと、聞き耳を立てる。
 やっぱり――食堂の奥、調理場の方から物音が聞こえる。
 二人の方を見て頷きあう。
 音を立てないように食堂の中へ。

「それじゃあ……開けるぞ!」

 調理場へ続くドアに手をかけ二人に言う。
 緊張した顔で頷く紗綾、木刀を構える琴葉。
 そして、オレはドアを開け調理場へ入った。

「――――リルッ!?」

 思わず声を上げてしまった。
 調理場にはリルの姿があった。
 冷蔵庫の前に居たリルはオレの声に振り向いた。
 
「…………リル?」
「………………リ、リルさん」
「…………」

 振り向いたリルを見てオレ達は言葉を失ってしまった。
 冷蔵庫の前に居たってことは何か食べてたんだろうけど……ただリルの頬は一杯に膨らんでいた。なんか……口の中に食べ物を貯めているみたいに。
 それに、リルの頭には丸っぽい耳、お尻にも丸っぽい尻尾。

「も、もしかして……ハムスター?」
「ですよね」
「…………かわいい」

 多分、あれはハムスターだと思った。
 紗綾も同じ意見のようだ。琴葉はルミナを見たときと同じ反応だった。
 ルミナはオレから離れリルに近づいていく。 

「ふしゃぁ――――っ!!」
「キッ――キッ――!!」

 そして、なぜか威嚇した。
 リルも一緒になって威嚇しあっていた。


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