「目的は……なんですか? お金ですか?」
「そんなんじゃないよ。そうだな、目的は……君達二人の『血』かな?」
    
 血…………?
 目の前に居る男は微笑んだままそう言った。
 血ってどういう事? 二人って……?

「意味が解らないって顔だね」
「その通りです。意味が解りません」

 ボクが答えると男は立ち上がって近づいてくる。
 その顔は今までの微笑を消していて、口の端を吊り上げた気持ち悪い笑みになっていてボクは反射的に後退あとずさって距離をとる。
 何か……悪役って感じです。
 
「君の本当の身体と、今の君の身体の二人だよ」

 言いながら男はボクを指差す。
 ボクのホントの身体と、このルミナの身体……?
 聞いても意味が解らないですっ! この人は一体何を言ってるんですか!?

「それ以上近づかないでくださ――えっ!?」

 銃を取り出し男に向けようとした時、目の前から男が消え背後からボクの腕を掴んでいた。

「危ないなぁ……、駄目だよ? 女の子がこんなの持っちゃ」

 簡単に銃を奪われてしまった。
 掴まれた時解ったけど……この人、力も物凄い。
 
「護身用ですよ。あなたみたいな人から身を守る為の……」
「じゃあ、役立たずだねぇ。守るどころか奪われちゃうなんて」

 振り返って男の顔を見る。
 ハッキリ言って勝てる気がしません……。それでも、このまま大人しく言いなりになる訳にもいかないし、とりあえず睨みつける。
 ボク、もしかして……ううん、もしかしなくても大ピンチっぽくないですか?
 強がりで睨みつけてますけど、勝てる気どころか逃げる事も出来そうもないんですよ? 

「そんなに怖い顔しないでよ……。安心して……もう一人の子が来るまで手は出さないから」

 それを聞いてどう安心しろって言うんですかっ!?
 つまりそれってルミナが来たら手を出すって事じゃないですか!
 でも……きっとルミナと一緒にダディーさんも来てくれるよね? それに多分さくらも。
 ボク一人じゃ無理だけど……皆が来てくれれば何とかなる、はず。
 皆……ルミナ……さくら……ナオヤさん――。


 ◆ ◆ ◆

〔EYES of Naoya〕

「――ルミナっ!?」

 今まさにオレに向けて発射されそうになったところを、誰かが背後からビームで宇宙船を撃ち落してくれた。
 マジで助かった――そう思いながら振り返る。

「ありがとうルミナ! 死ぬところだったよ――って、アンタかよっ!?」
「ナオヤ、大丈夫だった? ワタシが来たからにはもう安心していいわよ!」

 そこに居たのはルミナではなく……ジェミさんだった。
 つーか、何で居るんですかアンタ。
 助けてもらってこう言うのもなんだけどさ……アンタ、リルに頭撃たれたじゃん。
 
「なんで居るんスか……?」

 あ、思ったことがそのまま口に出てた。

「愛の力よっ!!」
「はあ……意味が解りません」
「ワタシとナオヤの愛の力がナオヤがピンチだってワタシに教えてくれたの! ワタシがずっとナオヤの事を想ってたようにナオヤもワタシの事を想っててくれたのね……だからこんな奇跡が起きたのよ! これはもうワタシ達二人は結ばれる運命だと信じざるを得ないわよね!?」
「何その超展開。オレは一秒たりともアンタのことを想ったことなどないわっ!」
「もぉ〜、照、れ、屋、さん」
「全くもって照れてなんかいませんが? 出来ればアンタの事は二度と会うことも無く少しでも早く記憶の彼方のブラックホールにでも押し込みたかったよ――」
「――あふんっ!」
「うわぁっ!!」

 無駄な会話をしているうちに落ち着きを取り戻したのか、生き残っている宇宙船から発射されたビームがジェミさんを直撃した。
 リルに撃たれた時もそうだけど、この人やられたときの声までキモいな……。
 
「ワタシとナオヤの恋路を邪魔するなあぁぁぁっ!!」

 ビームの爆発の衝撃で出来た砂埃と煙で姿は見えないけど、その中からそんな叫びと共にビームが乱射された。
 …………てか、

「恋路とか言うな――――っ!!」

 そこだけはどうしてもツッコまなきゃいけない気がしたんだよ。
 段々と煙が薄れて人影が見えてきた。
 バズーカみたいなやつを持って仁王立ちのジェミさん。
 ……どこにそんな物持ってたんだよ? オレと話してた時、手ぶらだったじゃないか。
 
「愛は勝つのよっ!」

 ジェミさんがそう言ったと同時に空に浮かぶ宇宙船が次々と爆発していき、見事に全ての宇宙船を撃破してしまった。
 愛の力……ありえねぇ……。

「さあナオヤ! 敵は去ったわ。二人でゆっくりと愛を育みましょう」
「去ったっつーか爆発したから。あと、そんな存在しないものは育めませんから!!」
「何を言っているの? 愛はワタシ達二人の間に確かにあるわ! だからワタシを抱きしめて!」

 言いながら駆け寄ってくるジェ……いや、変態。
 しかも滅茶苦茶早い癖に女の子走りなのがまたキツイ。
 奴はドンドンと物凄いスピードで迫ってくる……多分逃げてもすぐに追いつかれる。

「い、いやあぁぁぁぁぁ!!」
「ナ、オ、ヤ――――あふんっ!」

 オレに抱きつこうと1メートル程手前で両手を広げ空高くジャンプした奴に横から思いっきり宇宙船が突っ込んだ。
 そのまま吹っ飛ばされていく変態。
 
「………………」
「ナオ〜、置いてくなんて酷いぜー!」

 飛んでいく変態を呆然と見つめるオレの目の前に降りてきた宇宙船から出てきたのは、今度こそ正真正銘にルミナだった。
 いや、この場合身体はリルだけどね。
 
「……リルちゃんは……どこですか……?」
「――ひっ!?」

 ルミナに続いて出てきたのは……さくら……だよな?
 俯いていて表情は良く解らないけど、いつもの笑顔はそこには無かった。
 恐怖のあまり叫びそうになったぐらいだ。
 オレは言葉を発することも出来ずにリルの居るであろうあの御伽噺に出てくるような家を指差す事しか出来なかった。


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