「なるほどね〜。それで薬を買いに来たわけね?」
「そうです。売ってる場所知ってますか?」

 リルがこの星に来た訳をジェミさんに説明する。
 オレは擦り寄ってくるジェミさんから少しでも距離をとる事に必死で二人の話を聞く余裕もない。

「身体を入れ替える薬ね〜……聞いた事あるような……」

 アゴに人差し指を当て、身体をくねらせながら考えるジェミさん。
 ごめんなさい……はっきり言ってキモイです。
 
「あっ、そうだわ! 確か西の方に住んでる魔女がそんな薬を持ってるらしいわ!」

 ……何か……あんまり宇宙的じゃない単語が聞こえた気がするんだけど。
 魔女だって?
 えらくファンタジーな単語だな。もしかして……この物語はファンタジーに路線変更してしまうのかっ!?
 だとすると、まさか、オレは伝説の勇者だったりしてしまうのかぁぁぁ!?

「……しませんよ」

 背後から呆れたような声でリルにツッコまれた。

「……だから、何で皆オレの考えてる事解るんだよ」

 言いながら振り返るとリルは声だけじゃなく顔まで呆れたようになっていた。
 
「はぁ〜……で、具体的な位置は解らないんですか?」
「何っ、その溜息っ!? 何なの、オレには解らない何かがあるのか!?」
「具体的には解らないわね〜……ごめんなさい」
「いえ、薬があるって事が解っただけでもよかったです」
「オレを無視して話を進めないで!?」

 オレは力の限り叫んだ。だって何か怖いじゃん……オレの考えてることが他人には聞こえてるんじゃないか、とか思ってしまう。

「それはどうでもいいので、とにかく西に向かいましょうか」
「どうでもよくないよっ!?」
「あら〜、もう行っちゃうの? もっとゆっくりしていけばいいのに〜!」
「だ、抱きつくなぁ――――っ!!」

 抱きついてくるジェミさんを引っぺがす。
 でもジェミさんの力は物凄く強くて中々引き剥がせなかった。


 ☆ ☆ ☆

「ホントに行っちゃうの〜?」
「急ぎますので……色々有難うございました」

 リルは未だにオレに抱きつくジェミさんに丁寧にお礼を言う。
 そのままオレを置いてその場を後にしようとする……何かこの星に来てから、というかジェミさんに出会ってからのオレに対するリルの態度がおかしいんですけど。
 
「置いてかないでっ!?」

 マジに置いて行こうとするリルに必死に呼びかけた。
 ジェミさんに頬擦りされるオレを、振り返ったリルの顔は『ご愁傷様です』って感じだ。何か……関わりたくない感じのオーラが目に見えるようだ。

「あの……ナオヤさん返して貰えますか?」

 それでもリルは一定の距離は保ちつつもオレを助けようとしてくれた。  

「いや〜よ。ワタシこの子気に入っちゃったもの」

 本気で貞操の危機かもしれない……。
 オレ、宇宙に来たのは失敗だったのかもしれない。
 
「な〜んかど〜でもよくなって〜きた〜」
「ああっ! ナオヤさんが死んだ魚の目をして呟きだしてるっ!?」
「ち〜からの〜限り生〜きてぇやれ〜……」
「全然力が込められてないですっ。これはもう力ずくでも返してもらいますうりゃあぁぁ!」
「あふんっ!!」

 リルは銃を取り出しジェミさんの頭を狙い打った。
 倒れこんでピクピクしているジェミさん……一応、生きてるみたいだ。

「今のうちにここを離れましょう!」
「う、うん……」

 戸惑っていたオレはリルに手をとられ、その場をあとにした。


 ☆ ☆ ☆

「あ、危なかった……あのままだとオレはどうなっていたことか。マジでありがとう!」

 意識をハッキリ取り戻した途端にさっきまでの恐怖がぶり返してきた感じだ。
 マジであのままだったらどうなっていたかなんて考えたくもない……恐ろしすぎる。
 オレはリルの肩を掴み本気でお礼を言った。

「助かってよかったですね……ボクは信じてましたよ。ナオヤさんなら何とか出来るって」
「なら何故目を合わせないんだ?」
「そ、そんな事ないですよ!?」

 メッチャ目が泳いでるじゃないか……泳いでるくせに一瞬たりともオレと目が合わないって、ある意味凄いけど。
 
「凄く納得いかないけど、まあ、今はいいや……」
「そ、そうですよ! 気にしない気にしない……。先を急ぎましょう!」

 リルはオレの前を早足で歩き出す。
 西を目指してジェミさんの家をあとにしてから、もう結構時間がたってる。
 確かに一刻も早く薬を手に入れて地球に帰りたい……軽くホームシック気味だ。
 オレはこんなにも精神の弱い男だったのか……? いや、この場合ジェミさんが原因だと思いたい。
 
「魔女ってどんな奴なんだろうな? 何か魔女って言うと素直に薬渡してくれそうにもないよな……」
「確かにそうですね〜。とてつもなく高価だったり、何かとんでもない条件を出されたりしそうですね」
「あ〜……ありそうだな〜。ドラゴンを倒して来いとか」
「ドラゴンって……空想上の生物ですよ? 何を大真面目に言ってるんですか?」
「宇宙人に言われたくないよ!? ってか、やっぱりこの星に来てからオレへの接し方がおかしくない?」

 リル……良い子だったのに。オレ嫌われた?

「あっ、何か家が見えてきましたよ」
「オレの話は無視ですか? もう、いいよ。確かに見えてきたね。御伽噺おとぎばなしで出てきそうな家が」
「とにかく行ってみましょう!」
「そうだな」

 オレ達はその家に向けて歩き出した。 


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