「言い間違えただけですぅ――――っ!!」 「聞く耳持たんんわぁぁぁぁ!!」 全力疾走。 オレは今、ルミナパパに追いかけられている。 理由は混乱と緊張で『娘さんを僕に下さい』なんて言ってしまったオレにあるんだけど。 リルのお父さんもそうだったけど、どうしてこの人達は怒ると刃物を持って追いかけてくるんだろう……? ルミナやリル、子供の喧嘩でさえ普通にビームサーベルや銃なんかが使われているのに、何故、地球にも普通にあるような刃物なんだ? 確かにこっちの方が苦しんでから死ぬ事になりそうだけど……。 「――って壁ぇぇぇぇっ!?」 考えながら走っていたら目の前に壁。 抜け道は無く、背後にはルミナパパ。 オレ……まだ死にたくないんですけど? だってまだ十七だよ? まだまだ人生これからじゃん……。 「覚悟せいやぁぁぁぁ!!」 手に持った武器を振り上げ突進してくるルミナパパ。 「いやぁ――――っ!!」 頭を抱え込み目を瞑る。 「いい加減にしなさ――――いっ!!」 「ぐはっ!!」 その時、ルミナの怒鳴り声と共に何か鈍い音がして、ルミナパパの呻き声が聞こえてきた。 目を開ける……そこには頭から血を流して倒れるルミナパパをロープでぐるぐる巻きにしているルミナが居た。その傍らにはフライパンが落ちている……あれで殴ったのか? リルの家でもそうだったけど、オレ……助けられてばかりだな。 何か情けなくなってくる……。 ☆ ☆ ☆ 「解けぇ――――っ!」 ルミナパパは目を覚ました途端に暴れだした。 今にも襲ってきそうで怖いけど、ルミナ曰く『ビームサーベルでも傷ひとつつかないロープ』だから大丈夫らしい……。 「解いたらナオの事襲うでしょ?」 「当たり前だぁぁぁ!!」 「いちいちうるさい――――っ!」 何か……ルミナが説教してるって凄い新鮮だな。 なんせ、何時もは怒られるような事ばかりしてるからな。 「あの〜…………」 とにかく今は誤解を解いて落ち着いてもらわないと。 「何じゃい!?」 「さっきの事ですけど……あれはですね」 「ルミナはやらんっ!」 「いや……だからあれは誤解……」 「そういう訳だからアタシはこれからもナオと暮らすからっ!」 「オイ――ッ! 何言ってんのっ!?」 何考えてんだルミナの奴……余計ややこしくなるじゃね〜か。 見ろよ、お前のパパ真っ白になっちゃってるじゃないか。 「お、俺よりそこの男の方が良いって言うのか……俺はあんなガキに劣っているのか?」 真っ白になったルミナパパがブツブツと呟く。 「なら! ルミナに相応しいか俺がテストしてやる! 絶対認めないけどなっ!」 「それ、テストじゃないしっ!」 「パパ何言ってんの!?」 叫びながら立ち上がるルミナパパに二人で同時にツッコミを入れる。 ……というか、いつのまにかロープが解けていた。 ☆ ☆ ☆ 「ルミナと住むにあたって、確りとルミナの健康管理が出来ているのかっ!? そんな事も出来んようじゃルミナは任せられん!」 何かホントにテストらしきものが始まってしまった。 もうかれこれ一時間は質問され続けている。 ……その一時間も今の質問をされるまでは地球に来てからのルミナの事ばかりでオレのテストとは関係なかったけど。 「健康管理……ねぇ。一応ご飯とか栄養考えてるけど……」 「そうだよっ! ナオの料理に比べたらパパの料理なんて生ごみだよ!」 「な――っ、ルミナ、パパの料理嫌いだったのか?」 「あんなのは料理とは言わないよっ! 食材への冒涜だよ。それに比べたらナオの料理は凄いよ! アタシ初めてピーマンが美味いと思ったもん」 「ル、ルミナが……ピーマン……を?」 そう言えばルミナって最初はピーマンに箸もつけなかったよな。 ルミナパパは信じられないといった顔をオレに向ける。 「ま、まだだ……これぐらいじゃまだ認められんよ……」 何か物凄くダメージを受けていらっしゃる。 このままいけば思ったより簡単に認めてもらえるんじゃないか? というか……認められていいのか? 認められたらオレ……ルミナを貰わなきゃいけなくなるんじゃ……。 「それにアタシ今楽しいもん!」 楽しいもん……楽しいもん……楽しいもん……と、エコーが聞こえた気がした。 ルミナはいつのまにか怒った顔じゃなく笑顔になっていた。 ルミナパパにもそんな感じに聞こえているみたいで、ルミナの顔をジッと見つめていた。 「そうか……楽しいのか……」 「うん!」 「わかった……。たまには会いに来てくれよな」 「うん」 あれ……何か纏まった? オレ置いてきぼりなんですけど。 「クソガキ」 ルミナと少しの間見つめあった後、オレの方にやってきた。 それにしても……クソガキって。 「な、なんです――かっ!?」 イキナリ肩を組まれた。 ……顔が近ぇ〜よ。 「お前は気に入らんがアイツがあんなに頑固に決めた事だ。だからルミナの事は任せた。但し、ルミナを裏切るような事をしたら確実に殺す。いいな?」 「は、はい……」 何だよ……叫びながら追いかけている時の数倍は怖いじゃないか。 思わず返事しちゃったよ……これってルミナを貰わなきゃいけないのか? 何か複雑な気分。 「じゃあナオ、さっさと帰ろう」 「え……う、うん」 ルミナに手をとられ、ルミナパパから引き剥がされる。 「パパの気が変わらないうちに早くっ!」 ルミナパパから離れて小声で話しかけてくるルミナ。 その声は少し焦っている。 「もう大丈夫なんじゃないのか?」 「甘いよっ! そんな簡単な人じゃないよ、パパは」 「そ、そうなのか……?」 「じゃ帰るよっ! ダディーも早くっ!」 「もう居るぞ」 いつの間にかオレの頭にダディーが乗っていた。 それを確認してルミナがワープ装置を取り出しボタンを押す―― 「やっぱり嫌だぁぁぁぁぁ!!」 叫びながらこっちに走ってくるルミナパパ。 ……ルミナの言う通り、オレの考えが甘かったみたいだ。 もうちょっとワープ装置の作動が遅かったらオレはルミナパパに掴まれるとこだった。 こうしてオレの初めての宇宙体験は終わったのだった。 次に宇宙に行く時は絶対着いていかない、とオレはそう決めた。 |