| 御伽噺に出てくる魔女が住んでいそうな家の玄関前に立ち扉を叩くリル。 「誰か居ませんか〜?」 何度も扉を叩いて呼びかけても返事が無い……。 「留守なんでしょうか?」 後ろに立っていたオレの方に向き直り微妙に不安げな表情で問いかけてきた。 「う〜ん、かもね。とりあえず上がっちゃおうか」 「えっ!? 勝手にですか!?」 「うん。どうせ入るつもりなんだし良いんじゃない?」 あれ? 何かオレ……ちょっと積極的過ぎじゃね? 普段のオレなら相手が帰ってくるの待つだろうしな。 ――って自分を自分で分析するのって何か複雑な気分だ。 積極的というか……何でだろう、何故か留守とは思えないんだよな。オレの心は中に誰か居るって確信してる感じだ。それで入って来いって招かれてるような……そんな不思議な感覚。 考えながらリルと場所を入れ替わり扉に手をかける……やっぱり鍵も開いてる。 「おじゃましますよ〜」 「…………おじゃまします」 リルも後ろからついてくる。 ………………。 「…………は?」 目の前に広がっている光景にオレは間の抜けた声をあげた。 だってそこは…………外だったんだから。 玄関の扉を開けて家の中に入ったはずだよな? なんで外なんだよ……。 「どうなってるんだよ……何か解るか――って、え?」 リルに問いかけながら振り返る――そこには後について入ってきたはずのリルの姿はなかった。 …………はい? ちょ、待って……どゆこと? 家の中に入ったのに外で、一緒に入ったはずのリルが居ない……うん、訳分かんねぇ。 「お〜いっ! リル――――ッ!!」 叫びながら何度もドアを潜る……。 何度開け閉めしても、出たり入ったりしても同じ場所に出てしまう。それにリルもどこにも見当たらない。 扉から少し離れてみる……やっぱり御伽噺に出てきそうな家がそこにはあった。 つまり、オレは入ろうとしても入れない……扉を潜れば家から出てきた感じになってるって事だよな? これが魔女ってやつの力なのか? マジでどうなってんの!? リルだけは中に入れたって事なのか……何でオレは入れないんだ? 何、積極的になって「上がっちゃおうか?」なんて言ってんだよ……オレのバカ! 「これから…………どうしよう?」 ここでリルが出てくるのを待つか? いや……リルも無事なんて保障は無い。でも、中に入れないしなぁ……。 中に入る方法を探す……って言ってもな。 オレは家の周りをぐるりと回ってみた。 何にも無い。しかも、この辺りにはこの家以外に何も無い。 「あれって…………」 空から音が聞こえた。 見上げると何かが飛んでいた。かなり高い所を飛んでいるのか、それともただ単に小さいだけなのか黒い点にしか見えなかった。 黒い点はひとつじゃなく、かなりの数だった。鳥とか虫かとも思ったけど、それだったらこんなに気になるような音は出さないだろ……いや、宇宙だし、そんな鳥とかが居るのかもしれないけど。 でも、段々近づいてくるそれは機械的な音に感じる……宇宙船? 「――あの宇宙船って」 やっとどんな形か確認できる所まで宇宙船が近づいてきた。 ヤバイ――あの宇宙船って確かこの星に来る途中、オレ達を襲ってきた海賊の宇宙船と見た目がソックリだ。 もしかしたら、あの海賊達かもしれない。 ここに向かってきてるって事は……あの海賊達って魔女の仲間? まさか…………イキナリ襲ってくるなんて事は………… 「やっぱーりね――――っ!」 そんな事を考えた途端、宇宙船からオレに向けてビームが発射された。 何なんだアイツ等は!? 無差別か? 自分たち以外は全部敵ってか!? 考えながらもオレはビームを避ける為に走る。 「あっぶねぇ――っ!」 ギリギリで何とかかわす事が出来た。 何て……正確な攻撃だよ。かなり離れてるってのに……これも宇宙の技術か? 「…………マジですか?」 かわして空を見上げると全ての宇宙船がビームを発射しようとしていた。 さすがに死ぬって……いや、マジで。 ビームの発射を知らせるように宇宙船の先端が赤く輝く。 オレは立ち止まって見上げることしか出来なかった。 「助けにきたわよっ!」 突然聞こえた声と共にオレの背後から青いビームが空に伸びていった。 ビームの命中した先頭の宇宙船はそのまま落下していった。 他の宇宙船も動揺したのか輝きが収まっていく。 助けにきたって……もしかして―― 「――ルミナッ!?」 ◆ ◆ ◆ 〔EYES of Riru〕 「ナ、ナオヤさんっ!?」 家の中に入ると先に入っていった筈のナオヤさんが居なかった。 隠れてるって感じじゃない……よね。 何かの仕掛け? もしかして……ジェミさんの言ってた魔女の仕業? とりあえず奥に行ってみようかな……薬もあるかもしれないし。 狭い通路を進んで突き当たりにあった扉を開ける。 「可愛いお客さんだね」 中に入ると声をかけられた。 声の聞こえてきた方を見るとソファーに座ってボクを見ている男の人が居た。 「だ、誰ですか?」 「誰って……この家の主だけど。魔女って言った方がいいかな?」 「魔女……?」 「そんな驚いた顔されてもね。魔女って言っても女とは限らないよ」 その人はさくらみたいに微笑み続けている。 魔女って事は……この人が? 「ナオヤさんはどうしたんですか!?」 「家に入れてあげたのは君だけだよ。男には興味無いんだ」 「な――っ!?」 「ふふ、この薬が欲しいんじゃないかな?」 目の前に居る男の人は液体の入ったビンをボクに見せつける様に顔の前で揺らしている。 何で知ってるんだろう? これも魔女の力なのかな……。 という事は、あの薬で元に戻れるんだ。 「ただで手に入るとは思ってないよね?」 その顔はさっきまでの微笑みとは違い……何か嫌か感じの笑顔に変わっていた。 |