……本当に来てしまった。
 山だ。それもあまり人の手が加えられていないような山。
 本当に未知の生物でも出てきそうな雰囲気がある。
 というか日本にこんなところがあったなんて驚きだ。

「ツチノコ狩りだぜぇぇぇっ!!」
「ツチノコ狩りじゃぁぁぁっ!!」

 叫ぶバカ二人。
 勿論ルミナとショウの二人だ。
 今オレ達は全員、虫取り網と虫カゴを持っている。ここに来る途中で買ってきた物だ。
 ……こんな軽装備でいいのか?
 服装だって普段着だし、真奈美さんは探検隊っぽい格好と言っても半袖半ズボンだ。
 ツチノコって確か……毒持ってるんじゃなかったか? いや、居るとは思ってないけどさ。ツチノコじゃなくても危険な生物が居る可能性もあるし……。

「アンタは一緒に叫ばなくていいの?」
 
 ルミナ達から少し離れた場所に居るオレと悠。
 オレに向かって悠がバカにした感じで言ってきた。
 
「あいつ等と一緒にしないでくれ……」
「いいじゃん。楽しそうで」
「じゃあ悠が一緒に叫べば?」
「嫌よっ」

 えぇ〜? 楽しそうとか言ってたじゃん。矛盾してね?

「ルミナ隊員、ショウ隊員。私のことは隊長と呼びなさい!」
「分かったぜー!」
「イエッサー!」

 真奈美さんもノリノリだなぁ……。

「出発するわよー!」
「おぉ〜!」

 真奈美さんに続いてルミナ達も歩き出す。

「ナオ〜! 置いてくぞ〜!」

 振り返り手を振ってきたルミナ。
 
「じゃあオレ達も行くか」

 オレは一歩前に進んで悠に言った。
 
「あたしはここで別れるわ」

 悠の言葉に振り返る。
 別れるって……どういうことだ?
 
「後で入り口の所に集合ってことで、じゃっ!」

 悠はオレが理由を聞く前に早口でそう言うと奥の方へ入って行ってしまった。
 呆然と悠の行ってしまった方向を見る。

「ナオ早く〜! ホントに置いてくよ〜?」
「あ、ああ! すぐ行く!」

 後ろの方から聞こえるルミナの声に返事をして、そちらに向かって駆け出した。


「あれ? はるちんは?」

 やっと横に追いついたオレにルミナが聞いてきた。

「なんか、別行動するって」
「よかった〜。これで今日は殴られなくてすむぜ〜」

 ルミナを挟んで反対側に居るショウが安心したように言った。
 ……それはお前が殴られるような事をするのが悪いと思うんだ、オレ。
 
「団体行動をいきなり乱すなんてっ! 隊員の自覚あるのかしら!?」
「ま、まあまあ……」
 
 それを聞いて怒る真奈美さんをなだめる。
 
「それでどう探すんだ? 闇雲に探したって見つからないだろ」

 真奈美さんが落ち着いたところで皆に問いかける。
 
「まずはエサを仕掛けるぜー!」

 言いながらルミナは鞄から何かを取り出し頭上に掲げた。
 それを見る。
 …………。

「って――柿ピーじゃんっ!? それエサ? 聞いたことないぞ!」
「何言ってんのナオ。ツチノコは柿ピーで一杯やるのが好きなんだぜっ!?」

 マジですかっ!?
 ツチノコってそんなおっさんみたいな奴なのか?

「それ本当か!? 何情報だよ?」
「決まってるじゃん! 『ツチノコを追い続けてン十年、孤高のロマンチスト。デンバーグ・忠信さん』の情報だぜー!!」
「そんなおっさんは知らね〜よっ!!」

 マジでそれ誰だよ!? 孤高のロマンチストって――そりゃ何十年もツチノコ追いかけてりゃ孤高にもなるさ! 
 なんでツッコミ所満載の情報なのに真奈美さんとショウはツッコみもせずに黙々とエサ仕掛けてんのっ!?
 もしかして知らないのオレだけ?

「デンバーグ・忠信さんは女だよ?」
「えぇ〜…………」

 女なのかよ! なんで忠信なんだよ……。絶対怪しいって、その人。

「ルミナちゃん、仕掛け終わったぜ!」
「こっちも終わったよ〜」

 柿ピーを仕掛けていた二人が戻ってきた。
 
「じゃあ隠れるぜー!」

 オレ達は近くの草むらに隠れて獲物が来るのを待つことに……。


 ☆ ☆ ☆

「で、いつまで待ってればいいんだ?」

 エサを仕掛けて一時間……なんの変化も無い。やっぱり柿ピーなんかで捕まえられる訳無いんだよ。

「じゃあ他も見てみましょ」

 真奈美さんはそう言って少し遠くに仕掛けたエサの方に歩いていった。ルミナとショウもついて行く。

「はあ〜……絶対居ないと思うけどな」
「溜息は幸せが逃げてしまいますよ?」
「古臭い事言うね……」
「でも古くから言われているという事は少なからずそういった事実があるからでしょう」
「かもね……確かに最近はよく溜息つくし不幸な事も多いけど」
「大変ですね。それより何かお探しですか?」
「ああ、それは――――」

 …………あれ? 今オレ、誰と話してるんだ?
 ルミナ達は全員ちょっと遠くに見えてるからあいつ等じゃ無いし……。
 
「……どうしました?」

 オレは声のした方へ振り向く。
 ……誰もいない?
 視線を下げる。

「な、なな――っ!!」
「どうも」

 そこに居た……。
 間違いない……ツチノコだ。本とかで見たことあるのとそっくりだ。
 オレの足元に仕掛けてあった柿ピーを摘みながらワンカップの日本酒を飲んでいる。
 
「デ――」
「で?」
「デ――――タ――――――ッ!!」

 オレは大声で叫んだ。
 そりゃ叫ぶさ! だってツチノコだよ!? 柿ピーで一杯やってるんだよ!?
 
「ナオどうしたの〜!?」

 すぐにルミナ達が駆けつけてきた。

「ツ、ツツツツチノコ……」

 オレはツチノコを指差しながらルミナ達を見る。
 
「マジで!?」
「うっそ!?」
 
 ショウと真奈美さんも驚きの声をあげる。
 ルミナはトコトコとツチノコに近づいていった。

「ホントにツチノコ?」

 そしてツチノコに話しかける。

「そうですが、何か?」
「狩るぜぇー!!」

 ルミナは叫ぶと虫取り網を振り上げた。

「なな何をするんですかっ!? 止めてください!」

 網を避けて抗議を口にするツチノコ。
 再びルミナが網を振り上げるのを見て、驚くほどの速さで逃げ出した。

「待て――――っ!!」
 
 それを追いかけて走り出すルミナ。
 
「お、おい! 待てって!」

 真奈美さんとショウはツチノコを見た時の状態のまま固まっていた。多分、実際に存在した事にショックを受けたんだろうな。
 オレは少し考えたがルミナを一人にするのはいろんな意味で危険な気がして二人を残して追いかける事にした。

 
 ☆ ☆ ☆

「見失ったぜー……」
「お前……一人で突っ走るなよな」

 やっと追いつくとルミナはツチノコを見失ったらしく辺りをキョロキョロと見渡していた。

「もう諦めないか? 早く帰らないと遅くなるし……」
「え〜そんなぁ……せっかく見つけたのにぃ〜」

 渋るルミナに言い聞かせて真奈美さん達を置いてきた場所へ戻ろうとした、その時。

「や、やっと見つけたのん!」
「……え?」

 突然、頭上から声が降ってきた。
 オレとルミナは上を見上げる。

「な、なんだ? アレは」
「し、しらないよっ……」

 見上げた空から何かが降ってくる。
 それはオレとルミナの目の前に着地し……たけど足が痺れたのかコテンと転がった。

「ルミナ、一緒に帰ってもらうのん!」

 起き上がるとソイツはルミナに向かってそう告げた。


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