| 足を掴まれ、水中から逃れられない。 「ぐ……がはっ」 ――息が……このままだとヤバイ。 掴まれてない方の足で蹴り剥がそうとする。 「この前はよくもやってくれたのん!」 ペンギンがオレに言う。 こいつ……水中でも喋れるのか。 つか、前にお前やったのってダディーなんだけど。いや、確かにオレが召還したんだけどさ。 「このまま死ぬのん。人間って弱いの〜ん!」 言いながら笑うペンギン。 その顔が……すっげぇムカついた。 「んむっ――!!」 「ぎゃぁぁっ! い、痛いのんっ!」 ムカついた、その気持ちを込めて顔面を狙って蹴ったら、ちょうど目の辺りにヒットした。 ペンギンは足を掴んでいた手を離して顔を抑える。 「んむむむむ――――っ!」 この隙に浅瀬へと泳いで戻る。 痛みに悶えていたペンギンも泳ぐオレに気づいて追いかけてくる。 でも、オレは既に腹の位置ぐらいまでの深さの場所にたどり着いていた。 そこで地面に足をつけ、立ち上がる。 「よくもやってくれたのん! 絶対殺すのん!」 ペンギンも少し離れた位置で立ち上がった。 『お〜っとぉ、巨大なペンギンが現れましたっ! 大坪選手と交戦中です!』 司会のお姉さんがマイクを使って観客全員に聞こえるように実況していた。 こんな未知の生物が現れたのに会場に混乱は全く無かった。 何でみんな気にしないの? こんな所にでっかいペンギンが居るんだよ!? しかも喋ってるんだよ……殺すって。 ルミナと会ってからよく思うようになったんだけど、絶対おかしいよ……みんなの感覚。 それともオレがおかしいのか? ……いや、オレは正常なはずだ! 「何よそ見してるのん!」 「うわっ!」 突進してきたペンギンをかろうじてかわす。 考え込んでて気づかなかった……ペンギンがバカでよかった。無言でこられたらそのままやられてたかもしれない。 それにここまで逃げてきたのも、ただ逃げてきただけじゃない。 このぐらいの深さならアイツの巨体じゃ普通に泳ぐのが難しいからな。さっきだってそんなに早い訳じゃなかったし。 「お前……ルミナが狙いじゃなかったのか!?」 突進の勢いが止まって再び立ち上がったペンギンに向かって問いかける。 「ルミナなんてもうどうでもいいのん……それよりも、お前とあの黒いのは絶対許さないのん。だから殺すのん!」 はあ……つまりやられた仕返しがしたいって事ね。 溜息を吐きつつオレは海の中からある物を取り出した。 「今度こそ殺すのん!」 もう一度突進してくるペンギン。 オレはペンギン向かって海から取り出したものを投げつけた。 「ぎゃ、ぎゃあぁぁぁぁっ!!」 見事、ペンギンの頭に命中した。 頭を押さえながらこちらにやってくるペンギン。 オレは横に移動して、先程までの勢いはなくなったペンギンの横から蹴りをいれペンギンの向きを変えた。 ペンギンはそのまま、さらに浅瀬へと向かっていった。 「うぎょひぃぃぃぃっ!! いたいいたいの――――ん!!」 ペンギンはさらに変な悲鳴を上げる。 ペンギンの背中は水中から出ていた。 ……背中が出てるって事は腹側は地面に当たってるってことだ。ということは、今ペンギンの腹側には大量のウニが刺さってるってことになる。 これがオレの狙いだった。 なんの武器も持ってないオレが水中でペンギンと戦うなんて、まともにやり合っても勝てるはずないからな。浅瀬に大量のウニが敷き詰められていた事は知っていたし、これを利用しない手はないだろう。 「とどめだあぁぁぁぁっ!!」 オレはペンギンに走り寄ってジャンプする。 「の〜〜〜〜〜〜んっ!!」 そのままペンギンの背中に着地。 ペンギンは悲鳴を上げ、動かなくなった。 「勝った…………」 ペンギンの背中に乗ったまま拳を握り締める。 『さくら選手、ゴォ――――ル!!』 その時、実況をしていたお姉さんの声が響き渡った。 「なっ――!」 リルの居た浮き島を見ると、さくらは確かにそこにたどり着いていた。 「ん…………?」 ここから見ても解る程、リルはガタガタ震えていた。 よく見ると……さくらの周りには頭の潰れたサメが数匹浮かんでいた。 まさか……さくらがやったのか!? サメの頭を潰すって……しかもあれだけの数の……。 その惨劇を見たあと、もう一度さくらを見る。 ……いつも通り微笑んでいるさくらが物凄く恐ろしく思えた。 『悠選手、ゴールまであと十メートルです!』 「考えてる場合じゃねぇ! オレも行かなきゃっ」 実況を聞いてオレもルミナに向かって全力で泳ぎだす。 「うおりゃあぁぁぁ!!」 『おお〜っと! 大坪選手、前方を泳ぐ選手を片っ端から殴り飛ばしている――っ!! 物凄い追い上げだぁ!』 あと……少し。 目の前にルミナが見える。 『大坪選手ゴールです!!』 そしてルミナの浮き島にタッチする。 「はあ……はぁ……はっ……」 息をするだけで精一杯だった。 オレはさくら、悠に続いて第三位。 「ナオ、頑張ったねー」 「ああ……ペンギンが居なかったら悠には勝てたかもな」 「ダディーに頼んでまたどっかに飛ばしてもらおうぜー!」 「そうだな」 浮き島につかまってルミナと話す。 「二人ともこちらに乗って下さい」 そんなオレ達にボートに乗っている係りの人が声をかけてきた。 ルミナとボートに乗って岸まで移動する。 「あんた最後、凄かったわね」 岸に着くと、悠が話しかけてきた。 「大坪くん、凄かったですね〜」 さくらも加わってくる。 リルはさくらから少し離れて、まだ震えていた。 「い、いや……さ、さささくらには、負けるよ……」 オレも恐怖でどもってしまう。 「さくらん凄かったねー!」 ルミナは普通にさくらに話しかけていた。 ……コイツは怖くなかったのか? あれを見ても。 「そんな事ないですよ」 「そんな事あるぜー! メッチャ怖かったもん!」 元気良く、そう言うルミナ。 やっぱりルミナでも怖かったんだな。 『全員返ってきたので、最後の競技の説明をします!』 司会のお姉さんがステージに立ち言う。 全員がそちらに目を向ける。 『最後の競技は――――』 そして、最後の競技の説明が始まった。 |