パシャッ――パシャッ――。
 そんな音でオレは目を覚ました。
 
「あ…………」

 目を開けると、オレの横に立ち、携帯のカメラを向けているリルと目が合った。
 さっきの音は携帯で写真を撮る音のようだ。
 なんで、写真なんか撮っていたのか……オレはリルに尋ねてみた。

「……楽しい?」 
「あ、あの〜……その……あ、あはは」

 リルは曖昧に笑って誤魔化していた。
 どうやら、今オレはソファーか何かに横になっているらしい。
 起き上がろうと思ったとき違和感を感じた。今、寝ているソファーは確かにふわふわで気持ち良い物なんだけど……頭の位置だけ感触が違う。
 なんだろう……枕……のようだけど、枕じゃない。
 あったかくて、柔らかい。
 あったかくて? 
 枕なのにあったかい……? 
 オレは起き上がる前に、手で触って調べてみた。

「うひゃっ……」

 触ってみると、何か驚いたような声が聞こえてきた。
 オレは慌てて起き上がる。
 
「…………ル、ルミナ?」
「お、おはよう……ナオ」

 オレの頭があった位置にルミナが座っていた。
 ルミナは少し顔を赤くしていた。
 ということは……オレはルミナの足を枕にしてたって事か? そんで……触ったというか撫でちゃったのか?
 
「あ、あのなルミナ……触っちゃったのはなんてゆーか気付いてなかったからで別にわざとって訳じゃ……」

 視線を合わせないよう彷徨わせながら早口に言い訳する。
 と、そこで気付いた。
 
「……ここ……どこだ?」

 見知らぬ部屋。
 とんでもない広さで、家具なんかも一目で高級だと解るような物ばかりだ。
 
「ここはですね……その前にここに来る前のこと覚えてますか?」

 ソファーの、オレが立ち上がって空いた場所に座ったリルが話し出す。 
 ここに来る前……?
 確か……学校が終わって三人で買い物して……それから……それから、どうしたんだっけ?
 
「え〜っと…………あっ!」

 思い出した!
 買い物して店から出た時、メイドっぽい人に声かけられたんだ。それで……気絶させられて、それで気付いたらここにいた……んだよな?

「あ〜、うん。多分解る」

 そうリルに答えた。
 
「連れ去られそうになってたナオヤさんを見つけたボクとルミナはすぐにナオヤさんの乗せられた車に駆け寄ったんです」
「そういえば……二人がオレを呼ぶ声が聞こえた気がする」
「それでアタシ達も一緒に車に乗ってきたんだよっ!」

 リルに続いてルミナが言った。
 うん……全く解らねぇ……。なんで一緒に乗ったのかとか、その辺の方が大事じゃね?

「ルミナ! それじゃ説明になってないでしょっ!」
「え〜……そうかな〜」
「そうだよっ!」

 オレの思ったことを、先にリルが言ってくれた。
 二人はそのままオレを無視して言い争い始めてしまった。
 そんな二人を見て……再び違和感を感じた。
 二人の姿を良く見る……なんだろう、この違和感は……二人とも、何かが違う。
 
「あっ……」

 わかった。
 制服だ……二人が着てる制服。ウチの学園の制服じゃない。
 二人とも同じ服だし気付かなかった……。

「なあ、二人のその格好はなんだ?」

 問いかけると言い争っていた二人はこちらを向いた。
 
「ナオこそ、そのカッコはなんだぜー!? 妙に可愛いんだけど」
「……はぁ?」

 言ってオレを凝視するルミナ。
 何かおかしいのか?
 オレは自分の格好を確認する。

「…………はぁーっ!?」

 オレは……なぜか、ルミナやリルと同じ制服を着ていた。
 同じ――全く同じ制服を。
 つまり女子の制服を、だ。

「はぁ? はぁーっ!?」

 何かもう、言葉が出てこない。
 ……意味がわからない。何でオレはこんな服を着てるんだ? 
 オレは頭を抱えた……また違和感。
 髪が……長い。どれくらい長いか触って確かめると、腰までの長さだった。
 そこで……オレは、部屋の隅にある鏡を見つけ、その前に立ってみた。

「…………な、なんで」

 鏡の中のオレは……女だった。
 服はルミナ達と同じ制服だけど……その姿はバイトで女装させられた時に見たオレの姿に間違いなかった。
 なんで? え、なんで!?
 疑問しか浮かばない……。
 
「どういうことだ? 二人は何か知ってるのか!?」

 二人に駆け寄り尋ねる。

「ナオ、写真で見るより全然可愛いよ!」
「うん、嬉しくねえよ」
 
 オレの質問は無視したルミナの感想。
 リルは無言でオレを見つめていた。
 そういえば……気がついたときリルが写真撮ってたけど、この姿が原因か。
 
「感想はいいから説明してくれ!」

 オレは叫ぶように言った。
 その時――

「それは私が説明致します」

 と、そんな声とともに部屋の扉が開いた。
 
「あ、あんたは……」

 そこに立っていたのは……スーパーで見たメイド姿の女性だった。
 その後ろから、

「…………」

 無表情、無言の琴葉が続いて入ってきた。
 琴葉もオレ達三人と同じ制服を着ていた。
 色々と質問したいこととかあるけど、とりあえず話を聞くためにオレもソファーに腰をおろした。
 
「服のサイズは皆さん丁度良かったようですね」

 ソファーの前に立ったメイドさんは、オレ達三人を見て言った。

「サイズより、性別の問題があると思うんですけど」

 オレはメイドさんに向かって言う。

「問題ありません」

 メイドさんは一言そう言った。
 
「では、皆さんに着替えてもらった理由の説明をします」
 
 そして、さっさと説明に戻っていった。
 なんかオレの扱い酷くないか?
 それに……なぜか、メイドさんのオレを見る目がとても冷たく感じた。
 さっさと着替えてしまいたいんだけど……メイドさんからは話しかけるな、といった雰囲気を感じる。
 
「はあ〜…………」

 溜息を吐いて、琴葉を見た。
 オレが見ていることに気付いた琴葉は無表情のまま……何故か、オレに向かって親指をピンと立ててみせた。
 ……こっちも駄目だ。親指を立てる意味がわからない。

「…………と、いうわけです」

 そうこうしてる間に説明は終わってしまっていた。
 ……全く聞いてませんでした。
 
「それでは外に車が用意してありますので移動してください」

 メイドさんはそう言って部屋から出て行ってしまった。
 
「ナオ、行こ〜ぜ〜」

 オレは訳も解らないまま、ルミナに手を引かれ車に移動した。


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