| 気がつくと……既にレースは終わっていた。 オレはステージ脇に用意されていた医務室のような場所で寝かされていた。 「う、ん…………んあ?」 隣から間の抜けた声が聞こえてきた。 寝たまま頭だけ動かして声のしたほうを見る。そこにはルミナが寝かされていた。 その、さらに向こうにはリル。 どうやら二人とも目が覚めたらしい。周りを確認する二人と目が合った。 起き上がって身体を伸ばす。 うん……気絶するほどの攻撃を受けたわけだけど……たいして痛むところも無いし、大丈夫みたいだ。 「ナオ、おはよぉ〜……」 ルミナとリルも立ち上がる。 「あはようって時間じゃないけどな……試合ってどうなったのかな?」 「あっ、あそこにみんな居ますよ!」 リルがこの部屋の入り口の少し先を指差して言う。 そこにはさくら、悠、店長が居た。 「じゃあ、行くか――って寝るな!」 「ん〜……眠いー」 布団に戻ろうとするルミナを引っ張って外に出る。 「リルちゃん、大丈夫ですか!?」 「だ、だいじょう……ぶ」 出てきたオレ達に気づいたさくらは、リルを抱きしめた。 「試合は……どうなった?」 さくらは放っておいて、オレは悠に尋ねた。 「ナオヤが気絶して、リルとルミナも相打ちで気絶したから……ゴールしたのはあたし達だけよ」 「そうか……じゃあ、優勝は悠達か?」 オレはうな垂れる。 これで賞品は悠達の物……折角やる気になってたのに……。 「何言ってんの? まだ競技は残ってるわよ」 えっ……、とオレは顔を上げる。 「マ、マジで? まだ終わってない?」 「マジよ。あと二つ競技があるらしいわよ」 つまり……まだ優勝の可能性が残ってるって事か。 さっきから気になっていたんだけど……悠はオレの方を全く見ずに、機嫌の悪そうな顔でどこかを見ている。悠の視線を追うと、あの覆面チームが悠と睨みあっていた。 あのチームは悠に何か恨みでもあるのか? それから、周りを良く見てみると障害物レースに出ていた全チームが残っていた。 「で、次の競技って何だ?」 あの覆面の事は敢えて無視して話を進める。 「知らない。これから説明するんでしょ」 『全員揃ったようなので次の競技の説明をしま〜す!』 悠が答えた、ちょうどその時……まるで狙ったようなタイミングで司会のお姉さんがステージに現れた。 全員揃ったので……ってことは、オレ達が起きるのを待ってたのか? 他のチームも観客もそれ程イラ立ってないって事はオレ達が気絶してから、たいした時間はたってないのかもしれない。 『続いての競技は……「愛する者を救えっ! 超水泳対決!」です!』 超!? 超ってなに!? 薄々気づいてはいたけど……この大会のノリは何かおかしい。 『ルールは簡単。浜辺から二百メートルほど先に浮き島を用意しました。チームの一人がこの浮き島に乗り、もう一人が泳いで助けに行く、それだけです!』 いや……ただ泳ぐだけなはずがない! 絶対何かあるはずだ……。 『ただし制限時間以内に浮き島にたどり着けないと恋人ごと爆発します』 「うぉいっ! 嘘だろっ!?」 さすがにツッコミを入れる。 爆発って……。 他の参加者もどことなく不安な顔だ。 『はい、嘘です』 あっさりとお姉さんは言った。 『それは嘘ですけど……海の中にはなんかいろいろ居ます。気をつけてください!』 なんかいろいろっ!? 何? 危険なものはいないよな!? サメとか……。 『まぁ、多分、余程の事がない限り、食べられたりする事はないと思いますけどね』 やっぱサメいる――――――っ!! 『それでは浮き島に乗る人はボートで送りますので集まってくださーい!』 何事も無かったように進行するお姉さん。 他のチームも浮き島に乗る方を選び出す。 どっちが乗るかで喧嘩しているチームもあった。 「ルミナ行けよ。オレが泳ぐから」 「オレの女を危険な目にあわせる訳にはいかねぇー、って心境?」 「違ぇーよ。男のオレが安全な方で一応女のお前に危険な事させたら恥ずかしいだろ」 「なんだー……ま、いいや。じゃ、頑張ってー!」 「おうっ!」 そうしてルミナはボートへ。 ……実はちょっとオレの女って部分以外、ルミナの言ったような事を思っちゃったのは内緒にしておこう。 『それでは残った方はスタート位置に移動してください』 ルミナ達が浮き島に移動する間にオレ達もスタート地点へ移動する。 スタート地点に着く。 ルミナ達も浮き島に到着していた。 小さいな、とは思っていたけど人が実際に乗ると浮き島の小ささが良く解った。 立てばなんとか二人乗れるかどうか、ってぐらいの大きさで、座れば一人が限界だ。 まぁ、浮き島の近くには乗っていったボートがそのまま待機してるし、あそこまで泳ぎきれば帰りはボートに乗って帰るって事だと思う。 お姉さんは全員浮き島まで行った事を確認して銃を構える。 『それでは、スタートですっ!』 言って銃を鳴らす。 選手が一斉に海に向かって走り出す。 オレもルミナから直線の場所から海に入る―― 「ぃいってぇ――――っ!!」 海に入った瞬間、足の裏に激痛が走る。 足の裏を確認すると何箇所かから血が滲んでいた。 「な、なんだよ……」 海の中に手をいれ探る。 何か尖っているものを発見……慎重に掴んで取り出す。 「ウ……ウニ……」 ウニ……だった。 よく見ると海の中には相当な数のウニがいた。他の参加者も踏んづけてしまったらしく、飛び跳ねて痛がっていた。 ウニを踏まないよう慎重に歩く。 ウニゾーンを抜けると太ももの辺りまで水に浸かっていた。 そろそろ歩き辛くなってきたし、泳ぎに変更する。 顔を水中に入れ、何か居ないか確認する。 ……海の中で目を開けるととんでもなく痛い。しみる。 我慢して何度か目を開けたり閉じたりすると、段々慣れてくる。 見渡せる範囲には何も居ないみたいだった。 「ナオー! 後ろ! 危ない〜!!」 顔を上げるとオレに向かってルミナが叫んでいた。 …………後ろ? 後ろを見る。 ……ヒレがこっちに向かってくる。 もしかして……サメ? 驚いて動きが止まってしまった。 ドンドン近づいてくるヒレ……動かないオレの体。 ヤバイ……と思った時、突然ソレは向きを変え、遠ざかっていった。 「な、なんかしらんが……助かっ――――がはっ!!」 安心したと同時に背中に衝撃。 オレの身体は水面から二メートル程上に飛ばされた。 そして水面に叩きつけられる。 ……痛くて息が出来ない。 必死にもがいて水中から顔を出す。 「はぁ――はっ――ぐ!」 だが、すぐに何かに足を掴まれて水中に引きずり込まれる。 足を掴んでいる何かを蹴り剥がそうとするが、なかなか離れない。 水中でその何かを確認する。 それは――以前ルミナを狙ってやってきた……ペンギンだった。 |