| 真奈美さんのおかげで追いかける事も無くなった。 無くなったと言っても表立っては……という事で、まだ廊下を歩いている時に殺気を感じたり、一人でいる時に屋上に拉致られそうになったりと疲れる毎日を送っている。 そんな中やってきた三連休。 昨日は学校が終わって飯を食ってすぐに寝てしまった。 そして今、目を覚まし枕元に置いてある時計を確認すると午前九時。 おおっ、すげえ。寝たのが八時ぐらいだったから十三時間ぐらい寝てたのか。 十三時間、一度も起きることなく熟睡。自分で思っていた以上に疲れていたらしい。 ……微妙にまだ眠いかも。 オレは朝日を遮るように頭まで布団を被り二度寝を楽しもうとした。 だが、その時――。 「ナオーっ! 朝だぜー!」 叫びながらルミナが部屋に入ってきた。 ルミナと一緒に暮らし始めて数日。ルミナの事も少しずつ分かってきた。 まず、休日でも朝にはキチンと起きる。寝て楽しい時間を潰す事になるかもしれないのが嫌だと言っていた。そしていつもオレも起こそうとするのだが…………生憎今日のオレは二度寝モードに入っている。出来ればこのまま寝ていたい。 「起きてよ〜! 朝だってば〜!」 無視しているとルミナはオレの腰の上辺りに乗っかってきた。 初めてコレをやられた時はビックリした……男なら分かるよな? 朝いきなりそんな所に乗っかってこられると困るって事が……。 今では慣れたもんだけど。 「お〜き〜て〜っ!」 言いながらグラグラと身体を揺らす。オレの身体も当然揺れる。 「うぅ〜……起きないとチューしちゃうぜーっ!」 「お、起きた! 起きたからなっ!! するなよ!?」 オレは急いで上体を起こして叫ぶ。 ルミナは羞恥心とかがほとんど無いのか平気でそういう事をしてくる。その行為がどういう意味なのかあんまり理解してないだけかもしれないけど……ただオレが恥ずかしがるのが楽しかったり、すぐに起きる便利な技ぐらいにしか思ってないのかも。 「おはよう!」 上体を起こしたオレの目の前には当然、至近距離にルミナの顔がある。 「お、おはよう……」 「じゃあ先に向こう行ってるぜー!」 挨拶を返すとルミナはベッドから降り部屋を出て行った。 これはもう起きるしかない……。 オレはベッドから降りると身体を伸ばして着替えを始めた。 ☆ ☆ ☆ 「と、いうことで、山に行こうぜーっ!」 食後のコーヒーを飲んでいると突然ルミナが叫んだ。 「何が……という事なんだ? まずはそこから説明してもらおうか」 「はい」 ルミナは素直にオレの前に座ると説明をはじめた。 「昨日ナオが寝た後にですね、コレを見ていたんですよ」 ルミナはそう言ってオレに雑誌を見せる。 ルミナは実は頭が良いらしく、すぐに文字を読めるようになった。 それでコンビニで興味を持っていた雑誌を買ってやったんだけど……それは女の子向けのファッション雑誌で山とは何の関係もないと思うんだけど。 「それで? つーか普通に喋ってくれ」 オレはルミナに先を促す。 「わかった! この中にアタシは衝撃的な記事を見つけたのっ。そして思った。これは山に行くしかないって! だから山に行こうぜー!」 「わかんねえよっ! てか一番大事なトコ端折ってんじゃねーよ!」 なにを「言い切ったぜっ!」みたいな満足そうな顔してんだよっ!? 「ナオは物分り悪いな〜」 「えっオレ? オレが悪いのか?」 「…………」 「な、なんでそんな憐れんだ目で見るんだよっ!」 ルミナは立ち上がりオレに歩み寄ってきた。 そしてオレの肩を叩くと、 「ドンマイッ!」 親指を立ててそう言った。 「うっがあぁぁぁぁ!」 頭を掻き毟る。 意味わかんねえよ! 何でオレが慰められてんだよ。 「……ちゃんと説明してもらおうか」 ルミナを睨みつける。 「ちぇ……わかったぜー」 ちぇってなんだよ……やっぱからかってやがったのか。 「え〜っとね――ツチノコッ!」 「…………はい?」 「だからツチノコ! 地球の幻の生物なんでしょ!? コレは捕まえるしかないぜー!」 「それ……ファッション雑誌だよね?」 ルミナの持っている雑誌を指差す。 「うんっ!」 「なんでそれにツチノコの事が書いてあんだよ!?」 「書いてないよ?」 「はいぃっ!?」 「だから書いてないって」 「じゃあ今までの会話はなんだったんだ!?」 「…………てへっ」 「てへっ。じゃねぇぇぇぇ!!」 な、なんで理由聞くだけでこんなに疲れるんだよ……。 「ってことで山に行こうぜー!」 「はいはい、分かったよ」 もういいや……。 どうせ抵抗しても行く事になるんだろうしな。 「じゃあ早くっ! みんな待ってるぜー」 「ちょっと待て……みんなって何だ?」 ルミナが言うには悠やショウと駅前で待ち合わせらしい。 さくらは用事で来れないらしい……。 「子供達だけで行かせる訳にはいかないわっ!」 突然どこからか真奈美さんが現れた。 「なっ!? いったいドコから?」 「そんな事はどうでもいい事よ! 山なんて危険な事があるかもしれない所にあなた達だけで行かせられない。だから私も行くわっ!!」 そう言う真奈美さんの格好は『なんとか探検隊』みたいな格好だった。 ……いったいいつから聞いてたんだ? 「じゃあ出発するわよっ!」 というかこの人ノリノリです。 絶対オレ達が心配とかじゃなくて自分が行きたいだけだ。 「はあ…………分かりましたよ」 そしてオレ達は朝に弱く、まだ寝ていたダディーをルミナの鞄に突っ込んで駅へと向かって家を出た。 |