| 「ふあぁぁ…………なんだよ?」 朝、ドタバタとうるさいせいで目が覚める。 時計を確認すると目覚ましをセットした時間までまだ三十分もある。 朝の三十分がどれだけ貴重だと思ってんだよ……。 オレはブツブツと文句を言いながら立ち上がった。 「あ、ナオ! おはよ〜♪」 部屋を出てリビングに入ると、そこには既に制服に着替えたルミナが居た。 「お、おはよう……てかなんでこんな早く起きてんだよ?」 そういえばルミナがオレより早く起きてるなんて初めてじゃないか? 「早く学校行きたいぜー!」 ルミナはオレに向かって満面の笑みで言う。 はあ…………遠足の日の小学生みたいなもんか。 「わかったわかった……まずは朝飯な。大人しくしててくれ」 ルミナに言ってキッチンへ向かう。 そしてオレは朝飯を作る。その間ルミナは言う事を聞いて大人しくしていた。 というか料理を作ってリビングに持っていくとルミナはテレビの中のアナウンサーと話していた。 …………お前は昼時の主婦かよ。 ☆ ☆ ☆ 「早く早くっ! ナオ早く〜!」 「はいはい、すぐ行くよ!」 オレが制服に着替えるとルミナはすでに玄関で靴を履いていた。 急いで靴を履き外に出る。 「おはようございます」 玄関を出るとさくらがいつもの笑顔で立っていた。 「おはよう。今日も一緒になったね」 「はい。ルミナちゃんの楽しそうな声が聞こえたので」 「え……ごめん。迷惑かけちゃったかな?」 「いえ、そんな事ありませんよ」 さくらはやはり笑顔でそう言ってくれたが、気をつけたほうがいいな。 「おはようっ! さくらん♪」 「おはようございます」 オレとさくらが話していると間に入ってきたルミナ。 ……つーか、さくらんって何ですか? さくらも何普通に受け入れてるんだよ。 「アタシも今日から学園いくぜー!」 「はい。よろしくお願いしますね」 「うん! よろしくー!」 一通り挨拶も終わったところでオレ達は学園へ向け歩き出す。 歩いている時もルミナはずっとウキウキしていた。 何がそんなに嬉しいんだか……。 「ちこく、ちこくぅ〜〜っ!」 学園が見えてきた辺りで後ろからそんな慌しい声が聞こえてきた。 「って、どんだけベタなんだよっ!!」 振り返って確認するとそれは真奈美さんだった。 しかも、ちこくちこく言いながらパンを咥えていた。……思わずツッコんでしまったじゃないか。 「ナ、ナオくんっ!? 何してるの? 遅刻だよ!?」 「何言ってるんですか。早いぐらいですよ」 オレは携帯を取り出し真奈美さんに見せる。 真奈美さんは携帯の画面をじっと見て動かなくなった。 「うわぁ〜、一時間勘違いしてた〜っ!!」 頭を抱えて叫ぶ真奈美さん。 ……なんておっちょこちょいなんだ、この人は。 「あれ? なんでルミナちゃんが居るの?」 叫んでいたかと思うといきなり普通になってルミナの事を聞いてきた。 切り替え早っ! 「アタシも今日から学園いくんだぜー!」 「……聞いてないわよ?」 学園長が知らないって……やっぱり手続きとかしてないのか? 「でも昨日変な髭のおっさんが俺に任せとけって」 なんだよ……そのおっさん。 というか、昨日勝手に出歩きやがったな? 「…………まさか!?」 真奈美さんはオレ達から少し離れた場所に移動すると携帯を取り出しどこかへと電話をかけた。 なんか電話の相手に怒鳴ったりしてるけど、誰にかけてるんだ? 用件が済んだのか携帯を鞄に入れ、こちらに戻ってきた。 「…………パパの仕業だったわ」 パパって……元学園長かっ! 「それって……」 「うん……ルミナちゃんは完全にウチの生徒」 何で……そんなに嫌そうな顔で言うんですか? まあ、とにかくこれで心配事がひとつ減ったな。 「ルミナちゃんは私と来てもらうわよ」 学園に着くと真奈美さんはそう言ってルミナを連れて行ってしまった。 「私達は教室に行きましょうか」 「そうだな。ここに居ても仕方ないし」 さくらに同意してオレ達は教室に向かった。 ☆ ☆ ☆ 「ハムナリハムナリっ!!」 教室に入った途端ショウが物凄い勢いで話しかけてきた。 とりあえず無視して自分の席まで辿り着き椅子に座る。 「でな、ハムナリ! 今日、なんと転校生が来るらしいぜっ!!」 ショウはオレの前の席に座り続けて話しかけてくる。 ……そういえばショウってオレの前だったっけ。 というか、もう情報が伝わってんのかよ。昨日、急に決まった事なのに。 「やっぱ転校生といえば美少女だよなっ!」 どんな偏見だよ……。 男の転校生だっているだろ。オレみたいに。 その時、チャイムと同時に香奈ちゃんが教室に入ってきた。 「は〜い、静かに! 今日は皆に伝える事があります」 「先生っ! それって転校生の事ですか!?」 すかさず質問するショウ。 もしかして……同じクラスなのか? 「そうです! 喜びなさい男子、可愛い女の子よっ!」 香奈ちゃんの言葉に教室中の男子が咆哮をあげる。 「どうしようハムナリ!? 俺も今日から彼女持ちだぜ!?」 どういう思考回路してんだよ、コイツは。 「はいはい」 オレはおざなりな返事を返す。 つーか、いちいちツッコむのも面倒くさいし。 「じゃあ入ってきて〜!」 香奈ちゃんが扉の外にいる人物に声をかける。 扉を開けて中に入ってきたのはやっぱりルミナだった。 腰まである長い金の髪をなびかせて教壇のところまで歩いていく。 今まで咆哮をあげていた男子も黙って見とれていた。 「ルミナ・アーヴィングですっ! よろしくだぜー!」 ルミナが挨拶すると静まり返っていた男子も再び雄たけびをあげる。 というか、これはもう奇声だ。 「か…………かわいい」 意外な事に真っ先に叫びだしそうなショウは大人しくしていた。 「ハ、ハムナリっ!!」 振り返りオレの方を揺さぶるショウ。 「な、なんだよ?」 「あんな可愛い子を彼女にしたら、俺……学校中の男子に恨まれるんじゃね?」 「……未だに本気でそんな事を言うお前を尊敬するよ」 てか、そんな事を悩んでたから大人しかったのかよ。 「じゃあルミナちゃんの席は……」 言いながら教室を見渡す香奈ちゃん。 現在空いている席は教壇の前にひとつあった。 香奈ちゃんがそこを指差した時、 「アタシ、ナオの隣がいいぜー!!」 ルミナはオレを見ながら香奈ちゃんに言った。 「ナオ……? ああ、大坪君!」 名簿を確認して香奈ちゃんが発した言葉で教室にいる男子達の殺気に満ちた目がオレに向けられた。 「テメー、どういう事だよ!?」 やはりショウも同じだった。 ルミナはそんな事気にする風でもなくオレの方へ歩いてくる。 そしてオレの隣の席を確認する。 オレの左隣は悠、右隣は眼鏡をかけたいかにもガリ勉君という容姿の 「どいて♪」 ルミナは爽やかに剛田君に言い放った。 「あ、僕ですか? 分かりました」 剛田君はあっさりとルミナに席を譲ると教壇の前の席へ移動した。 「じゃあ今日も一日頑張りましょう!」 香奈ちゃんは最後にそう言って教室を出て行った。 すぐにルミナは女子達に質問攻めにあっていた。 「ルミナちゃんはどうして大坪君の隣がよかったの?」 質問攻めにあうルミナを横目で見ていた。 それは「ドコから来たの?」とか「それって地毛?」とかの質問とは違い何故かいやにはっきりと聞こえた。 何故か嫌な予感がする……。 「だってアタシ、ナオと一緒に住んでるし――」 続けて何か言っているようだったがオレにはその後の言葉は聞こえなかった。 女子の歓声とさらに殺気を増した男子共がじりじりと寄って来たからだ。 「一緒に……住んでる……だと?」 男子共の先頭に立つショウが血走った目を向けてくる。 「諸君! そんな事が許されていいのだろうか!?」 「いいわけが無いっ!」 ショウの言葉に後ろに居る男子達がそれぞれオレを許すなと騒ぎ立てる。 「この男はどうなるべきだ!?」 「死を!」 今度は男子全員の声が重なる。 「この男に死を! かかれぇえぇぇぇ!!」 ショウが叫ぶと男子共は一斉にオレに襲い掛かってきた。 「な、なんでだぁぁぁ〜〜っ!!」 オレは逃げるために教室を飛び出した。 |