| 凄かった……。 ルミナとリルという少女の戦いは、そりゃもう凄かった。 リルという少女がルミナに掴みかかろうとするも、それをことごとく避けるルミナ。捕まえられない事にイラだった少女はどこからともなく銃のような物を取り出し、ルミナに向けて撃った。その銃から出てきたものは地球の銃とは違い、光線のような物だった。 それに対しルミナはビームサーベルで応戦する。 オレは物陰に隠れて成り行きを見守っていることしか出来なかった。 ……止めたい、正直止めたいさっ! だって部屋がどんどんボロボロになってくんだよ!? でも止められないって……下手に出て行けば間違いなく死ぬから。 今だってたまに飛んでくる流れ弾を避けるのに必死だ。 「これで楽にしてあげるっ!」 そう言うと少女の銃の銃口から光線が伸び、ビームサーベルのようになった。 少女はそれを構えるとルミナに向かって走り出す。 「そんなこと言ってもリルってアタシに勝ったことないじゃん」 「う、うるさいよっ!」 ルミナは少女のビームサーベルを自分のビームサーベルで受け止める。 二人ともそのまま動かない。ビームサーベル同士の触れ合っている部分がバチバチと音を立てる。 マジで映画のような光景だった。 だけど勝負はあっけなく終わることになる。 睨み合っていた二人だが、ルミナが急に二ヤッと口の端を吊り上げ今まで身体の後ろで隠していた左手を振り上げた。 それを見た少女は―― 「な――っ!?」 と、驚きの声をあげた。 「これで終わりだぜーっ!」 ルミナはそう叫ぶと左手を振り下ろす。 その手に握られているのは――――先程ダディーを炒めようとしたフライパン。 ルミナはそのフライパンで思い切り少女の頭を殴打した。 「んにゃっ!!」 なんとも可愛らしい悲鳴を上げ少女はその場に倒れ伏した。 あれだけ派手に映画のような戦闘をしていたのに最後はあっけなくフライパンで決着がつくとは誰も思わないよな。オレだって思わずその光景を見て固まってしまったからな。 ルミナは『やったぜっ』って感じで得意気な顔でオレを見る。 「やったぜー!」 あ、声に出して言った。 ――って、そんな事よりリルって子は大丈夫なのか!? 殴った時、物凄い音がしたけど。 「おいっ! 君、大丈夫か!?」 オレは倒れた少女に駆け寄り声をかける。 ……ピクリともしない。つか、すんごい血が出てるんですけど? 「あ〜……リルはその程度じゃ死なないから大丈夫だよ」 オレの背後に立つルミナがのん気に言う。 へぇ〜……なら安心か――って、バカかっ!! 「そんな訳ないだろ!? こんなに血が出てるんだぞ!」 「そのうち普通に起きると思うよ〜。前はもっとヤバい事になってたし」 ヤバイ事ってなんだよっ!? 前に何があったんだ? 聞けない……怖くて、とても聞けない。 ルミナがここまで落ち着いてるんだし、本当に大丈夫なのかな……。 「本当に大丈夫なんだな?」 「ナオもしつこいぜー! 絶対大丈夫だってば」 「わかった、信じるよ」 ルミナの言葉に一度頷いてから再びルミナを見る。 「じゃあ、タオル持ってきて! いっぱいっ! カーペットが! 床が! 血でヤバイ事になってるから!」 オレはルミナに向かって叫んだ。 この子は大丈夫なんだと安心した途端にそんな事が気になりだした。 これ、絶対に染みになるって……。 「ナオ〜っ! 持って来たぜー!」 ルミナは両手に抱えて沢山のタオルを持ってきた。 「よくやった!」 オレはルミナが持ってきたタオルを半分受け取り二人で血を拭き始めた。 ☆ ☆ ☆ 「な、なんとか落ち着いたな……」 血の付いたカーペットを洗濯機に放り込み、床をタオルで入念に拭き、気絶したまま起きる気配の無い少女をソファーに寝かせ、やっと一息つけた。 ソファーで寝るリルという少女。 一応血は拭いたものの止まる気配が無かった為、ルミナによって彼女の頭はかなりの数のタオルでグルグル巻きにされていた。 …………かなり異様な光景だ。 というか……息……出来るのか? 「…………っ……」 あ、プルプルしてる。 気が付いたのかな? 「――っぷはぁ!!」 頭に巻かれたタオルを全て取り除くと大きく息を吸い込んでルミナを睨みつけた。 すごい……なにが凄いって、血が止まっているだけじゃなく顔に付いていた血の 「アンタはボクを殺す気!?」 「あ〜、まあまあ、落ち着いて」 またルミナに襲い掛かろうとする少女をなだめる。 「とりあえずこれでも飲んで……」 言いながらお茶を入れて差し出す。 ルミナと自分の分も用意する。これで話を聞く準備は整った。 少女も大人しく言う事を聞いてくれているし、ルミナの方から彼女に仕掛ける事は無いだろう。 「オレは大坪公也」 お茶をひと口啜り、とりあえず無難に自己紹介から始める事にした。 「あ、ボクはリルです」 「リルちゃんね。ここはオレの家なんだ……だからさっきみたいにイキナリ暴れるのは止めてね」 「ご、ごめんなさいっ!」 本当に悪い事をしたと辛そうな顔をする彼女をみると、とてもこれ以上怒る気にはなれなかった。 「まあ、それはもういいんだ。これから気をつけてくれれば。それで……リルちゃんは」 「リルでいいです……」 「わかった。リルは何でここに来たんだ?」 リルは俯いたままオレの話を聞いた後、顔を上げた。 「ルミナを連れ戻しに来ました」 「アタシは帰らないから。もうリル帰っていいよ」 「んだと、コラァ!!」 ルミナの言葉にリルは怒り出す。 オレとルミナとではかなり態度が違う。きっとこの二人はいつもこんな感じだったんだろうな。 「で、何でリルはルミナを連れに来たんだ? やっぱりルミナの親に頼まれたのか?」 「え……その……違いますけど」 「えっ、違うのか?」 驚いた。 オレはてっきり、ルミナの親が関わってると思い込んでた。 「どうせ寂しかっただけだぜー! リルってアタシしか友達いないし」 「うっ、うるさいよっ!!」 真っ赤になって怒鳴るリル。 やっぱり二人は友達ではあるんだ。喧嘩するほど仲が良いってやつかな。 「とにかくアタシは帰らないから! 絶対に!」 ルミナが言うとリルは目に涙を一杯溜めて悔しそうな、寂しそうな顔をしていた。 「ならボクもここに住む!」 そしてリルはとんでもない事を言い出した。 「ナオヤさん、ボクもここに住ませてください!」 「む、無理だって!」 「そうそう! 無理だぜー!」 それでもリルはしつこく食い下がってきた。 マジで勘弁してくれよ……ルミナだけで手に余るってのに。 「あっ、そうだ! 住むって言っても部屋なんか余ってないぞ。ルミナと同じ部屋でもいいのか!?」 「えぇっ!? 絶対イヤだぜーっ!!」 「ボクだってヤダよ!」 嫌がるルミナに向かってリルも叫ぶ。 「じゃ、じゃあやっぱり無理だな!」 「うんうん!」 頼むから諦めてくれと祈りながら告げた。ルミナもオレの隣でコクコクと頷いている。 「で、でも――――」 リルが何かを言おうとした時だった。 オレ達の居るリビングの扉が音を立てて開かれた。 「それなら私の部屋に住むといいですよ」 扉を開けた人物がリルにそう言った。 「さ、さくら!?」 「さくらん!?」 そう、部屋に入ってきたのは隣に住む咲嶋さくらだった。 |