| 目を開けるとそこは見慣れた部屋だった。 だけど妙に懐かしく感じる。 「……帰って……きたぞ」 感動のあまり声も震え気味だ。 生きてるって素晴らしいね。こんなに感動できる事だったんだな。 もう少しワープするのが遅れていたらオレはここに居なかったかもしれないんだ。そう考えるとホント恐ろしい体験をしたんだ、と思える。 オレの隣には元に戻ったルミナが居る。 最初は、入れ替わったルミナとリルを戻すために宇宙に薬を買いに行く、ぐらいにしか考えてなかったからこんなに苦労するなんて思ってもみなかった。 リルとさくらは無事に戻ってきたんだろうか? すぐにでも確認に行きたいところだけど……もう少し、生きてる幸せを噛み締めてからでも良いよな? 「ただいま! それからナオ、おかえり! もうアタシ置いて行くなんて駄目だぜー?」 ソファーに腰を下ろしたルミナがオレを見る。 何か……置いていった事、もっとグチグチ文句言われるかと思ってたけど……。 「た、ただいま……。てか出来れば二度と宇宙になんて行きたくないです」 「アタシだってさくらんと二人っきりで大変だったんだぜー? 何かすごい怖かったし」 「二人って……私を忘れてないか?」 「ごめんダディー、忘れてたー!」 そんなに明るく認めるなよ……ダディー落ち込んじゃったじゃないか。 それにしても……やっぱりルミナも怖かったんだな。あのさくら。 「アタシ、さくらん達帰ってきたか見てくるねー!」 ルミナはそう言って部屋を飛び出していってしまった。 オレも確かめたいんだけど……。 「まだ戻ってきてなかったぜー!」 オレも見に行こうかと玄関へ向かい靴を履き替えた時、ルミナが帰ってきた。 「え……まだ帰ってきてないのか?」 「みたいだよ。呼んでも返事ないし」 そうなのか……まさか何かあったのか? 「さくらんなら心配要らないと思うよ?」 「確かに……ね。いや、でも心配は心配だろ」 「まぁ、今日中に戻ってこなかったらリルの家に行ってみたら良いんじゃない?」 それもそうか。 ……出来れば行かなくてすむ事になって欲しいけど。 「だ〜いじょうぶだってっ! さくらんは最強だから」 それは否定出来ないな……『あの』状態のさくらに勝てる奴が居るとは思えん。 「じゃあ元に戻った事と無事に生きて帰ってくる事が出来た記念にご馳走でも作って待ってるか」 「おぉ〜っ! ご馳走作るぜー!」 「お前は料理作れないだろ……出てきたついでだしこのまま買い物に行くか」 「アタシも行くぜー!」 財布を持っている事を確認してルミナと二人で買い物へ出発した。 ☆ ☆ ☆ 「折角ここまで来たんだしはるちんに会いに行こうよ」 デパートに着くとルミナが悠のバイト先である喫茶店を指差した。 え〜……絶対嫌がられるしなぁ。 それにあそこの店長とルミナを会わせるのって危険だもんな……ルミナに余計な事吹き込むし。 「ねぇ〜行こうぜ〜」 「あ〜、分かったから! 手を離せ」 オレの手を握りブンブン振り回しながら子供のように駄々をこねるルミナ。 行かないとうるさそうだし、仕方ないか……。 ルミナに半ば強引に引きずられるようにして喫茶店まで辿りつく。 「あら〜ルミナちゃん。遊びに来てくれたの〜?」 店に入った瞬間オレ達に気づいた店長が話しかけてきた。 「はるちんに会いに来たぜー!」 「あら残念。悠ちゃんならさっき帰っちゃったトコなの」 「そっかぁ〜」 「あの男の子と一緒に出て行ったわね」 ルミナと店長が話している間に店を見渡す。 今日の店員さん達はいつものメイド服だった。 あれ……今、気になる言葉が……。 「……あの男の子?」 店長に視線を移し問いかける。 「ええ。よく店に来てくれる子で、悠ちゃんとも知り合いの……貴方とも何度か一緒に居た子よ」 それってもしかして…………ショウ? 悠とショウが二人でどこかへ? 「まさか……そんな……」 「そんなに難しい顔してどうしたの? ほら、あの変態な男の子よ」 確実にショウだ――――っ! 悠とショウが二人でどこかへ……そんな仲だったのか? 今度ショウに会ったら聞いてみようかな。 「じゃあいいやー」 ルミナも意外とあっさり諦めて店を出て行こうとする。 悠が居なくても店長と遊んでくとか言うと思ってたんだけど……ルミナも疲れてるって事かな? 「またいつでも遊びにきてね〜」 「うん!」 「じゃあ失礼します」 別れの挨拶を交わし、店を出る。 「何か食べたいものあるか?」 食品売り場で何を作ろうか考えながらルミナに聞く。 「肉〜っ!」 肉って……男みたいな奴だな。 まぁ、いいけど。 肉か……疲れてるし、あまり凝った料理を作る気力もないから焼肉でいいかな。野菜もほとんど切るだけでいいし。 「焼肉でいいか?」 「焼肉――――っ!」 ルミナも喜んでるし、焼肉に決定だな。 「ナオ〜、これ買ってー!」 そう言ってルミナが差し出してきたものはプリン。 「煮込むなよ?」 「当然だぜー! そんな非常識な事するわけないって」 しただろーが……。 今回コイツには助けられたしプリンぐらい買ってやるか。 「じゃあカゴに入れな」 「うんっ!」 「一個だよ! なんだ!? その両手で抱え込むほどの大量のプリンは!」 「えぇ〜……いっぱい食べたいのに〜」 「せめて二、三個にしてくれ……」 コイツそんなにプリン好きだったっけ? ああ、そういえば……いつもはオレ一人で買い物するから買わないけどルミナが着いてくる時は毎回買ってたっけ。 「普通のプリンと焼きプリンとカスタードプリンと種類別に二、三個ずつ?」 「全部あわせてだよっ!」 プリンって結構色んな種類があるんだぞ……その全部を二、三個ずつなんて無理に決まってるじゃないか。 「じゃ、コレでいいぜー!」 ルミナは暫くプリンの並ぶ棚の前で悩んでいたが、その中からキッチリ三つ選んでカゴに入れる。 「んじゃ、帰るか」 「一個持つぜー!」 「おぉ、珍しいじゃねーか」 「たまにはねー」 珍しく自分から荷物を持つと言うルミナに一番軽いものを渡す。 さて……と、家についたらリル達も帰ってきてるかな? 迎えに行くなんて正直勘弁して貰いたいぞ……。 ☆ ☆ ☆ 「あっナオヤさん。ついでにルミナも」 「ついでとはなんだー! やるかー!?」 部屋の前まで辿りつくと、ちょうどさくらの家からリルが出てきたところだった。 最近リルはマイバッグを持って買い物に行く。だから今そのバッグを持っているところをみると、どうやら買い物に行くところだったらしい。 「あかえり。リルは今から買い物か?」 「ただいまです! 晩ご飯作ろうにも冷蔵庫に何も無かったので……」 「ちょうど良かった。皆で焼肉でも食べようかと思って沢山買ってきたんだ。すぐに用意するからさくら呼んでウチ来なよ」 「いいんですかっ!?」 「一人千円だぜー!」 「お前は黙れ。最初からそのつもりだしね」 「ありがとうございます! すぐに呼んできます。ボクも用意手伝います」 そう言ってリルは部屋へと戻っていった。 オレ達も部屋に帰り準備を始める。 相変わらずルミナは首にぶら下がるだけで全くの役立たずだったけど、ホントにすぐにリルが来て手伝ってくれたから結構楽に用意を終える事が出来た。 肉や野菜をテーブルに運び、皆で焼肉を始める。 「帰ってくるの遅かったみたいだけど大変だったのか?」 「……あまり思い出したくないです」 肉を焼きながら質問するとリルが青い顔で答えた。 「最初はリルちゃんに帰って来いと言ってましたけど、ちゃんと話したらすぐに分かってもらえましたよ」 さくらが笑顔で言う。 話したって……普通の話し合いか? それとも脅しという名の話し合いなのかっ!? 「そ、そうなんだ……あれ? すぐにって事はこんなに遅くならないんじゃないのか?」 さすがにどんな話し合いが行われたのか聞く勇気はオレには無かった。 「ええ、その話はすぐに終わったんですけど……お義父さまとリルちゃんの昔の写真や映像を見ながら話していたら時間を忘れてしまって」 「その間、ずっと両側から二人に抱きしめられてたんですよ……」 なるほど……だからそんなにウンザリしてるのか。 その光景がハッキリと頭に浮かんでくるよ。お気の毒に……。 「ま、まぁ二人とも元に戻って、これからも地球に居られる事になって良かったよな!」 うわ〜……我ながら何て強引な話のすり替えなんだ。 「そ、そうですね! あっ、ルミナ! それまだ焼けてないでしょっ!」 「え〜? 早く食べたいぜー!」 「食べたくてもちゃんと焼きなさいよ! お腹壊すよ!?」 「はぁ〜い……」 「これは焼けてるから、はい」 「ありがとー!」 何か……リルって面倒見良いよな。 普段すぐに喧嘩するのに。 「いただきだぜー!」 「あっ! それはオレが焼いてた肉!?」 「ふっふっふ。肉は全てアタシの物だぜ――――っ!」 全く……まぁ、色々あったけどルミナの家出問題も一応解決したし、宇宙に行って良かったかもな。 何か行く前より皆が仲良くなった気もするし。 「ならオレは冷蔵庫のプリン食べちゃおっかな〜!」 「ごめんなさい」 「リルちゃん、あ〜んして下さい」 「じ、自分で食べます!」 こんな騒がしい奴でも居なくなったら寂しいもんだしな。 だから、いつまで続くか解らないけど……当分このままでいいかな。 |