な、なな何なんだ、コイツは。
 起き上がったソイツを見る……いや、オレよりかなり大きいから見上げると言った方が正しいか。2メートル近くある。
 それはどこからどう見ても巨大なペンギンだった。
 ペンギン……ここって山だよな、山ってペンギン居ないよな。しかもこんなに巨大なペンギンって地球上に居るのかな……というかペンギンって喋れたかな? ツチノコだって居たんだし居てもおかしくないのかな。

「ナオ! しっかりして〜っ!!」
「は――っ!」

 ルミナに肩を捕まれグラグラ揺らされる。
 どうやらオレは混乱していたらしい……。

「さあ、一緒に来るのん!」
「い、痛いって――」

 ルミナの手を掴むと強引に連れて行こうとするペンギン。
 
「ナ〜オ〜!」

 ルミナがオレに助けを求めてくる。捕まれてない方の手をこちらに伸ばし、悲しそうな顔をする。
 だけどオレには分かった……ルミナが演技していると。前に一緒に見たドラマにこんなシーンがあった。そしてルミナが悲しい顔をする前に一瞬ニヤッとしたのをオレは見逃さなかった。 
 悲劇のヒロインにでもなったつもりなんだろう。そう思うとルミナの悲しそうな顔もうそ臭く見える。というか、この子連れ去られそうなのに随分と余裕ですね。

「タ――――ス――――ケ――――テ――――ッ!!」

 中々助けようとしないオレに対して大声でルミナが叫んだ。なんかセリフまでうそ臭く思えてきたぞ……。

「まあまあ、落ち着いて」

 言いながらルミナを掴んでいるペンギンの手(羽?)を離す。というか、アレでどうやって掴んでたんだろう……?   

「何するのん!?」

 なんかメッチャ怒ってます。

「と、とりあえずどういう事か話してくれよ」

 オレの後ろに隠れるルミナを捕まえようと近づいてくるペンギンを両手を前に突き出し静止して話をしようと提案する。

「ルミナの父親が『ルミナを説得して連れて帰った奴には全財産をやろう』って言ってたのん! ついでにルミナもオイラの物になるのん……要らないけど」
「要らないってどういう事じゃぁ〜いっ!!」

 ペンギンの言葉にルミナがキレた。
 
「という訳で一緒にくるのんっ!」
「誰が行くかぁ――――っ!!」

 ペンギンに掴みかかろうとするルミナを止める。

「お前はバカですかっ!? 近づいたら捕まるって!」
「大丈夫っ! 捕まる前に殺すからっ!」

 ぜ、全然大丈夫じゃねぇ〜!
 
「お、落ち着けって――」

 ルミナを後ろから羽交い絞めにする。
 
「ペンギン! お前もさっさと帰れ! じゃないと秘密兵器を使う事になるぞ」

 暴れるルミナを抑えながらペンギンに向かって叫んだ。
 一瞬キョトンとしたペンギンだったがすぐに大笑いしだした。

「人間なんかに負けるわけないのん! お前こそ大人しくルミナを渡すのんっ!!」

 少しの間笑っていたペンギンはそう言ってオレ達に近づいてきた。

「――くそっ! 仕方ないな」

 オレはルミナの肩にぶら下がっているバッグに手を突っ込んだ。

「うおぉぉぉ! ダディー召喚っ!!」

 オレは朝バッグに突っ込んできたダディーを掴み頭上へ掲げた。

「…………」

 取り出しても何の反応もないダディー。
 不思議に思って顔を覗き込むと物凄い不機嫌な顔をしていた。

「ど、どうした?」
「ダ、ダディー?」

 その顔を見たルミナもさっきまでの怒りが消え、戸惑った表情をしていた。

「ブフフフッ、そんな人形でどうする気なのん?」

 ペンギンがダディーを見て笑う。
 ダディーは不機嫌な顔のままペンギンを睨みつけた。

「な、なんなの〜〜〜んっ!?」

 睨みつけ、ダディーの眼が光ったと思った次の瞬間ペンギンは叫びながら消えてしまった。

「…………」

 何が起こったのかわからずに言葉が出ない。
 
「ダ、ダディー? な、なにしたの?」

 オレが固まっているとルミナがダディーに話しかけた。
 ルミナの声でオレの脳もやっと動き出した。脳というか思考が。さすがに脳が止まるとヤバイ。
 ダディーの不機嫌の訳。それは起きたら暗くて何も見えないうえにバッグに色々と物を詰め込み過ぎていたせいで身動きもとれなかったらしい。さらに出してくれと叫んでいたりもしたらしいがオレ達には全く聞こえてなかったけど……。
 まあ、そんなこんなで機嫌は最悪になったらしい。

「ぺ、ペンギンはどうなったんだ?」

 機嫌の悪いダディーが怖くてまともに顔が見れないので目を逸らして聞く。

「宇宙のどこかにいる」

 どこかって……そんな適当な。
 
「ナオくぅ〜ん!」

 やっと追いついてきた真奈美さんとショウ。
 合流したオレ達は、もう日が暮れ始めているし悠との待ち合わせ場所である山の入り口まで戻る事にした。

  
 ☆ ☆ ☆

「はるちん遅いね〜」
「そうだな……」

 待ち合わせ場所に着いて三十分はたっている。
 オレ達はベンチに座って悠を待っていた。ただ待つだけってのは暇すぎてルミナはダディーをおもちゃにして遊んでる……おもちゃにするのはいいけど羽を毟ってたのはさすがに引いた。真奈美さんはオレの膝を枕にして寝ちゃってるし。ホント年上とは思えない。ショウは……ま、いっか。

「俺の扱い酷くねっ!?」
「人の心を読むなよ」

 なんで考えてる事が分かるんだよ。

「おっまたせ〜!」

 その時、悠が現れた。 
 
「遅ぇよ!」

 ショウがすかさず突っかかる。

「ごめんごめん」

 悠にしては珍しく素直に謝った。
 
「悪いと思ってんなら身体で払ってもら――」
「とりあえず死ね!」  
「ぐふっ……」

 鳩尾を殴られて前のめりの倒れこむショウ。今のはショウが悪いと思う。

「なんでこんなに遅かったんだ?」
「いや〜、何か沢山獲れちゃってさっ!」

 言って悠は虫かごをオレ達に見せた。

「うおぉっ!」
「すごいぜー!」

 そこにはクワガタ……いや、多分大クワガタが十匹以上入っていた。
 
「コレを売ればいくらぐらいになるかしら」

 悠はかごの中を見つめてそう呟いていた。
 なんて逞しい奴なんだ……。
 
 ☆ ☆ ☆

 悠も合流したところで真奈美さんを起こし電車に乗って家へと帰る。
 その電車の中での事。
 オレの両隣で寝るルミナと真奈美さん。二人がオレの肩にもたれ掛かっているせいで身動きがとれない。その状態を電車に乗っている間ずっと悠にからかわれていた。


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