「ナオくんどいてっ! ソイツ殺せない!!」
「ナオ邪魔!」

 オレは今、殺気だったルミナと真奈美さん(ここに来る途中、学園長と呼んだら泣かれた為、こう呼ぶ事になった)の間に挟まれていた。
 ルミナの手には映画でよく見るビームサーベル、真奈美さんの手にはどこから出したのかトンファーが握られている。
 ヤバイ…………確実に殺し合いが始まってしまう。 
 何でこんな事になっているのか……。


 ☆ ☆ ☆

 時間は少し遡る。

 さて、どうしようか……。
 家はもうすぐそこだ。
 このまま行けば確実に真奈美さんとルミナは出会ってしまう。
 …………なんでオレがこんな風に二股男の心境を味わわなきゃならないんだ?
 てかどっちともそんな関係じゃないし。

「ここです」

 アパートに着いた。
 どうにかこのまま別れたい。

「真奈美さんはどこの部屋なんですか?」
「ん〜? 103だよ〜」
「オレの部屋の真下ですね。じゃあここで……」

 そう告げてオレは階段に向かおうとした。

「ナオくんの部屋はどんなかな〜♪」

 後ろにしっかりと真奈美さんは着いて来ていた。
 …………最悪だ。
 
「なんで着いてきてんですか?」
「え〜、ナオくんがちゃんと一人で生活出来てるか確認しなきゃだし〜」
「出来てます。それじゃっ!」

 真奈美さんに向けて手を上げるとオレはダッシュで階段を駆け上る。その間にポケットに入れてある鍵を出すのも忘れない。
 最短の動きで部屋の前まで辿り着くと同時に鍵穴に鍵を差し込む。
 部屋に入り、扉を閉め鍵をかける。
 そのまま扉にもたれ掛かり一息つく。

「ふ〜ん……ここがナオくんの部屋かぁ〜」
「でぇっっっ!!」

 ……横に真奈美さんが居た。
 オレは息があがるほど全力で走ってきたんだぞ……なんで真奈美さんは息も切らさずオレの横に笑顔で居るんだ!?

「ナオ、おかえり〜!!」

 物音で気付いたのかルミナがパタパタと玄関にやってきた。
 
 ………………。

 無言で見詰め合う二人。
 
「コノオンナハダレダ?」

 ギギギギッと首を動かしてオレを見る真奈美さん。
 …………超怖いんですけど。
 オレがオロオロと何も言えないでいると真奈美さんはルミナに向かって歩き出した。

「オマエハナンダ? ナオクンニツクワルイムシカ?」

 お、鬼だ……鬼が居る。
 
「アタシはルミナ! ここに住んでるんだぜー!」

 まともに答えるルミナ。
 あの真奈美さんを前にして全然怯んでない。

「す、住んで……そう、そうなのね……」

 真奈美さんはそう呟くと俯いてプルプルと震えだした。
 ヤ、ヤバイかも……。

「お、落ち着いて真奈美さんっ! ルミナとは真奈美さんが思ってるような関係じゃないんだよっ!!」

 ルミナと真奈美さんの間に立ち、真奈美さんに声をかける。
 今、止められるのはオレしかいないんだっ!

「ナオくん……ナオくんは可哀そうにその女に騙されてるんだね……」
 
 はいっ!?
 何を言ってるんですかアナタは!
 
「もう大丈夫……ワタシガコノオンナヲケシテアゲルカラ」

 そして真奈美さんはどこからかトンファーを取り出した。
 ト、トンファーって……そんなの生ではじめて見るよっ!!
 と、とめなきゃっ! オレしかいないんだ!
 オレは自分に言い聞かし、必死に動かない身体を動かそうとした。

「やるの? 望むところだぜーっ!!」

 ルミナもルミナでいきなりビームサーベルを取り出し、構えた。
 う、宇宙っぽい……はじめて宇宙人っぽいじゃねぇか。
 こんな事でルミナが宇宙人であることを確かめたくないよっ!?
 つーか望むなよ!

「や、やめてくれーーー!!」


 ☆ ☆ ☆

 で、今に至る訳だが……。
 どうすりゃいい? 
 このままじゃ確実に二人はあんな物騒な物でやり合う事になる。 
 絶対に無事じゃすまないよな……二人はもちろんこの家も!!
 
「ふ、二人とも落ち着いてっ! 頼むから!」

 オレが叫ぶが、二人はゆっくりと歩み寄る。
 ……これって間に居るオレは巻き込まれるんじゃね?
 
「なんだ……騒がしい」

 もう無理だ――と目を閉じた時、ダディーの声が聞こえた。

「ダ、ダディーっ! 二人を止めてくれぇぇぇぇ!!」

 オレは目一杯叫んだ。

「うむ!」

 藁にもすがる思いだった訳だがダディーは頷くと物凄い速さで真奈美さんの方へ飛んでいった。
 
「――――えっ!?」

 いきなり目の前に現れた黒い物体に驚く真奈美さん。
 そして…………、

「な、なにが起きたんだ?」

 一瞬だった。
 ダディーが真奈美さんの目の前まで移動したかと思うと、彼女は床の上に倒れてしまっていた。
 なにが起きたのか全く分からない。

「悪いな。話しても無駄なようなので眠ってもらった」

 ダディーはそう言ってルミナの肩に乗っかった。

「ルミナ、お前もだ」
「イタイイタイッ!!」

 ダディーはルミナのおでこを嘴で突つく。
 
「我等は居候の身なのだぞ? そんな物で戦えばこの家もただでは済まないんだぞ」
「う〜……ごめんダディー」
「謝る相手が違うのではないか?」

 ダディーと話していたルミナはおでこを摩りながらオレの前までやってきた。

「ナオ、ごめんね……」
「いやまぁ、今回は被害が無かったからいいけど……」

 そんな返事をしながらオレは思った。
 もしかしてダディーって凄いやつかも、と。
 なんか先生って感じだな。

「それより彼女を運んだ方が良いのではないか? ずっと床の上に寝かせる訳にもいかんだろう」

 そ、そうだった……。
 ダディーに言われてオレは慌てて真奈美さんに駆け寄った。
 本当に寝てるだけみたいだ……傷も無さそうだし。
 オレは真奈美さんを抱えるとリビングのソファーまで運んだ。
 真奈美さんが軽くて助かったよ。

「起きたら起きたで、説明するの大変だろうな……」

 オレは真奈美さんの子供のような、というか、まんま子供の寝顔を見ながら呟いた。


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