ルミナがカレーが食べてみたいと言い出した。
 留守番中に見たテレビでやっていたらしい。
 真奈美さんはまだ起きそうも無かったのでオレは材料を買うために家を出た。
 あの二人を家に残してってのが不安だがダディーも居るし、まあ大丈夫だろ。

「後はルーだけだな」

 買い物カゴの中を確認する。
 真奈美さんも食べていく可能性を考えて多め買う事にした。
 手早く支払いを済ませ、急いで家に帰る。
 ダディーが居るとはいえ、やはり心配だ。

 
 ☆ ☆ ☆

「へ〜! 二人は宇宙人なんだぁ!?」
「うむ」
「そうだぜー!」

 玄関を開けると何か明るい声が聞こえてきた。
 
「……ただいま」
 
 リビングに行ってみると、ルミナとダディーそれに起きていた真奈美さんの三人が和気藹々と談笑していた。
 …………どゆこと?

「あ、ナオ。おかえりだぜ〜!」
「ナオくんおかえり〜♪」

 二人とも機嫌良いみたいだし。
 オレが買い物に行ってる間に何があったんだろう?

「なんか……仲良くなってない?」

 疑問をそのまま二人にぶつけてみた。
 
「ナオくんがちゃんと話してくれないから私勘違いしちゃったじゃない」
「はい?」
「ナオくんルミナちゃんの星と地球の親善大使なんだって? で、交流を深める為にまずルミナちゃんが来たらしいじゃない。いきなり地球に送られて行く当ても無く困ってたルミナちゃんをナオくんが仕方なく面倒みてあげてたんでしょ? それなら話は別だよ〜、ナオくんが立派になってくれて私は嬉しいゾ♪」

 親善大使……?
 そんなもんになった覚えはない。
 ルミナの奴よくそんな嘘ついたな、ただの家出少女なくせに。
 てか「仕方なく」って言葉にやたら力入ってた気がするんだけど……。

「ま、まあ、そんなとこ……」

 でもここはその嘘に乗っておいた方がいいだろうな。
 真奈美さんは立ち上がってオレの方にとことこと近づいてきた。

「ホントに立派になっちゃって〜」

 嬉しそうに真奈美さんはオレの頭を撫でた。
 真奈美さんの手は、背が小さいせいで背伸びしても届かなかったからオレが少ししゃがんだんだけど……。

「あ、そだ……真奈美さんも昼食べてく? カレーだけど」

 しゃがんだ時に買い物袋を持ったままだった事に気付き、真奈美さんに確認する。

「いいの?」
「うん、材料多めに買ってきたし」
「じゃあ食べる〜♪」

 一応遠慮したみたいだったけど材料があるのが分かった瞬間、即答だった。
 
「早くカレー食べたいぜー!!」

 早くもスプーンを持っていたルミナがテーブルを叩きながら大きな声を出していた。
 なんて気が早い奴なんだろう……まだ作り始めてもいないのに。

「わかったわかった。すぐ作るからおとなしく待ってな」

 オレは特にルミナに言ってから台所へと向かった。
 …………。
 わかってたよ、わかってたけど本当に誰も手伝いに来てくれないよ。
 ルミナと真奈美さんが仲良く話してる声が聞こえる。
 
「はぁ……さっさと作ろ」

 オレは呟いてから料理を開始した。


 ☆ ☆ ☆

「おぉ〜うまそう〜っ!!」
「ナオくん料理上手いんだね〜!」

 二人とも嬉しそうに皿に盛られたカレーを見る。
 本当はもっと煮込みたいんだけど時間もなかったしな。
 というか、カレーなんて小学生でも作れる物を見て上手いと言う真奈美さんはきっと料理出来ない人に違いない。いや、きっとそうだ。だから手伝いにもこなかったんだ。
 オレは自分の中でそういう事に決定した。
 このアパートに住むという事はこれからも食べに来るかもしれない……。

「まあ、感想は食べてからにしてくれよ」
「わかったぜー! いただきま〜す!!」
「いただきまぁ〜す♪」

 二人ともすごい勢いで食べ始める。
 ダディーも気に入ったらしく、ひたすら食べている。
 普通の鳥みたいな食べ方なのにいつも綺麗に食べるから不思議だ。

「はぁ〜……うまかったよぉナオく〜ん」
「ありがとう真奈美さん」
「毎日カレーでもいいぜーっ」

 それはどうかと思うぞ。
 身体からカレーの匂いがしそうだ。

「ところでルミナちゃん」
「なに〜?」

 食べ終わり満腹感で皆でグダ〜っと昼のワイドショーを見ていたら真奈美さんがルミナに話しかけた。

「ルミナちゃん別にナオくんチじゃなくてもいいんでしょ? だったらウチに住ませてあげるからそうしなさい」
「なんで〜?」
「やっぱりナオくんとルミナちゃんが一緒に住むのは駄目だと思うの。あ、これはルミナちゃんが心配って事よ。別にナオくんと暮らすのがうらやましいとか、気に入らないって事じゃないの」
「ヤダ。アタシ、ナオの事好きだもん。ここに住む」

 ルミナが言った瞬間この部屋の空気が変わった。
 今までまったりな雰囲気だったのにっ! この張り詰めた空気は何だ!?

「ナンダト……コムスメ」

 うわぁっ!!
 真奈美さんの声が変わった。
 
「ま、真奈美さん! 落ち着いてっ!! うわっ!」

 真奈美さんを後ろから羽交い絞めにする。
 だが、真奈美さんはオレを引きずりながら前へと進む。
 な、なんて力だ……。
 
「くっ! ダディー、ルミナを自分の部屋に連れて行ってくれ!!」
「引き受けたっ! 来いルミナ」
「え〜! 今いいとこなのに!」
「いいから来るんだ!」

 テレビに噛り付いているルミナの服を嘴で咥えると強引に引きずって行くダディー。
 …………ダディーも恐ろしいかもしれない。
 怒らせないようにしよう。

「ニ〜ガ〜ス〜モ〜ノ〜カ〜!」

 ――ってそんな事考えてる場合じゃないよ!

「お、落ち着いて! とにかく座って!」

 真奈美さんを力任せに座らせようとするが、ビクともしない。
 あ、あの手を使ってみるか――。

「ま、真奈美さ〜ん。落ち着いて〜」

 言いながら真奈美さんの頭を撫でる。
 これで、もしかしたら泣かれた時みたいに落ち着いてくれるかもしれない。……今度こそ怒るかもしれないけど。

「ふにゃぁ〜……」

 お、目を細めて気持ち良さそうにしてる!
 効果ありか!?

「お、落ち着いてくれました?」
「…………うん」

 
 ☆ ☆ ☆

 あれから四時間、やっとの事で真奈美さんを説得できた。
 説得したといっても最後は、怒り泣き疲れた真奈美さんが「わかったからもう寝たい」と帰ってしまったのだけど…………説得できたのか?
 
「……つ、疲れた」

 ソファーに倒れ込み目を閉じる。
 すぐにでも寝れてしまいそうだ……。まだこれから晩飯の支度をしなきゃいけないってのは気が滅入る。

「ナオ〜見て見て〜っ!!」

 やっと落ち着いたのに今度はルミナがドタドタと足音を立てこちらへ向かってきた。
 
「…………なんだよ」
「だから見てってばっ!」

 オレはソファーに埋めていた顔を上げルミナを見上げた。
 …………。

「…………な、なんでルミナがソレを!?」
「えへへ〜、アタシも明日から学校行くんだぜー!」
「な――っ!?」

 ルミナが着ていたのは学園の制服。
 ルミナが学園に?
 
「楽しみだぜ〜♪」

 ……絶対オレが苦労する事になるんだろうな。
 つーか入学の手続きしたのかとか、その制服はどうやって手に入れたのかとか気になる事が沢山有るんだけど……。
 でも、きっと通える事になっちゃうんだろうな。
 とりあえず今日の晩飯なんにしよう……、制服を着てくるくると回っているルミナを見て、現実を認めたくないオレはそんな事を思った。

 


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