リルとさくらをリルの家がある星に降ろし、ルミナの家に向けて出発する。
 地球まではワープ装置で帰れるから次にリル達に会うのは地球になるだろう。まぁ、さくらが居るしリルが地球に帰ってこないって事は無いと思う……それよりもオレとルミナが帰れないって可能性の方がかなり高い。
 宇宙船の中でダディーに聞いたところによると、ルミナの父親は昔リルの父親と宇宙最強の座を賭けて戦かっていたそうだ。

「ねぇナオ……やっぱりこのまま地球に行こ?」

 操縦席から後ろに立つオレを覗き込むようにルミナが見つめてくる。
 ……オレだってダディーの話を聞いてちょっとそれもいいかな、なんて考えたけどやっぱり駄目だ! ちゃんと話をつけるべきだし、第一……地球にこんな宇宙船を持っていく訳にはいかない。

「無理。こんな事言ってるけどオレだってビビってるんだから……お前も覚悟決めろ」 
「うぅ〜…………」

 本気で嫌そうな顔をしながら渋々といった様子で操縦するルミナ。
 ……そんなに嫌なのか?
 そういえば、オレってルミナが何で親と家出する程の喧嘩したのか知らないよな。
 
「もうすぐ着くぜ〜……」

 早っ!?
 リル達と別れてから十分ぐらいしかたってないぞ。
 隣の星って聞いてたけどこんなに近いのか……でも、宇宙船の速度も相当な物だからな。

「ヤバイ……緊張してきた」
「今ならまだ引き返せるよ」
「まだ言うか……このまま行くぞ」
「ふぁ〜い……」

 宇宙船の進行方向に見えるルミナの家がある星。
 近づくにつれて、何か凄い緊張してきた。
 あ〜、挨拶かぁ……何て言えばいいんだろう? 
 リルのお父さんにも殺されかけたけど……一緒に住んでるなんて言ったらマジで殺されるんじゃないか? ダディーの話だと相当な親バカらしいしな。 
 喧嘩してるってことは、もしかしたらルミナとルミナの親の間に入らなきゃいけない可能性もあるし……なんでオレってこんなに苦労する事に巻き込まれるんだよ。
 
「ナオ……ナオってば! 着いたよっ!」
「んあ……?」

 なんて事を考えている間にルミナの家に到着していたらしい。
 宇宙船を降りて見渡す。
 リルの家とは違って洋風……というか、ところどころ丸みを帯びた、どこか宇宙的なデザインの、でもリルの家に負けず劣らずの豪邸だった。
 ルミナも宇宙船を降りてくるが、その足取りは重い。
 ルミナとその頭に乗っているダディーが降りてきた瞬間、宇宙船は消えてしまった。

「な――なんでっ!?」
「その位置に転送装置が埋まっていてな……家の中の格納庫と繋がっているのだ。さすがに玄関や窓からあの大きさの物は入れないのでな」

 オレが驚いているとダディーがオレの頭に移動してきて詳しく説明してくれた。
 ルミナやリルの持っているワープ装置と原理は同じらしいんだけど、オレにはよく解らなかった。
 ルミナは降りた位置から全く動かずに自分の家を見つめていた……とても、嫌そうに。
 
「シャキッとしろよな……」

 言いながらルミナの手をとり引きずるように歩き出す。
 こうでもしなきゃいつまでも家に入らない気がする……。
 
「で、お前の親父さんは何処に居るんだ?」

 軽くオレの身長の倍はある玄関を潜り、家の中に入った時点で問いかける。
 ここまで来たらもう逃げ出さないだろうと握っていた手も離す。それに、手を握ってるところを親バカな親父に見られたら確実にオレは死ぬ。

「多分……部屋か格納庫に居ると思う」
「わかった。じゃあ、そこに案内してく――」
「ルぅ〜ミぃ〜ナぁ〜〜!!」

 案内を頼もうとした時、家の奥の方から泣き声のような悲鳴のような訳の解らん奇声をあげ、涙を尋常じゃない程流しながらドタドタとオッサンがやってきた。
 
「パ、パパ……」
「えっ!? この奇声をあげつつ尋常じゃない程涙と鼻水を流すハッキリ言って物凄くむさ苦しいオッサンが!?」
「なんじゃいワレェェェェ!!」
「がはっ!!」

 またもや、思った事をそのまま口にしてしまった……。
 でも……だからっていきなりラリアットは……キツイです。

「るみなぁ……心配したんだよぉ」
「抱きつかないで! 暑苦しいから」
「なんでそんなに反抗するんだよぉ。パパはルミナの事をこんなに愛しているのに」
「それが嫌なんだって――っ!!」
「ぎゃ――――っ! 目がっ、目がぁぁぁぁ!!」

 床に倒れたまま動けないオレを無視して喧嘩を始めるルミナとオッサンもといルミナパパ。
 抱きつくルミナパパに容赦無く目突きを浴びせるルミナ。

「ナオ大丈夫っ!?」
「うん……首が動かないし、てか体も指ひとつ動かせないけど大丈夫」
「それ大丈夫じゃないって!」
「あははははぁ……えっ? あはは、違うよ〜、ジャムはご飯にかけるんじゃなくてご飯をジャムにかけるんだよ〜」
「あぁっ! ナオが気味悪い笑みを浮かべながらおかしなこと言ってる――!」
「目が、目がぁぁぁぁぁぁ!!」
「……地獄絵図だな」
 
 その光景を見て、ダディーが冷静に感想を言っていた。
 そんなオレ達をダディーが呼んできたこの家の使用人らしき人達が医務室のような所まで運んでくれた。


 ☆ ☆ ☆

「ん…………ここは?」
「起きたっ!? 大丈夫!?」

 目を開けると、目の前に涙ぐむルミナの顔があった。
 …………。
 ……そういえばオレ……ルミナパパにラリアットされて……。

「あれ? 体が痛くない……普通に動く!」

 体中を触ってみても何ともない。
 何か今回はホントに死ぬかと思ったけど……。

「よかったぁ〜!」
 
 ルミナは言いながら抱きついてきた。
 その時、何かが砕ける音が聞こえた。音のした方に目を向ける。

「ぐぬぬぬぬぬ……」

 そこに居たのは目を真っ赤にさせたルミナパパ。飲み物の入ったカップを握りつぶしてオレを睨んでいた。
 目が赤いのは元々か……それともルミナに突かれたせいか?

「ルミナァ……ソイツは何モンじゃあ?」
「ナオだよ。一緒に住んでるの。パパよりずっと頼りになるの!」
「一緒に住んでるだとぉぉぉ!!」

 ルミナパパが立ち上がりオレの胸倉を掴んでくる。
 引き寄せられるようにしてオレも立ち上がる。

「どういう事じゃいっ!?」
 
 血走った眼でオレを睨みつけてくるルミナパパ。
 ……ったく、ルミナめ。説明不足なんだよ。
 オレはルミナパパの手を服から剥がし正面から眼を見て言った。
 多分オレも混乱していたんだろう。
 まさか――

「娘さんを僕に下さいっ!」

 なんて言ってしまうなんて……。

「えぇ――――っ!!」
「いやぁぁぁぁぁっ!!」

 オレの言葉に驚くルミナと涙を流しながら甲高い悲鳴を上げるルミナパパ。
 あ……コレはオレ、死ぬな。


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