◆ ◆ ◆
 
〔EYES of Rumina〕

「――わわっ!」

 リルの攻撃をかわす。
 リルはいつの間にか二刀流になっていた。

「今度こそ絶対勝つからねっ!」

 いつもみたいに適当にあしらおうと思ってたんだけど……二人三脚の時のこともあるからかな? リルはいつも以上に本気みたい。
 
「えいっ!」

 リルの攻撃を持っているビームサーベルで受ける――と同時にリルはもう片方でいでくる。
 
「みきゃ〜っ!」

 それも、かろうじて、何とかかわす。
 かわしながらリルの後ろに回り込んでこっちも攻撃。

「遅い!」

 決まったと思ったけど……リルは既に振り向いていて、アタシの攻撃を防いだ。
 またもう一方の方で攻撃されると思って後ろに飛ぶ。

「甘いよルミナ。今回は勝つって言ったでしょ」

 リルの片手にはビームサーベルじゃなくて、銃タイプが握られていた。
 着地と同時にアタシに向けて撃ってきた。

「みきゃぁ――っ!!」

 転がるように横に飛ぶ。
 
「ボクの勝ちかな?」

 立ち上がるより前に、アタシのそばに来ていたリルに銃を突きつけられる。   

「う……っ」

 やっぱり、リルは今回本気だね。
 ホントは身体能力とか、リルの方がアタシより遥かに上だから本気になられると困るんだよね〜。
 いつもは、怒ってても本気にはなってないし、正面から分かり易い一直線な攻撃しかしてこないかし、アタシも色んな道具使ったりするから結構簡単に勝ててるけど……本気になられるとアタシの動きじゃ追いつけない。
 だから色々道具とか使うわけだけど……今は、この手に持ったビームサーベルが一本だけしかないし……。
 でも…………。
 ナオの方に視線を向ける。
 必死にさくらと戦っていた……と言っても手を出せなくて困ってるみたいだけど。
 
「降参して、ルミナ」
「…………」

 リルが銃を向けたまま告げる。
 リルとは小さい時からの友達だし、アタシはリルみたいにタフじゃないから……だから、これ以上戦って傷つけたくないんだと思う。
 昔からリルはそういう子だった。人を傷つけるのを極端に嫌う……物はよく破壊するけど。
 …………。
 それでも……降参は出来ない。
 たとえ本気できてたとしても、リルに負けるなんて、何かしゃくだし。
 それに――珍しく真剣に、ナオが勝とうとしてる。 
 最近……最近ていうか、ずっと前からナオって苦労してるみたいだし、なんかよく疲れたって溜息とか吐いてるし……たまには良い想いさせてあげたいよね。
 だから――

「降参…………なんてしないぜー!」
「えっ――きゃっ!?」

 リルの銃を叩き落とす。
 突然の事に、さすがにリルも反応出来なかったみたい。
 その銃を拾って立ち上がる。

「ナオが勝とうとしてるのにアタシが負けるわけにはいかないのっ!」
「ナオヤさんの……為?」

 再び、もう一本のビームサーベルを取り出し聞いてくる。

「たまにはね!」
「そう……二人には悪いけど……ボクだって、さくらの為に勝たなきゃいけないの……だから――」

 言って走り出すリル。
 振り下ろしたリルのビームサーベルを横に避ける……そのまま薙ぎにきたもう一本を、こっちのビームサーベルで受け、銃をリルに向けて撃つ。
 リルが焦った顔をして、それを避けて、アタシと距離をとる。

「さっきより全然早い……なんで?」

 驚愕の表情でアタシを見て何か呟くリル。
 今の攻防……何故かリルの動きが良く見えた。さっきまでは追いつく事も出来なかったのに、いつものように……ううん、いつの以上に戦えた。 
   
「え……ルミナ……その瞳……」
 
 驚愕の表情のまま、さらに目を見開いているリル。
 え……何? 瞳?

「なんで……でも、ボクも負けられないから」

 言いながらビームサーベルを構えた。

「行くよっ!」

 そう叫ぶとまた突進してくるリル。
 そしてアタシの数メートル先で、もっと加速する。

「――後ろっ!」

 振り向きながらビームサーベルを薙ぎ払う。
 
「う、うそっ!?」

 驚きながら、後ろに飛んでかわすリル。 
 ……やっぱり……見えるし、動きにもついていける。

「うん! これなら戦えるぜー!」

 言って、武器をリルの方へ突きつける。
 リルは悔しそうな、焦っているような、戸惑っているような、複雑な表情をしていた。


 ◆ ◆ ◆

〔EYES of Naoya〕

 さくらは、想像以上に強かった。
 一度捕まってしまった……その時、腕をとられて物凄い力で握られたんだけど……痛くて、今はまともに動かせない。
 接近して掴む……という単調な攻撃だけど、今度掴まれたら終わりだ。
 いくらさくらが強いと言っても女の子……やっぱり攻撃するのは気が引けるし……このままじゃ確実に負ける。
 
「逃げてばかりじゃ勝てないですよ〜……それに、もう逃げられませんよ」

 言いながら、ゆっくりと近づいてくる。
 
「――――うぐっ、マジかよ」

 距離を保とうと後ろに下がったとき、さくらの言っていた意味が分かった。
 後ろには……大きな岩。さらにその岩の向こうは崖。
 ――これ以上は下がれない。
 
「――大坪くんはこれも避けますか?」

 それまでゆっくりだった動きを加速させて向かってくるさくら。
 オレは背後に振り向き、岩の上の方に手をかけ、一気に登った。

「うおりゃぁぁぁぁっ!」

 そのまま背面跳び。
 空中で回転して着地……オレとさくらの位置が入れ替わった。
 まさか、こんなに上手くいくとは思わなかった……。
 さくらは、そのままオレの顔のあった位置の岩を掴む。ビシィッ――と、音を立てて岩をえぐり取った。
 ――って、抉り取るっ!?
 な、なな、なんて握力してんですか、さくらさんっ!?

「凄いですね。そんな風に動けるなんて」

 振り向いて、にこやかに言う。
 ……自分でも驚きだけどね、さっきのは。
 それよりも――

「こっちのがビックリだよ! 岩、抉るってどんだけですかっ!?」
「うふふ……女の子には謎が多いんですよ」

 またもや、にこやかに。
 いやいや……謎って。それはもう、ミステリアスとかそんな言葉で片付けていい問題じゃないんじゃないか?
 
「ひとつだけ……聞いていいか?」

 オレはシリアスな顔を作って問いかける。

「……なんですか?」 
 
 顎に指を当てて首を傾げるさくら。
 ……普通に可愛い仕草。一般的に見て美少女と言えるさくらがそんな仕草をすると普通に可愛いはずなのに……今のさくらからは恐ろしいまでのプレッシャーしか感じない。

「て、手加減とか……してくれる気ない?」

 シリアスな顔のまま、オレはそんな情けない言葉を口にした。
 話しをして、さくらの気が紛れている間に、ルミナの方を確認する。
 ルミナは苦戦していた。
 いつもなら、ルミナが一方的にリルを倒すのに……。
 そういえば……二人三脚の時は相打ちだったよな。
 それに、今は……ルミナが押されていた。というか、ここから見ても分かるほど、リルが強い。ルミナは防戦一方だ。

「ないですよ♪」
 
 さくらが答える。
 ――それは、清々しいまでの即答だった。
 次の言葉が出てこない。

「では……いきますよ」

 再びこちらに向かって駆けてくる、さくら。
 さっきよりも――速い!
 
「うっ……くっ!」
 
 攻撃を受け流し、避けながら後退する。
 岩を抉ったあの力――喰らったら、骨が折れるか肉が抉られるか。
 とにかく、喰らわないようにするしかない。

「――――なっ!?」

 必死に避けていると、今までとは比べ物にならないスピードでオレの顔を掴もうと手を繰り出す、さくら。
 ギリギリで避けるが、指先が頬をかすめた。
 その頬に違和感……。
 
「…………」

 触ってみる。
 手を見ると……血がついていた。
 ということは、さっきの、掠めた指で頬が切れたってこと。

「は、ははは……」

 乾いた笑みを浮かべるオレ。
 もう……どんな反応したらいいのか分からない。
 さくらは、そんな状態のオレを見て、追撃してくる。
 
「こ、こんなの――喰らってたまるかっ!」

 今まで以上に必死にかわすオレ。
 ――ドンッ。
 かわしながら後退していくと背中に何かが当たる。
 まさか……また岩?
 そんなことを考えながら視線を背後へ。

「ナ、ナオッ!?」
「ルミナ!?」

 背中に当たったもの……それはルミナ、だった。
 
「そっちも結構ヤバイ状況?」
「う、うん……ナオも?」
「ああ……ヤバイな」

 背中合わせに立ち、ルミナと話す。
 オレとルミナが話してる間、リルもさくらもオレ達を攻撃してくる事は無かった。
 そういえば……勝たなきゃいけないって思ってたけど……確か、あのバッジって。
 なら――

「ルミナ……あのな」
「なになに?」

 小声でルミナに作戦を伝える。

「ええぇ――っ!? アタシに死ねと!?」
「大丈夫だって。絶対。オレを信じろよ」
「信じれないです」
「即答!? ちょっとは信用しろよ……」
「む〜……わかったよ〜」

 何とかルミナも納得してくれたみたいだ。
 あとは実行するだけ。
    
「じゃ、いくぞっ!」
「うんっ!」

 掛け声をかけて、作戦を開始した。


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