「最強……カップル……コンテスト?」

 人を掻き分けさらにステージに近づくと、見えなかった文字も読む事が出来た。 
 ベスト『最強』カップルコンテスト……。
 そこには、でかでかとそう書かれていた。その横に『参加者受付中』のボードも出ている。それを見て嫌な予感は益々大きくなった。
 つーか『最強』ってなんだよ……?
 その文字さえなきゃ普通の大会っぽいんだよな。ベストカップルって。
 ただ、その『最強』って言葉が異様に気になる……。
 何だよ……『最強』って……参加カップルで戦うのか?

「ナオ! 何か面白そうだぜー!」

 それを見て明るく言うルミナ。
 予想通りの反応だった……。抵抗……そうだ、抵抗しないとこのまま出場する事になってしまう。オレの直感がそう言っていた。

「カップルコンテストだろ……オレ達に出場権利はないよ」
「えっ――――!」

 オレの言葉にルミナは……驚愕きょうがくの表情を浮かべた。
 え? 何……その顔?

「ナ、ナオ…………酷いよっ! あんなに……愛し合ったのに! 理想のカップルと近所でも評判だったのにっ!」
「いや……カップルじゃねーし。そもそも……そんな事実は一切ないし」

 まるで舞台で演技をするように大仰おおぎょうな動作で泣き真似をするルミナ。
 近所でも評判ってどんだけですか……。
 オレはルミナとは対照的に物凄く冷めた表情と声でツッコんだ。

「ね〜ね〜ナオ〜! 出よーよー!」
「嫌! 絶対に嫌っ! ロクなことにな――」

 泣き落としが通じないと解ったルミナはオレの腕にしがみついて出たい出たいとせがんでくる。
 オレは首をぶんぶんと振り回して抵抗していた。
 その時……『参加者受付中』のボードの隣にある文字が見えた。
 オレはルミナを腕から引き剥がし、

「優勝しよーぜっ! オレ達こそ最強のカップルだ!」

 親指を立て言った。

「え……どうしたの、いきなり?」

 ルミナは首を傾げて聞いてくる。
 オレはそれには答えずに再びその文字を見る。
 ……絶対優勝してやるっ! 

 オレの視線の先には――優勝賞金百万円、その他豪華商品盛り沢山!――と書かれたボードがあった。


 ☆ ☆ ☆

『さぁ! いよいよ始まります、ベスト《最強》カップルコンテスト! いったい優勝するのはどのカップルなのか!? 今回集まった出場者は五十組。それがコイツラだぁぁぁ!!』

 ステージに立ち司会進行をしている水着のお姉さんが叫ぶと同時に舞台にかかっていた幕が取り払われる。そこに五十組の出場者達。
 ステージの周りには出場者の何倍もの観客が居た。
 勿論、オレはステージの上に居る。相方はルミナ。
 出場者にも、まだ競技内容は知らされていない。

「いつまで話してるんだろーね?」
「さあ……」

 司会の人が長たらしく話をしている。
 ルミナはつまらなそうに話しかけてきた。
 一体、勝負の方法ってなんなんだろう……オレはずっとそれを考えていた。
 ずっと『最強』って言葉が引っかかってる。
 正直……ルミナと組めば普通にしてても上位にいける自身はある。
 周りに居る出場者は……まぁ、その辺に居るような普通のカップル達だ。運動系の競技ならオレもルミナも得意だし、頭を使う競技だって苦手な訳じゃない。ルミナも頭良いし。
 ただ一つだけ誤算があった……その誤算の所為で、この大会苦戦をする事になる。その誤算ってのは、カップルといっても別に男女じゃなくても出場出来るという点だ。
 オレ達が大会に出ると言ったら、なら自分達も、とリルとさくらも出場する事に。かなり厄介なチームだ。このチームと戦うことになればルミナとリル、オレとさくらって組み合わせになるだろう事は容易に想像が出来る。……正直、さくらに勝てる気がしない。でも、このチームには競技内容と作戦次第では勝てる可能性はある。
 もう一組……悠と店長のチームが出場した。
 このチームは何か……とてつもなく恐ろしい気がする。特に店長。どう戦えばいいのか見当もつかない。

「はぁ…………」
「ナオどしたの?」
「いや……優勝出来るのかな、って思って。お前店長とかさくらに勝てると思うか?」
「ん〜……なんとかなると思うよ?」

 オレが尋ねるとそれ程悩みもせずに簡単にそう答えるルミナ。
 なんとかなる……って、コイツ何にも考えてないんじゃないのか?
 
『それでは、まず前半の競技の説明です…………』

 司会が競技について説明をする。
 前半って事は後半もあるのか。
 説明を聞くと、クイズに答えてお互いの回答が一致していたら正解のクイズゲームとか、そういった普通のカップルの大会にありがちな競技ばかりだった。
 意外と普通な競技に拍子抜け……と、一瞬思ったが、前半後半で前半しか説明してないのが気になる。
 多分……後半は『違う』気がする。
 そして、前半の競技で半分の組を失格にするらしい。後半は残った半分で。
 前半で獲得したポイントは後半には引き継がない。つまり前半、ギリギリで残りの組には入れたとしても十分優勝が狙える。
 これって……後半の競技は、本当に実力のあるカップルしか生き残れない、とも考えられる。前半とは競技の質が違う、と。
 
 いよいよ、ベスト『最強』カップルコンテストが始まった。
 
 最初は、あのクイズゲーム。
 リル、さくらチーム……なんと全問正解。
 ありえねぇ……。
 リルの事に関する質問の回答を書くとき、さくらは全く悩む様子も無く、リルが書くよりも早く書き終わっていた。
 悠、店長チーム……六割正解。
 悠に関する問題は全問正解。店長に関する問題は二問しか正解しなかった。
 そしてオレ、ルミナチームの順番が回ってきた。

『それでは第一問! ルミナさんの好きな食べ物は?』

 ――これは貰ったっ!
 確実にこれだ。
 オレは回答を書く。

『それでは一斉にフリップを見せてください』

 オレとルミナは同時に答えを書いたフリップを観客に見えるように出す。
 オレの書いた答えは「プリン」、ルミナも同じだった。

『正解です! 次の問題……大坪さんの好きな胸のサイズは?』

 はぁ――っ!? なに、その問題!?
 セクハラじゃね? 
 つか、どういうことですか。ここで趣味をバラせ、ということですか。
 ど、どう書けばいいんだ…………。
 …………。

『それでは大坪さんからどうぞー!』

 なんでオレからなんだ? 不思議に思いながらも答えを出す。
 オレの書いた答え……「いや、別にないっすよ? こだわりなんて……。そんなことで人を判断したりしませんから。敢えて言えばアレですアレ、なんていうか好きになった人のサイズが好きです」だった。

『はい、言い訳がましい回答ですね〜! 実に男らしくない!』 

 司会のお姉さんに笑顔で言われ、観客からブーイング。
 くそぅ……なら、お前等書けるのかよっ!?
 
『それではルミナさんどうぞーっ!』

 そしてルミナがフリップを出す――

「ノオォォォォォォッ!!」

 ルミナの書いた答え……それは……「デッカイの」……だった。
 オレは思わず叫ぶ。

「なに書いてんのっ!? ねぇ、何書いてんの――――っ!?」
『はい、大坪さんの好きな胸のサイズは「デッカイの」でした〜!』
「なんでソッチが正解になってんだよおぉぉぉっ!!」

 夏の海にオレの絶叫が響き渡った。
 
 前半の競技。
 リルとさくらはぶっちぎりの一位。
 悠と店長は真ん中。
 オレとルミナのチームはギリギリで、なんとか後半に出場出来る半分の中に残る事が出来た。


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