| 1学年につき13クラスあるのはクラス発表の掲示板で見て知ってはいたが、体育館に入って初めて実感できた。 前の学校よりも広い体育館にビッシリと並べられた椅子。そのほとんど隙間無く並べられた椅子には空席が見当たらない。 「どこに座ればいいんだ……?」 これだけ居ると自分のクラスがどこにあるのか分からない。というか、さくらと悠以外にクラスメイトの顔も知らないのに分かりようがないよな。 「適当に空いてるトコでいいんじゃない?」 と、悠は近くの空席に座った。 「そうですね」 さくらも同意して悠の隣へ座る。 ……そんな適当でいいのか? こういう式って普通クラスごとに固まるよな? 自由に座らせたらうるさくなったりするし。 「何ウジウジ悩んでんのよ? ここ空いてるわよ」 自分の後ろの椅子を叩きながら言う悠。 言われるがままに悠の後ろに座った。 「ったく、ノロノロしないでよね」 「……悪かったな」 「ホントにね。くだらない事で悩み過ぎるとそのうちハゲるわよ」 しかし、なんでコイツはこんなに口が悪いんだ? 黙ってりゃ美少女で通るほどの容姿してんのに……。 そして式は何事も無く順調に進んでいった。 新しい年度になって学年が上がった事への注意やら、新入生への学校生活についての話等、まあ他の学校と何ら変わりない話が続く。 そんな話が続けばオレみたいな普通の男子高校生は眠くなってくる訳だが……学園に来たばかりで教師達に目をつけられるのも嫌だし必死に耐えていた。 『続いて学園長のお話です』 放送に釣られて壇上を見る。 学園長はオレの叔父にあたる人だ。 母さんの兄で父さんとも仲が良いらしい……ただ、オレは会った事がない。いや、子どもの頃に何度か会った事があるらしいが全く覚えてない。 親戚が集まる時もウチの家族は出席しなかったし、何より親戚どころかオレは父さんにもあんまり会った事がない。 「あ〜、なんだ? 俺が学園長の 言いながら壇上に現れたのは茶髪でロン毛、顎に髭を生やし高そうなスーツを来た男だった。 眠気も吹っ飛ぶ。 母さんの兄って事は40代半ばだろうが、とても40代には見えない。下手すりゃ20代と言って も不思議はないかもしれない。 というかホストにしか見えん! 「あ〜、いきなりだが、俺は娘にこの学園を任せて旅に出る事にした」 学園長は何の前触れも無くそんな事を言い出した。 「な、なにをいってるんですか!? あなたは!!」 今まで壇上の隅に控えていた教師の一人が学園長に駆け寄った。 多分あの教師は教頭だろうな……何か見ただけでそう思えてしまった。 「いきなりどういう事ですか!?」 教頭(仮)が甲高い声で叫ぶ。 「だって飽きたんだもんよ」 「なっ……あ、あき……」 飽きたってあんた……。 教頭(仮)も絶句してるじゃないか。 責任ある立場の大人が言うセリフじゃないだろソレ。 だが、教頭(仮)と多分新入生達以外の教師や生徒は大して驚いていない。というか、笑いながら壇上の二人の様子を見ている。 それから考えると、この学園長がおかしな事を言うのは良くある事なんだろうな。 「お〜い! 入ってこ〜い」 学園長は教頭(仮)を無視して壇上の横の方、生徒達からは見えない位置に居た誰かを手招きして呼び寄せた。 そしてコツコツと足音を響かせ出てきたのは黒いスーツを着た女性。 壇上のマイクまで進むと足を止めた。 「ん〜〜〜……」 そしてマイクで話そうとしたようだが、彼女は背が小さかった。 マイクが高すぎて届かないようだ。 スーツも子どもが大人ぶって着ているようにしか見えないし、この光景は見ていて微笑ましくなってくる。 「もう……えいっ!」 「なっ!?」 オレ以外にも何人か驚きの声をあげた。 それは彼女が高くて届かないマイクスタンドを手刀で真っ二つにしてしまったからだ。 普通に短くすればいいのに……。 「えっと……新しく学園長になった 彼女が言うと、所々から「よろしく、真奈美ちゃ〜ん」とか男子達の歓声があがった。 この学園……ロリコンが多い気がする。 「大坪公也くんは後で学園長室まで来るように!」 そう言って彼女、学園長は去っていった。 この学園に来たばかりだし、転校生って事で話でもあるのかな? それとも、まさか……オレ何かしたとか? 「アンタ何かしたの?」 考えていた事と同じ事を悠に言われた。 「してねーよ……多分」 「多分て何よ……ま、関係ないけど」 多分と言う言葉に少し引きつった顔をしたが、すぐに元に戻る。 「教室に移動するみたいですよ」 悠と話しているとさくらが声をかけてきてくれた。 慌てて辺りを見ると生徒達はそれぞれ移動を始めていた。 「それじゃ行こうか」 オレはそう言って立ち上がる。 ずっと座っていたせいか腰が痛い。身体を回すとボキッと骨がなった。 「で、2年E組ってどこ?」 「案内しますので迷わないように着いてきてくださいね。大坪さん」 オレの言葉に嬉しそうに反応したのは悠だった。 この女……一体いつまでからかうつもりだろう。 「ちゃんと着いていきますよ!」 前を歩くさくらと悠の二人について行きながらも、ちゃんと覚えようと周りを見ながら歩いていく が……広すぎる! なんなんだ? この学園は。 「ここですよ」 さくらが立ち止まる。 教室の中を見ると、さすがに教室は今まで通っていた学校とさほど変わらない。 「早く座りましょ」 入り口で立ち止まっていたオレを押しのけて悠が中へ入っていった。 「うわっ! 須藤も同じクラスかよ!? 最悪だぜ!」 悠が入ると教室の窓側の一番後ろに座っていた男子がいきなり叫んだ。 悠は無言でその男子に近づいていく。 「な、なんだよっ!?」 オレからは見えないが悠の顔を見てビビリだした男子は立ち上がって逃げようとする。 だが、窓際の席に座っていた男子生徒には逃げ場は無かった。 「死ねぇっっっ!!」 オロオロする男子生徒の頭に見事に悠のハイキックが決まった。 そのままその男子が座っていた席に座る悠。 「あ〜一番いい席が空いててよかった〜。さくらもこっち来なよ!」 そんな事を言いやがった。 空いてたってか……力で奪い取ったよな。 さくらは悠の前の席に座った。 「アンタはここね!」 悠の指示でオレの席は悠の隣に決まった。 「お前、その格好でハイキックはやめた方がよくないか?」 座ったオレは隣の悠に話しかける。 ……スカートでハイキックはまずいよな、やっぱり。 「い〜じゃん、スパッツ履いてるし」 「バッ――やめろって!」 言いながらスカートをめくる悠を止める。 悠には恥じらいってものが無いのか? 「な〜に恥ずかしがってんのよ? 見れて嬉しいくせに!」 うん、本当に恥じらいなんて持ってないのかもしれない。 相手にすると疲れるな。 オレは話を切り上げると、後ろで倒れたままの男子生徒をオレの前の席まで運んであげる事 にした。 運び終えた時ちょうどチャイムがなった。 |