| いよいよ決勝戦が始まる時間がやってきた。 決勝戦に出場するチームがアナウンスによってスタート地点へ集合する。 全チームが揃ったところで武器を決めるくじ引きが開始された。 「今度こそ良い武器こないかな……じゃなきゃ勝てねーよな」 オレはリルチームと悠チームを交互に見ながら呟いた。 まず悠がくじを引く……。 『悠さんチームの武器は……ビール瓶です〜!』 うわ〜凶悪ぅっ――ってアホか! ビール瓶ってなんだよ! 先のほうが割れてるのが恐ろしい……。武器ってか凶器って言った方が正しいよな。 受け取った武器を手にこちらに歩み寄ってくる悠。 「悪いけど手加減なんてしないから」 悠は瓶の先端をオレの顔に近づけて言った。 「それ……手加減しなきゃ死ぬんじゃね?」 「あんたなら大丈夫っ!」 「何の根拠もねぇよ!? ……くそ……オレだって良い武器当ててやるからな」 「ま、せいぜい頑張って。どうせオチは見えてるけどね」 「う、うううるさいなっ――オチとか言うな!」 言いたい事を言って、最後に鼻で笑っていきやがった……。 なんて性格の悪い奴なんだ……絶対悠より良い武器を引き当ててやる。 『リルちゃんのチームの武器は角材で〜すっ!』 そんなやり取りをしているうちにリルがくじを引いていた。 角材ですか……まぁ、このチームはどんな武器を当てようが一番怖いのはさくらの握力だしな。 つか司会のお姉さん……なんでリルだけちゃん付けなんだ? くじを引くリルの頭撫でてたし……何かリルって色んな人に可愛がられるよな。 そんな事をしたから、物凄いオーラを出してさくらが睨んでるよ。…………でも、それを笑顔で受け流して進行してるこのお姉さんもただ者じゃないんじゃないか? 最後にオレ達がくじを引く。 「たまにはナオがやってみたら〜?」 「…………わかった」 箱の中に手を入れる。 箱の中で手を動かしくじを探す。 ん……二枚しか入ってないぞ? チーム数だけ用意して一枚しか残ってないとかならわかるけど、なんで二枚なんだ? 二択……二つに一つ……ど、どっちにしよう……。 こういう時って絶対、片方はショボくてもう片方は凄いのだったりするんだよな。 ……悩んでても仕方ないか。 「こっちだぁ――っ!」 オレはその時掴んでいた方を引き抜いた。 中を見ずにお姉さんに渡す。 『え〜と……大坪くんチームの武器は――消しゴムですっ!!』 …………。 「な、なんだってぇ――――っ!」 け、消しゴム…………? 「け、消しゴム……ですか?」 オレは司会のお姉さんに確認する。 ……聞き間違いであってほしい。 『はい! 消しゴムです』 そう言って消しゴムを渡される。 それは、どこからどう見ても消しゴムに間違いなかった。 こ、これで、どう戦えというのですか? 「も、もう一枚ありましたよね? そっちは何だったんですか?」 オレが尋ねると、お姉さんは箱から紙を取り出した。 『シャー芯……つまりシャープペンシルの芯ですね』 「なんで文房具っ!? 同じ文房具でも、せめて定規とかにしてくれっ!」 『もう決まってしまったことですし……それに御連れ様は気に入ったみたいですよ?』 お姉さんの言葉を聞いてルミナを見る。 「お前を消してやろうかぁーっ!!」 「や、やめて……消しゴムで顔を擦らないで」 リルの顔を消しゴムで消そうとしていました。 ルミナが何をしたいのか……僕にはさっぱり解りません。 でも、リルも困っているのでとりあえず止めようかと思います。 「こら、やめろ」 「あっナオー。いやぁ、これで消してみようかと思って。特別な消しゴムかもしれないし」 ルミナは言いながら消しゴムをオレに見せた。 「消せないから! それにこの消しゴムは正真正銘普通の消しゴムだ」 「でも……リルなら消えるかもしれないよ?」 「消えないよっ!!」 ルミナの言い草に、リルが真っ赤になって怒鳴る。 「ちょっと来い」 「な、なに……愛の告白!?」 「違うわっ!」 オレはルミナの手をとってその場から離れる。 「お前な……怒らせてどうすんだよ? 狙われる事になるぞ。しかもこっちの武器は消しゴムなのに」 「望むところだよっ! リルなんかコレで消してやるぜー!」 だから消せないっての! 『まもなく決勝戦が始まります』 そんなアナウンスが流れ、オレ達もスタート位置に戻った。 ☆ ☆ ☆ 『それでは、よ〜い……パァン!!』 二人三脚障害物競走決勝戦。戦いの合図が鳴り響く。 スタート前にゴールまでの障害物を一通り見渡してみたけど……何かさっきの予選の時と違って障害物まで凶悪なものになっていた。 「きゃっ――――!」 スタートしてすぐにリルの悲鳴が聞こえてきた。 「んふふ、悪いけど貴方達はここで終わってもらうわよ」 「これも勝負……恨まないでね」 リル達と対峙する二人のオカマが居た……。 「オ、オカマのカップル……? オカマ同士のカップルってあるのか?」 なんて、どうでもいいことを考えてしまった。 何か……この人達見てると嫌な人を思い出してしまう……。 何度身の危険を感じた事か。ああいう人種にトラウマ的なものが出来てしまったようだ。出来れば近づきたくない。 「この世は弱肉強食なの! 弱い人間から死ぬのよ!」 「そうよ! だから、まず貴方から!」 二人が一斉にリルに襲い掛かる。 「角材ホォ――ムラ――――ンッ!!」 横合いから、さくらが二人纏めて角材で吹っ飛ばした。二人のオカマは沖の方まで飛ばされていった。おそらく、このレースに復帰する事はないだろう。 か、角材ホームラン……恐ろしい技だぜ……。 てか、さくらが叫ぶとか……珍しいな。 その光景を見て驚いていると――背後でドサッと何かが倒れる音がした。 振り返る―― 「なっ――!」 悠と店長……その足元に倒れている別のチーム。 オレがさくら達を見てる間に倒してしまったようだ。 ……ってことは、残っているのはオレ達、リルチーム、悠チーム。 しかも、オレとルミナは悠チームとリルチームに挟まれる形になっている。 ね、狙い撃ち……? 「ル、ルミナ……や、やややばいよな……」 「逃げらんないねー……やるしかないんじゃない?」 やるしかない……や、やるしかないのか!? 消しゴムでっ!? 「や、やるか……」 「うん……はるちん達はナオに任せるよ!」 「ああ……リルとさくらは頼んだ」 「うん!」 ルミナと背中合わせに立ち、小声で話す。 「じゃあ……いくぞっ!」 「うんっ!」 『消してやるぜぇ――――っ!!』 そして、ルミナと同時に叫びそれぞれの敵に向かって突進する。 「死ねっ!」 何の躊躇いも無くビール瓶の割れたところで突いてくる悠。 それを横にかわし、さらに前進。 「あらあら、凄く速いわね〜」 突然目の前に店長が現れた。 足が止まる。 「うおおぉぉぉぉ!!」 「――あら?」 あらかじめ千切っておいた消しゴムを店長の顔に向けて指で飛ばす。 もらった――!! オレは残った消しゴムを手に持って店長に一撃を与えるために前に出る。 その時―― 「甘いわねっ!!」 「な――っ!!」 店長の頭上から悠が降ってきた。 「ぐっ……」 そのまま脳天に全体重をかけた膝を落とされた。 そのまま背中から仰向けに倒れる。 そうか……そうだよね。 武器で攻撃する必要……無かったんだよね。素手で攻撃すれば良かったんだよね。 「ぎゃぴっ!」 「んきゅぅ……」 ぼんやりとした意識の中、ルミナとリルの声が聞こえてきた。 そして……オレは意識を失った。 |