| 海の家の忙しさは……もう想像を超えていた。忙しすぎて大会で負けたことを悔しんでいる暇もなかった。 お馴染のメイド服も海仕様になっていた。 元々、露出度高めの服だったのが、さらに露出度アップ。 ……既にメイド服とは言えないんじゃないかって程だ。それでも、メイド服と解るあたり、デザインした店長の腕が凄いって事か……。 そんな服で、しかも店員はほとんど女の子……だから、男ばかり集まってくるかと思っていたんだけど、珍しいからか、女の子のお客さんも結構多かった。 この忙しい中、こういった場所では良くあるナンパや、性質の悪いからんでくる客がいないのは……多分、影で店長やさくらが動いているからに違いない、と思う。見たわけじゃないけど……何故かオレの中で、その考えは間違いないと確信出来ていた。 店が終わったあと、ルミナと話していると店長やさくらが突然居なくなる事があるって言ってたし。 まぁ、そんな訳でたいした問題もなく店は順調に営業を続けた。 忙しさも三日目にもなると大分慣れてきた。 初日は自分一人では無理だった……ルミナとリルに手伝ってもらって何とか乗り切れた感じだ。二日目は後半は何とか一人でも出来るぐらいにはなった。 三日目……今現在は初日、二日目と、ずっと作り続けていた料理も、要領をつかめてきて営業時間中ずっと作り続ける……という事はなくなってきた。空いた時間に店内の様子を窺えるぐらいには慣れてきた。 忙しい……ってこと以外にも予想外の事があった。 それは、ショウ兄妹が一緒に働いている事。 どんな方法で二人を働かせる事になったのかは解らない……ショウに聞いても教えてくれなかった。なんか遠くの空を見て「まあ……いろいろあるさ」とか 妹の未来ちゃんは、ルミナやリルと同じぐらい人気があるみたいだった。 この世にはオレの想像以上に『特殊』なお方達が多いのかもしれない。 てか小学生を働かせていいのか、とか思わなくもないけど……店長の事だから大丈夫だろう。 その未来ちゃんとは対照的に厨房に居るショウという男……全く役にたたねぇ。 料理はまるで駄目だし、こんな奴をホールの方に出すわけにもいかない。一度レジをやらせたら会計に来る女の子をことごとくナンパしていた。 結局、皿洗いぐらいにしか使えないという役立たず具合だ。 しかも―― 「なんで厨房なんかで皿洗わなきゃいけないんだよ〜、ここからじゃ水着見れねぇよ〜」 とか、 「俺、実は肌めちゃくちゃ弱いんだよな〜、洗い物ばっかしてたら手ぇ荒れちまうよ〜」 とか、グダグダと文句をたれていてウザったい事この上ない。 特にオレは一日中近くで聞かされている訳で……何度殴りたいと思った事か。 そんな状況にもなんとか耐え、今日も店の終わる時間が近づいてきた。 「ナオー、やきそばふたつー! これで最後ねー」 ルミナが厨房に顔を出して言う。 一日中働いているのに、まだまだ元気一杯な感じだ。 「おうっ!」 返事をして作る。 作ったものをルミナに渡して厨房を片付ける。 あとは戻ってきた皿を洗って終わりだ。 いつの間にか居なくなってるショウに変わってオレが洗わなきゃいけないし……アイツいつかぶっ飛ばす。 ☆ ☆ ☆ 「お祭りですか?」 「ええ。今日は近くでお祭りがあるからみんなで遊んでくるといいわよ」 店が終わって旅館に帰り、みんな集まって話している時、店長が言った。 何でも毎年行われている夏祭りが今日あるらしい。 屋台が沢山出て、花火も上がる……この辺りでも大きなお祭りなんだとか。 「お祭りっ!? それって楽しい!?」 隣に居たルミナが聞いてくる。 こいつ……祭り知らないのか? 宇宙に祭りってないのかな……あっても祭りって単語がないだけか? 「ま、楽しいんじゃないか?」 「た、楽しいのっ!? い、行きたいっ!!」 祭りがあるって分かった瞬間から、どうせ行く事になるだろうと思ってたよ。 「ナオ、で、祭りってなに?」 「色々屋台とか出てたり花火が打ち上げられたり……」 祭りってなに……って聞かれても、なんて説明すりゃいいんだ? 「あんた達は年中お祭り騒ぎじゃない……あれ? 今あたし上手い事言った?」 「全然上手くねぇよ。親父ギャグかよ」 団扇で扇ぎながらダルそうに言う悠にツッコむ。 完全親父ギャグだよな……お祭り騒ぎて……。 「祭り……行くんだろ? だったら行けばわかるよ」 オレは説明を諦めてそう言った。 店長に部屋を追い出され数十分……。 やたらと笑顔で用意があると言っていた店長。 さすがにこんだけ待たされるとイライラしてくる。暑いし。 でも、祭りの賑やかな音が旅館の入り口に居るオレの耳まで聞こえてきた。 「お待たせだぜー!」 「あ、ナオヤさん……ごめんなさい、時間かかっちゃって」 まず出てきたのはルミナとリル。 二人ともピッタリサイズの浴衣姿だった。 これかっ! 店長の笑顔のわけは。 「あ〜……やっぱアッツイわね〜」 「悠ちゃんだらしないですよ」 「そんなこと言っても暑いんだから仕方ないじゃない」 二人に続いて悠とさくらも出てくる。 やっぱり浴衣だった。 みんなピッタリなサイズだし……店長、最初から用意してたな。 「ナオ〜どう〜?」 クルクルと回りながら聞いてくるルミナ。 浴衣に合わせて髪も頭の上の方で一つに纏めてあった。 ………………。 …………はっ!? い、一瞬見とれてしまった。 馬子にも衣装とはよく言ったもんだ。うん。衣装のせいだ。 「い、良いんじゃね?」 頬を掻きながら直視しないで答えた。 「あの……ナオヤさん。……ボク……どうですか?」 真っ赤な顔でリル。 リルはいつも二つに縛ってある髪を下ろしていた。 そこまで恥ずかしがられると逆にこっちは落ち着いてくる。 「あ、ああ……似合ってる、と思うよ」 「あ、ありがとうございます……」 な、なんだっ!? このウレシハズカシなやり取りは!! 「――さ、リルちゃん。行きましょうか」 そんな感じで話していると、突然さくらがオレとリルの間に割って入り、リルの手を引いて祭りの方へ歩いていく。 ……なんか、まだ警戒されてるらしい。 「アタシ達も行こうぜー!」 「あっ!? ……お、おお」 言ってルミナはオレの手を取って、さくら達のあとを追って歩き出した。 突然手を握られてビックリしたけど……オレもあわせて歩き出す。 後ろからニヤニヤ見ながら悠もついてきていた。 |