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長い時間電車に揺られ、ようやく目的の駅に着く。
とりあえず荷物が届くまでは生活できるようにと、最低限の着る物と日常品を詰め込んできたボストンバッグを肩に掛け電車を降りた。
改札を抜けて駅の外に出る。
周りを見渡す。
まあ、なんというか……微妙な所だ。
ここは駅だし人も多い、色々な店もあるし結構栄えてるんだろう。ただ、シャッターの閉まった店もちらほらと確認できる。閉まったシャッターは随分と閉まったまま開けられてないのだろうか痛みや錆が遠くから見ても感じられる程だった。
確かに賑わってはいるけど都会とはいえない……かといって田舎でもない。
なんとも微妙な所だ。
「…………はぁ〜」
近くにあった自動販売機でお茶を買い、すぐ近くのガードレールにもたれかかってそれを飲むと自然と溜息が零れていた。
オレ、ここで上手く暮らしていけるのかな……。
生まれも育ちも都会の都会っ子だし。
都会っ子のオレがこの土地の雰囲気に馴染めるか非常に心配だ。
実家に居た時も、昔から家事はやってたし1人で生活できるかってことは問題ないんだけどな……。
…………はぁ。
もう一度溜息をつき、空になった缶を自動販売機の横に備え付けてあるゴミ箱に捨てる。
それからズボンのポケットから紙を取り出す。
「そろそろ行くか」
オレは呟き、今日から住む事になるアパートを探し始めた。
――1時間後。
「………………」
ま、迷った。
ここ……どこだよ?
住宅街ってのは分かる。家がいっぱいあるし……。
問題は目印になる物が何にもないという事だ。
オレは地図を握ったまま立ち尽くす。尋常じゃないぐらいの汗が出る。
知らない土地で1人迷子になるってこんなに心細いのか……。
――何か店、コンビニとか、通行人でもいい! 道を聞ける人はいないのか?
オレは走り出した。
頼むから……誰か助けてくれぇぇぇぇえええ!!
「あ、あれはっ!!」
数分間走り続けていたオレの目前に見覚えのある建物が見えた。
あれは……オレの記憶が確かなら……交番だ!
た、助かったぁ〜……。
オレは焦る気持ちもあって全速力で交番へ向かった。
「だから〜! 私は未成年じゃないですよ〜!!」
「はいはい……で、どこの学校の生徒だ?」
入り口を開けたところで立ち止まる。
なにやら警察官と、えっと……ゴスロリ、っていうのかな? そんな振り振りした服を着た背の低い女の子がもめていた。
入り口を開けたオレにも気付いていない。
「未成年がお酒を買っちゃいけないんだよ? 私達大人はそんな子達を叱らなきゃいけないんだ。だから、家の連絡先と学校を教えなさい」
どうやら、この女の子がお酒を買って捕まったらしい。
「だからぁ〜!」
女の子は何か言おうとしたが途中で何かに気付いたように鞄から財布を取り出した。
「これ! 免許証です!」
そう言って財布から取り出した免許証を警察官へ渡す。
「なになに……昭和5「こ〜え〜に〜だ〜さ〜な〜い〜で〜!」歳と」
警察官が生まれと歳を言っている最中、女の子は突然大声を出した。
近くに居たオレは女の子……いや、この女性の歳が聞こえてしまった。
「もう行っていいですよね!?」
女性は警察官から免許証を返してもらうと立ち上がった。
「え、ああ……はい」
警察官は驚きの表情だ。
それを聞き、女性は出て行こうと振り返る。
「あ…………」
そこでようやくオレの存在に気付いたらしい。
女性はにこやかに近づいてきた。
「今の……聞いてた?」
顔はにこやかだが、何故か恐ろしいまでの迫力がある。
「え……あ、あの……」
「聞いちゃったのかな? 今の……」
女性がまた1歩近づく。
「あの……その……」
こ、こわい。
命の危険すら感じる。
「……き」
「き?」
「聞いてませぇえ〜〜ん!!」
オレはそう叫びながら全力でその場から逃げ出した。
交番で道を尋ねられなかったオレは、誰も居ない小さな公園で立ち尽くしていた。
必死に走ってきたせいで、どこをどう通ってきたのかも分からない。
「……はぁぁぁぁ〜……」
肩に掛けていた鞄を地面に落とし、大きな溜息をついてうな垂れる。
「どうかしました?」
その時、背後から声をかけられた。
「え…………?」
振り向くとそこにオレと同じぐらいの歳の少女が買い物袋を下げて立っていた。
「大きな溜息ついてましたけど、何かお困りですか?」
と、オレに向かって少女は言った。
見た目通り優しい子なんだな……。
肩まである黒髪、少したれ気味の目を細め微笑んでいる少女が天使に見えた。
「えっと……道に……迷っちゃって」
オレは恥ずかしい気持ちに耐えながら少女に話した。
「ここに行きたいんだけど……知らないかな?」
オレは持っていた地図を少女に渡した。
少女は地図を見て少し考えていた。
地図に何か問題でもあったのかな? まあ、大雑把な地図だとは思ったが。
「わかります。案内しますよ」
言いながら少女は地図をオレに返してくる。
「ほ、ほんとに!? 助かるよ!」
オレは少女の好意に甘えて案内してもらう事にした。
「あ……、荷物持つよ」
「え……でも……」
少女の持つ荷物を持ってあげようと思ったが、少女は警戒しているのか、ただ単にオレに悪いと思っているのか躊躇っていた。
まあ、おそらく後者なんだろう。
「案内してもらうんだから、このぐらいの事はさせてくれよ」
そう言ってオレは少女の荷物を渡してもらった。いや、ちょっと強引すぎたかも……。奪ったと言ってもいいような気がする。
「……じゃあ、お願いします」
そんなオレに少女は微笑みながら言った。
「着きました」
少女はある建物の前で立ち止まった。
オレはその建物を見上げる。
『メゾン ヴィラージュ』
確かに地図に書いてある文字とこの建物の名前は同じだ。
名前とは違い随分と趣のある外観をしている。
「ありがとう。わざわざ案内してもらっちゃって」
「気にしないで下さい。家に帰るついででしたから」
やっぱりいい子だな。
ん……? オレは少女の言葉に気になる事を見つけた。
「…………ついで?」
「はい。私ここに住んでるんですよ」
そう少女は言った。
「え……!? そ、そうだったんだ? あの、オレ今日から203号室に住む大坪公也(おおつぼ なおや)です」
驚きながらも挨拶はしておく。
「202号室の咲嶋さくらです」
「あ……お隣さんだったんだ……」
「そうみたいですね。よろしくおねがいします」
「あ、うん。よろしく」
挨拶をすませ少女、咲嶋さんに荷物を返す。
「それじゃあ……」
そして咲嶋さんは自分の部屋に帰っていった。
「あははははっ!」
玄関を開けると奥の部屋から笑い声が聞こえてきた。
え? なに? なんで?
オレは入る時に確かに鍵を開けた。
オレ以外の人間が居るはずがない。
まさか――ドロボウ!?
そう思ったオレは鞄の中に手を入れ武器になりそうな物を探した。
探っていた手に何か硬い物が当たった。
取り出す。
それは母さんが出発の時に困ったら開けなさいと渡してくれた袋だった。
「なんで……」
袋を開けたオレは呟いた。
「なんで、千歳飴なんだよ……母さん」
そこには色とりどりの千歳あめが10本以上入っていた。
仕方なくそれを両手に1本ずつ持ち、音を立てないように声のする方へ近づく。
オレは腹を括って扉を開けると一気に部屋の中へ飛び込んだ。
「誰だ!? 悪いがウチには盗むモンなんかない――――」
「んにゃ!?」
「――ぞ」
オレがいきなり入ってきたことに驚いたのか、変な声を出してそいつは振り返った。
それは金髪の少女だった。
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