ルミナと大坪公也、リルと咲嶋さくら。
 それぞれが宇宙の実家で親と話し合いをしている時……地球では。 

「はぁ〜〜〜あ…………どうしようかな〜」

 メイド喫茶。
 そのテーブルに突っ伏して盛大な溜息を零すのは緋山翔という少年。
 
「はぁ〜……マジでどうすっかな〜」

 一度顔を上げチラリと店員さんの一人に目を向ける。
 目を向けられた店員さんは接客を続けるも、その笑顔はどこか引きつっていた。
 それもそのはず。
 もう昼ちょっと前から四時間近くこの状態なのだ。
 ハッキリ言って営業妨害以外の何者でもない。

「はぁ〜」
「いい加減ウザイのよっ!」

 さすがに頭にきた様子でツッコむメイド店員さん、もとい翔のクラスメイトである須藤悠。 

「……聞いてくれよ須藤。俺の悩みを」
「仕事中なんだけど」
「そんなことより大変なんだよ! 俺とお前の仲じゃないか!」
「あんたと仕事なら仕事の方が大事よ」
「そんなこと言わないでくれよ〜……マジで困ってるんだよ〜」

 情けなく目に涙を溜めながら悠にすがり付く翔。
 あまりに情けないその姿に若干引きつつも哀れみを感じてしまう悠。

「話なさいよ」
「え?」
「え、じゃないわよ。困ってるんでしょ。四時間もの間、溜息を吐きつつあたしの事見やがって……いい加減ウンザリなのよ。だからさっさと話しなさいって言ってんの」
「な、何か凄く不本意なのが解るけど……話して良いんだな?」

 無言で頷く悠。
 彼女は見た目つり上がった目の所為でキツク見えるし、言動も見た目通りな事が多いのだが、実は結構面倒見が良かったりする。
 困っている人を放って置けない性質たちなのだった。所謂いわゆる姉御肌というやつだ。
 それが元で後輩の女子に結構な人気があったりする。 
 
「実は昨日の夜、ウチの両親がさ……突然二人で旅行に行ってくるとか言い出して、本当にそのまま仲良く腕組んでスキップしながら出て言っちまったんだよ」
「…………随分陽気なご両親ね。さすがあんたの親なだけの事はあるわ」
「それで俺と妹で留守番なんだけど……」
「へぇ〜、あんたに妹なんて居たのね」 
「昨日の夜は出て行く前に作ってくれてたから良かったんだけど、今日飯とか家事をしてくれるはずのその妹の奴が急に熱出しやがって――いってぇな! 何すんだよ!?」

 悠は話の途中で翔の頭を思いっきり殴った。
 頭を押さえ文句をれる翔を物凄い顔で睨みつける悠。
 
「あんたね! 病気の妹を一人ぼっちにさせてこんな所で何やってんのよっ!? 病気の時なんて心細かったりするんだから家に居て面倒見てあげなさいよね! お兄さんなんでしょっ!?」
「ご、ごめんなさい……」
「あたしに謝ってどうすんのっ! あんた…………もしかして」
「な、何でしょうか?」
「あんた、妹に朝から何も食べさせてないんじゃないの?」
「実は……そうなんです」
「こんのクサレ兄貴がぁ――――っ!!」
「げふぅっ!」

 翔の言葉に腹を立て、またもや思いっきり殴る悠……今度は顔面を拳で。
 さすがに椅子を倒して後ろに吹っ飛ぶ翔。 
 だが、悠の言葉が正論の為、反論は出来なかった。

「でも、俺……料理とか出来ないし……ハムナリに頼もうと思って電話しても出掛けてるのか無視されてるのか出やしねぇし」
「無視されてるんじゃない?」
「即答っ!? そこで須藤様に頼みがあるんですが……俺んチに来て飯作って貰えませんでしょうか!?」 
「……やっぱりね。はぁ……仕方ないわね、行ってあげる」
「マジですかっ!?」
「別にあんたの為じゃないわよ。妹さんの為だから」
「ありがとうっ!」

 立ち上がり悠の手を両手で確りと握り締める翔。
 他の客席や店員さんの視線が集まり、恥ずかしさに悠の顔が赤くなる。

「解ったから――離してってばっ!」
「ぐはっ……やっぱりお前は最強のツンデレだ……ぜ」
「ふ〜ん……死にたいんだ?」
「も、申し訳ありません……」
「もうちょっとでバイト終わるから大人しく待ってなさい」 
「はい……わかりました」

 さすがの翔もこれ以上怒らせるのはマズイと思ったらしく、それからは大人しく待っていたのだった。
 そして待つこと数十分……仕事を終えた悠が私服に着替え、翔の所へやってきた。
 
「さあ、行くわよっ! さっさと料金払ってきなさい」
「は、はい、早急に支払ってまいります!」

 伝票を持ってレジに走る翔。
 支払いを済ませ二人で店を出る。

「あんたの家、何かあるの?」
「何か……って?」
「あんたねえ……ご飯作るんだから材料に決まってるでしょ!?」
「そ、そうですよね〜。確か炭酸と牛乳とお茶があったと思います」
「つまり何も無い訳ね……。なら買い物して行きましょ、勿論あんたが払うのよ。荷物も持ちなさいよ」
「ですよね〜…………ふざけんなよ、このクソアマが」
「なんか言った?」

 笑顔で問いかける悠。
 確実に聞こえていた顔である。

「な、なんでもありません! 勿論払わせて頂きます、須藤様」
「ま、いいわ。じゃ、食材売り場に行きましょうか」
「は、はい……」

 翔は逆らえない。
 頼んでいる立場な訳だから当然だが、悠しか居なかったとはいえ彼女に頼んでしまった事を後悔していた。  
 翔は財布の中身を確認して項垂うなだれる。

「さっさと来なさいよ」
「…………はい」

 そんな翔を全く気遣う事無く悠は先を急ぐ。
 それでも、やはり逆らう事の出来ない翔は彼女に従って後について行くのだった。


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