差し込む朝日で目を覚ます。
 布団に入ったまま頭だけを動かし、薄目を開けて窓の外を見る。
 雲ひとつ無い晴天だ。
 今度は布団から手を出し、頭の上辺りに置いておいた携帯を探す。

「…………八時、か」

 携帯を手に取り、時間を確かめる。
 確か九時頃に女子達の部屋に朝食が運ばれてくると聞いた。
 そろそろ起きて支度しないと……二度寝したら起きれないと思う。
 実は昨日の疲れがまだ残ってる。体のあちこちが筋肉痛で痛い。
 今日はこのまま部屋でゆっくりしたいけど……ルミナ達、楽しみにしてたから絶対無理だよな。
 そんな事を考えながら布団から起き上がろうとしたとき……

「いてっ――!」

 後頭部に物凄い衝撃。
 布団から飛び起き、頭をさすりながら振り返る。

「んふふぅ……ルぅ〜ミナちゃぁ〜ん……」

 寝言を呟きながらニヤついた笑顔を浮かべているショウ。
 ただ、頭が布団の足の方にあって、足が今までオレの頭のあった位置にあるのが問題だ。
 …………どうしてやろうか。
 この時、オレには既に普通に起こしてやる気なんて全く無かった。
 部屋を見渡して何かないか探してみる。
 何にもないな……よしっ、起こすのやめよう。
 そう決めたオレは顔を洗いに洗面所へ向かった。


 ☆ ☆ ☆

「あっナオおはよ〜!」
「おはよう。入っていいか?」

 着替えたオレは女子達の部屋に来た。戸を叩くとルミナが出てきたので、確認する。

「いいよ〜。あれ……ナオ一人? ショウは?」
「あいつの事は気にするな」
「……? わかった。じゃ入ってー!」

 不思議そうな顔をしていたが、それ以上何も聞いてくることはなかった。
 ルミナに続いて部屋に入る。

「えっナオヤさん!? わわっ……ち、ちょっと待ってください!」
「え? うわっごめん!!」

 オレは急いで部屋を出て戸を閉めた。

「もうルミナ! なんで入れるの!? ボク着替えてたの知ってたでしょ!?」
「ごめんごめん。忘れてたぜー!」
「バカァ――――ッ!」

 中からそんなやり取りが聞こえてくる。
 ……つまり、オレが部屋に入ったら着替えているリルがいたって訳なんだけどさ。
 タイミングが最悪だった……リルは浴衣を脱いで、服を着ようとしている瞬間だった。つまり下着しか着てない状態。
 ルミナのやつ……ちゃんと確認しろよな。こうならない為にオレが確認したのに。

「ナオ〜もういいよ〜!」

 部屋の中からルミナの呼ぶ声が聞こえてくる。
 恐る恐る覗いてみる。
 着替えを終えて、顔を真っ赤にしたリルが居た。

「………………」

 き、気まずい……リルは真っ赤になって俯いているだけだし、笑顔でオレを見るさくらはとてつもなく恐ろしい。
 オレはルミナの隣に座ることにした。リルは向かい側の一番遠い位置だ。
 
「ご飯食べたら海行こうねー!」
「あ、ああ…………」

 話し出せない雰囲気の中、空気の全く読めてないルミナが話しかけてきた。
 そのままルミナと話をしていると、朝食が運ばれてきた。
 ショウは起きてこないままだったけど、ショウの分をダディーが食べてるから丁度良かったのかもしれない。

「さあ、海に行こーっ!」 
 
 早っ!?
 ダディーを見ている間にルミナは綺麗に食べ終わっていた。
 ……オレ、まだひと口も食べてないのに……どんだけ早いんだよ。

「早く〜、海行きたい〜!」

 オレはルミナに急かされて朝食を掻っ込んだ……味なんてわかりゃしねぇ……。
 何とか全部食べきったオレは水着とか荷物を取りに部屋へ戻った。
 この旅館は目の前が海。
 オレはここで着替えてしまうことにした。

「んあ……? ハムナリ?」

 着替えているとショウがやっと目を覚ました。

「おはよう」

 布団の中から寝惚けた目でこっちを見ているショウに言った。

「おはよう……もう朝飯か?」
「いや、もう食べ終わったよ。ちなみにお前の分は残ってない」
「ふ〜ん…………って何ぃ!?」

 布団から飛び起きるショウ。

「な、なんで起こしてくれないんだよっ!?」
「いやぁ、お前があまりにも気持ちよさそうに寝てたもんだからさ……起こしちゃ悪いかと思って。ごめんごめん。あははは」

 オレは爽やかに言ってみる。

「絶対嘘だろ? 心がこもってねぇ〜もん」

 ショウがジト目でオレを見る。
 
「それより、お前も早く着替えないと遅れるぞ? オレはもう行くから」

 着替え終わったオレはそう言って荷物を持ち部屋を出た。
 背後からショウが文句を言っている声が聞こえたが、そんなのは無視だ。


 ☆ ☆ ☆

 泳ぐってのはお腹が減るね。
 海に来て数時間……そろそろお昼の時間だ。
 オレは浜辺に敷いたシートの上で海に入っているみんなを見ていた。
 ショウは朝の事なんか忘れてはしゃいでるし、リルとも普通に会話できるようになった。
 ただ、リルの場合……海に来る前、着替え終わったオレはルミナ達を呼ぶために再び女子の部屋に行った。その時……ルミナとさくらに無理やりスク水を着せられているリルを見てしまった。
 だから話しかけて普通に返事してくれるようになったのは、まだちょっと前のことだ。

「なあ! そろそろ飯にしないか?」

 オレは海のみんなに向かって叫んだ。
 それを聞いたみんなは海から上がってこっちに向かってくる。

「お腹空いたぜー!」
「俺も朝から食ってないから死にそうだぜっ!」

 ルミナとショウが元気良く言う。
 
「で、何食べる?」

 オレはみんなに向かって問いかける。
 
「何にも無いですね……」

 辺りをキョロキョロ見渡してリルが言った。
 ……確かに何にも無い。
 海の家とかも無い……昨日オレ達が直した建物はあるけど、あそこは明日からオレ達が使うトコだしなぁ……。

「あれ……店長じゃないか?」

 その建物に店長が居た。
 
「店長ならこの辺の美味い店とか知ってるんじゃない?」
「なら、聞きにいってみるか」

 悠の言葉にオレ達は店長の居るところへ歩いていった。
 

「あら〜、みんな泳いでたの?」

 近づいていくと店長から声をかけてきた。
 店長の前に作業服のおじさんがいた。
 そのおじさんの持っていた紙に店長が何か書くとおじさんは去っていった。
 
「誰ですか?」

 オレは店長に尋ねた。

「ああ、あの人は業者さん。キッチンの機材を設置してくれたのよ」

 なるほど……確かに昨日掃除したときキッチンは何もなかったからな。

「なら、もう料理作れるって事ですか?」
「ええ。いつでも開店出来るわよ〜」

 悠の言葉に店長は嬉しそうに答えた。
 その時……悠がニヤリと笑ったように見えた。
 
「丁度いいじゃん。ナオヤ何か作ってよ」
「はぁっ!?」
「あら、良いわね〜。私もお腹空いちゃった」
「明日からナオヤが作るんだし、あたし達が味見してあげるわよ」
「材料も仕入れてあるから勝手に使っちゃっていいわよ〜」

 ……そんな訳でオレが作る事になってしまった。
 
「はあ……わかったよ……」

 既に席に座っているルミナ達。
 オレは渋々キッチンへ向かう。

「ボクも手伝いますっ!」
「ん、ああ……ありがとう」

 リルも着いてきてくれた。
 二人で人数分の焼きそばを作る。
 いや……冷蔵庫には大抵の物が作れるぐらいの材料があったんだけどね。正直めんどくさかったから焼きそばにしたんだけどさ。
 冷蔵庫には鴨肉とかもあった。そんなもの明日からも使う予定はありません。
 作った焼きそばと飲み物をテーブルに運ぶ。

「海で食う焼きそばって美味いよなー!」

 ショウは運ばれた焼きそばをガツガツと食べる。
 
「これなら店でも出せるんじゃない?」
「ホント、公也君料理上手ね〜」
「美味いぜー!」
「リルちゃん。キッチンで大坪くんに何もされませんでした?」
「さ、されないよ!」

 それぞれに感想を言いながら食べている。
 オレは二度もあんな事があった所為か、さくらに警戒されているようだ……。

 食べたものを片付けたあと店を出ると、さっきまでは無かったステージが海岸に設置されていた。その周りにかなりの数の人が集まっている。

「あれ何だろうな?」

 オレはそのステージを見て呟いた。

「そういえば……今日は何かイベントがあるらしいわよ」

 そう答えてくれたのは店長。
 イベント……海でやるイベントって何だろう……ミスコンみたいなのか? でもステージの周りに集まっているのは男と女が半々ぐらいだから違うかな。

「行ってみようぜー!」
「いいけど……見るだけだからな」

 ルミナに引っ張られる。
 オレは何か嫌な予感がした。
 
「私達も行きましょうか、リルちゃん」 
「はいっ!」

 さくらとリルも一緒に着いてきた。
 ステージに近づくにつれ、何か文字が見えてきた。
 ……最初の方は人で隠れてて見えないけど後半の文字は読めた。
 『…………カップルコンテスト』と書かれている。
 それを見て、オレの嫌な予感は膨れ上がった。


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