| 少しだけその後の話をしてみようと思う。 悠の働くメイド喫茶に行った翌日の朝。 教室の扉を開け室内へと入ると、いつもの様にショウが声をかけてきたが、いつもの元気が無かった。 「なあハムナリ。俺、昨日お前に会わなかった?」 ……ショウは何を言ってるんだ? 会ったもなにも強引にメイド喫茶までオレを連れて行ったじゃないか。 「何か昨日の記憶が曖昧なんだよ……ハムナリとルミナちゃんに会った気がするし、その後で他の誰かにも会ったような……身体中何故か傷だらけだし」 ショウはそう言って机に突っ伏してしまった。 記憶が無い? 何かどこかで聞いた事があるような……。 「はるちん、おはようだぜー!」 「おはようルミナ。それにナオヤも」 挨拶を返そうと悠を見ると、何故か物凄い笑顔だった。 ……何かショウの記憶が無いのと関係あるよな、絶対。 「あ、ああ。おはよう」 いや、聞けないですよ? 怖いもん。 こうやって普通に挨拶を返す以外出来る訳ないじゃないか。 「ナオヤさん、おはようございますっ!」 席に着くと前に座っていたリルが元気に言ってきた。 返事を返すと嬉しそうに笑っていた。 他の奴らと違って裏の無い笑顔で良いね。何て考えていたらさくらにメッチャ睨まれた。もしかして顔に出てたのか? というか、リルが来てからさくらが良く分からなくなった。 前は本当に良い子だとしか思えなかったのが……今ではリルに手を出すと謎の女に酷い目に遭わされるという噂まで出ている。謎の女って多分さくらだよな。 それからはまぁ、ショウの事以外はいつもと変わらない日々だった。 週末……金曜の夜。 ルミナが来てから休日を静かに迎えるなんて諦めてたけど、まさかあんな事が起こるなんて全く予想出来なかった。 その事件はいつもと違って被害者はオレでは無くてルミナとリルだったしな。 ☆ ☆ ☆ 「いやぁぁぁ――――っ!!」 晩飯を食べたオレ達はリビングでマッタリと過ごしていた。明日の休みは何しようかな〜なんて考えていた。 そこに隣の家、つまりさくらの家からリルの悲鳴が聞こえてきた。 「な、何があったんだっ!?」 「あら、大坪くんにルミナちゃん」 さすがに今の悲鳴は只事じゃないと思ってさくら家に駆けつけた。 急いでいて呼び鈴を鳴らすのを忘れてしまったが、扉には鍵がかかってなく簡単に開ける事が出来た。 急に家に入ってきたオレとルミナに大して動じる様子も無いさくら。 そして――そのさくらの足元にリルが倒れていた。 「で、何があったんだ?」 倒れたリルを布団まで運んだ後でさくらに問いかけた。 「何って、リルちゃんに食べてもらいたいレシピを見つけたので作って食べてもらっただけですよ」 そう言われてテーブルに並べられたままの食事を恐る恐る見る。 ……リルからさくらの料理の恐ろしさを聞いていたオレは拍子抜けしてしまった。 見た目は凄く美味そうだ。 「食べていい?」 「どうぞ♪」 家で食べたばかりだというのにルミナはどこからか取り出した箸で料理を口に運んだ。オレも食べてみようかと行儀は悪いけど指で摘んだ。 ……箸を口につけたまま固まるルミナ。ここから見ていても少しずつ冷や汗が浮かんできているのが分かる。 そして―― 「みきゃぁぁぁぁ!!」 悲鳴を上げてその場に倒れこんでしまった。 摘んでいた料理を落とす。 オレの顔は今、きっと引きつっているに違いない。 「ルミナちゃん、どうしたんですか?」 倒れたルミナに声をかけるさくら。 「……なあ、さくら」 「なんですか?」 「味見とかしてるか?」 「ちゃんとしてますよ。今日は凄く美味しく出来たんですよ」 マ、マジですか……? 倒れてピクピクと 「と、とりあえずルミナ連れて帰るよ……」 「そうですか……また遊びに来てくださいね」 「う、うん」 ルミナを抱えるオレにさくらは呑気にそう言った。 ☆ ☆ ☆ ルミナをソファーに寝かせ、当分起きないだろうと思ったオレはダディーと風呂に入る。いつもはダディーはルミナと入るんだけど今日は仕方ない。 ダディーを洗いながら先程起こった出来事を話す。 「そうか。あの二人が倒れるほどの物を作るとは、さくらも中々やるな」 「関心するところじゃないっての……」 そんな事を話して、風呂を出る。 リビングに戻るとルミナは物凄くうなされていた。 「おいっ!? 大丈夫かよ!?」 さすがに心配になって肩をゆする。 「――はっ!? ん……アレ? ナオヤさん?」 はい? ナオヤさん? 「って、何でナオヤさんが居るんですか!?」 「何でって、ここはオレの家だから居て当たり前だろ?」 本当に何を言ってるんだコイツは。 まさか……さくらの料理で本当におかしくなってしまったんじゃないだろうな。 「ナオヤさんの家っ!? な、なんでですか!? ボク、何でここに居るんですか?」 ……ボク? 何か話し方も聞き覚えがあるんだけど……まさかな。 でも普段のルミナと全然違うし。 「住んでるんだから当然だろ? 何言ってるんだよルミナ」 「ル、ルミナっ!? それボクに言ってるんですかっ!?」 「お、お前以外に誰が居るんだよ」 「えぇ――――っ!!」 叫びながら顔をペタペタと触るルミナ。 そして消えたテレビに映る自分の顔を見てまた叫び声を上げた。 「な、なんでボクがルミナになってるんですかっ!?」 「も、もしかして……やっぱりリルなのか?」 「はいっ!」 ……マジかよ。 身体が入れ替わるなんて……そんなベタな……。 |