引っ越してきて……そしてルミナとダディーに出合ってから、一夜明けた朝。
 まだ整理されてない、荷物の入ったダンボールが置いてあるだけのリビングで朝を迎えたオレはある目的の為に部屋を出た。

 ルミナ達はまだ寝ている。
 それもオレの布団で……。
 布団はそれひとつしかなく、オレは冷たい床の上で眠れぬ夜を過ごした。
 いまさら二人を追い出すなんて出来ないだろう。それだと、二人が生活するためには色々と必要な物を買わなきゃいけない。
 いつまでもオレの布団を使われるのは困るし……。
 問題はルミナの服だ。
 買い物に行くとしてもルミナの格好は目立ちすぎる。
 なんというか、ルミナの服は素材からしてなんかおかしい。
 だからあの服のままルミナを連れて外に出るのは避けたいところだ……。
 かといってルミナに着せるような服をオレが持っているはずもない。
 オレ一人で女物の服屋に行ってルミナの服を買ってくるなんて事も恥ずかしくて出来ないし……。
 そんな事を夜床の上で考えていたオレはひとつの妙案を思いついた。

 そしてオレは今、ある部屋の前に居た。
 表札には『202』と書かれている。
 そう――引っ越して来た日に迷っていたオレを案内してくれた咲嶋さんの部屋だ。
 彼女なら訳を話せば服を貸してくれるんじゃないか……オレはそう思った。
 色々な事があって、しかもほぼ徹夜というの状態オレは多分混乱していたんだろう。
 呼び鈴を鳴らし、名乗ると彼女は玄関を開けてくれた。
 そんな彼女にオレはこう言った。

「服を貸してくださいっ!」

 ………………。

「…………はい?」

 笑顔のまま咲嶋さんは固まってしまった。
 オレも言った後に気付く。
 年頃の女の子の家にいきなり来て服を貸してくださいなんて……変態じゃないか!
 
「ち、ちがうっ! 決してやましい気持ちじゃないんだ。ましてオレが使うわけでも……って、うあぁぁぁぁ!! 何を言ってるんだオレはぁっ!」
 
 怪しい……怪しすぎる!
 こんな奴が来たらオレなら通報するよ……。
 
「あの……訳を聞かせてもらえますか?」

 だが彼女は、そんなオレに優しくそう言ってくれた。
 

 ☆ ☆ ☆ 

「なんか悪いな……また案内してもらっちゃって」
「私から言った事ですからいいんですよ〜」

 理由を話し、ルミナに会わせると咲嶋さんは快く服を貸してくれた。
 おまけに服や生活用品なんか色々そろえることの出来る店にまで案内してくれた。
 不思議な子だな……。
 ルミナが宇宙人だと言った時も速攻で信じていたし。

「コレに決めたぜー!」

 籠一杯に服を詰めたルミナがそれを差し出して言ってくる。

「…………なんでオレに言うんだ?」
「男の甲斐性の見せ所だぞ」

 オレの言葉にルミナの頭に乗っているダディーが反応する。

「いや、おかしいだろ。なんでオレが買ってやらなきゃいけないんだ?」
「アタシこの星のお金持ってないし」

 今度はルミナが答える。
 それはアレか……オレはコイツを家に住ませるだけじゃなくて面倒もみなきゃいけないって事か? 
 なんでオレがこんな目に合わなきゃいけないんだよ……。

「おねが〜いっ!」

 ルミナが上目遣いで言ってきた。

「……たく、わかったよ……」
「ありがと〜♪」

 抱きついてくるルミナ。
 どうやらコイツは嬉しいと抱きつく癖があるらしい。

「離れろ。あと、そんなに買えないから減らせ」
「…………チッ」

 え? 何?
 オレ今舌打ちされた?
 なんか理不尽じゃね?
 釈然としない気持ちのままルミナが減らしてきた服のお金を支払う。
 ……減らしても、まだ多かったけど。

 その後、必要な家具等を揃えて、とりあえず買い物は終わった。

「お腹すいたぜ〜……」

 ルミナが言って時計を確認すると買い物を始めてから結構時間が経っていた。
 お昼をとっくに過ぎている。

「どっかで食べるか……」

 そう言ってオレ達はファーストフードの店に入る。
 

 ☆ ☆ ☆

「おお〜っ! 美味いぜ〜!」

 言いながら七個目のバーガーを食べるルミナ。
 
「私はこのチキンフィレオというのが好きだ」

 と、共食いにしか見えない……。
 ダディーが鳥かどうかは怪しいけど。見た目は完全に鳥だし……。

「あの……本当にご馳走して貰っちゃっていいんですか?」

 遠慮無しに食べるルミナとダディーとは対照的に、遠慮がちに咲嶋さんは言った。

「うん。案内してもらっちゃったし……。昨日のお礼も兼ねてね」

 言いながらオレも自分の分を食べる。
 咲嶋さんが食べ終わるのを待って店を出た。
 

 ☆ ☆ ☆
 
 家に着き、送られてきたソファーに座る。
 そこでルミナに言っておかなきゃいけない事を思い出す。

「ルミナ」
「何?」

 オレが呼ぶと今日買った服を袋から取り出しながら返事をした。

「オレ明日から学校だから日中留守番頼む」

 オレがそう言うとルミナは服を弄るのを止めて振り返った。

「アタシも行く!」
「駄目」
「…………チッ」

 また舌打ちですか?
 大体生徒じゃないルミナが行っても追い出されるだろ……。
 
「アタシも連れてって?」
「可愛く言いかえても駄目なものは駄目」
「ケチ〜〜〜〜!!」

 その後も起きている間中、ルミナは連れて行けとうるさかった。
 最後にはなんとか連れて行けない事を納得させたもののオレは激しく不安だった。



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