今、オレの目の前に居るのはどこからどう見ても確かにルミナだ。
 それがいきなり自分はリルだ、なんて言われて普通信じるか?
 身体が入れ替わった……さくらの料理で?
 大体さ……さくらの料理がいくら激マズだからって近所のスーパーで買える材料で作った物で簡単にそんな事になったら大変じゃないか。とは言ってもルミナとの生活のおかげでオレもこんな事を簡単に信じてしまえる性格を獲得してしまっている。
 ……これも成長と言っていいのかな? 何か嫌な方向に成長している気がするけど。

「本当に……リル……なのか?」

 目の前に居るルミナの姿をしているリルに話しかける。
 
「……はい。ボクはリルです。っていうか、何でボクがルミナになってるんですか?」

 目に涙を一杯に溜めてオレを見るルミナ……というかリル。
 何か……その表情と話し方だけで目の前のルミナはリルなんだと確信出来る。

「さくらの料理を食べさせられたトコまでは覚えてるんですけど……」
「あ〜……その時の悲鳴を聞いてルミナと一緒に駆けつけたんだけどな」
「はい」

 そんなすがる様な目を向けないでくれ……。

「その……ほら……さくらの料理って見た目良いだろ?」
「そうですね…………。見た目はいつも美味しそうなんです」
「うん。それで……ルミナも食べちゃって気絶したんだよ。で、ルミナをウチに運んできてソファーに寝かせてたんだ……それで、起きたと思ったらこんな状況だった、と」

 つまりオレにも良く分からない状況なんだよ、と肩をすくめてみせる。
 この状況を説明できる奴が居るなら、まずオレに説明して欲しいぐらいなんだ。
 
「身体を入れ替えてしまう物を作るとは……さくらは恐ろしいな」

 あ、忘れてた……。
 風呂から出てオレの頭の上に乗ったダディーが突然話に入ってきた。忘れてたから凄いビックリしたけど。

「どこかの星でそういう薬が売られていると聞いた事があるが物凄く高価らしいぞ」
「へぇ〜、なら宇宙でさくらの料理を売れば儲けれるんじゃ――って、そんな薬があるのかっ!?」
「ど、どこに売ってるんですかっ!?」

 それがあれば元に戻せるって事だよな!?
 リルも物凄く真剣にダディーに詰め寄る……うん、ちょっと怖い。

「う〜ん…………あれはどこだったか……」
「思い出してくださいっ! 今すぐにっ!!」

 オレの方に近づいてきたリルは頭の上に居るダディーを掴みガクガクと揺すった。
 頭の上にあるから表情は見えない。
 それよりも、その体勢はアレなんだよ。リルは頭の上に居るダディーと同じ目線に居る。そうするとリルの……いや身体はルミナだからルミナの? あ〜もうっ、ややこしいな! とにかく、今の体勢だとルミナの身体の胸の部分がオレの顔の目の前にあるんだよ。
 これは非常に困る……。
 必死にダディーを問い詰めるリルは気付いて無いだろうし。

「お、落ち着いて……、ちょっと離れてくれると助かるんだけどな〜……」
「え…………? わひゃあっ!」

 オレの声で視線を下げたリルがやっと今の状態に気付いてくれた。リルは両手を胸の前で組み、オレから離れていった。
 助かったけど……その反応は何か複雑な気分……。

「それで、ダディー。思い出せたか?」

 何故か悲しい気分になってしまったのを紛らわせる為にダディーに話しかける。

「あれは確か……フヌゥ〜ン星だったか」
「何だよ……その胡散臭い上に気の抜けそうな星の名前は!」
「というか、わざわざそこまで行って薬を買わなくてもまたさくらの料理を食べれば良いのではないか?」
「絶っっっ対イヤですっ! フヌゥ〜ン星に行ってきます!!」

 即答だった。
 いや、ルミナが食べたところを見たせいでオレだってアレを自分から食べる事なんて出来ないだろうなぁ。
 
「ちょっと待って、オレもついて行くから」

 オレは立ち上がったリルの腕を掴んでそう言った。
 一人で行かせるのは心配だし……一応ルミナにも関係あることだから保護者として何もしない訳にはいかないだろ。

「う、宇宙ですよ? 良いんですかっ!?」
「分かってる。でも、やっぱりついて行くよ」
「…………分かりました」

 最初は驚いていたリルだったけど結構簡単について行く事を許してくれた。
 ……という事は、あんまり危険は無いって事……かな?

「私は残るぞ。ルミナが起きたら説明しないといけないからな」
「分かった。リル、ちょっと待ってて。ダディーをさくらに預けてくるから」
「はい」

 風呂に入ったばかりだったけど着替えなおしてからダディーを連れて部屋を出た。


 ☆ ☆ ☆

「は〜い……って大坪くんじゃないですか。どうしました?」

 チャイムを押すとさくらが玄関の扉から顔を覗かせた。

「ル……じゃなくて、リルはどう?」

 あ、危ねぇ……いきなりバラしそうだった。ルミナとリルが入れ替わってるなんてさくらに知られたらどうなるか解らない。
 だからバレる前にさっさと地球を離れてしまいたいんだけど。

「まだ起きてませんよ」
「そ、そうなんだ。あのさ、今からちょっと出かけるからダディー預かって欲しいんだけど」

 オレは手の平に乗せたダディーをさくらに差し出す。
 不思議そうにダディーとオレを交互に見るさくら。
 
「あ、あはは…………」

 ヤバイ……絶対オレ今引きつった顔してるよ。

「ん〜……何か良く分かりませんけど、良いですよ〜」
「た、助かるよ! じゃコレ宜しくっ!」

 オレは早口にそう言ってダディーをさくらに渡して部屋に戻った。


 ☆ ☆ ☆

「どうでした?」

 部屋に戻ると心配そうな顔でリルが話しかけてきた。

「大丈夫。多分バレて無いと思う」
「よ、よかったですぅ〜……、じゃあさっさと行っちゃいましょう!」
「う、うん」

 な、何かリルの気迫が凄いんですけど……。
 リルは懐から何か小さい機械みたいな物を取り出した。

「ルミナの使ってるのがボクのと同じで良かったです!」
「そ、それは何なのかな?」
「ワープ装置です! これでとりあえずボクの家まで行きます。そこからは宇宙船で移動する事になると思います」

 ワープ装置……あんなに小さいのが?
 宇宙って凄いんだな。

「じゃ、行きますっ!」
「え、ちょ、待っ――――!!」

 装置を見ながら考えているとリルに手を握られ、そのままオレの視界は真っ白に埋め尽くされた。


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